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あまりに使えないんで守護霊をチェンジしてもらっていいですか。  作者: 鳩野高嗣
第一章 鷹端瑞希神療内科
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鷹端瑞希神療内科【Bパート】

「‥‥は?」


 健悟(けんご)は答えに詰まった。


「あなたは守護霊機能障碍(しょうがい)です。」


 瑞希(みずき)は真顔で続けた。


「いやいやいや、何を(おっしゃ)っているのか、俺には‥‥。」


「早い話、あなたの守護霊、低級過ぎて機能していないのです。

 診たところ、人間を守護するのは初めてなのでしょう。」


「先生、さっきから何を言っているんです?

 守護霊なんてオカルト話、信じられる訳がないでしょう?

 ――本当にここ、心療内科なんですか?」


「看板はちゃんと見ましたか?

 ここは『神療内科』です。」


 言われてみれば確かに漢字が違っていた。


「とにかくです!

 俺は得体の知れないオカルトだの宗教だのは信じない事にしてるんです!」


「なるほど、そうですか。

 あなたは守護霊の存在を信じられない、と。」


「当たり前です。」


 健悟の答えに瑞希は深いため息を一つ。


「――では、その目で見れば信じられますか?」


 意外性のある問い掛けに面を食らう健悟。


「えっ!? そりゃあ、まあ‥‥。」


「わかりました、いいでしょう。」


 そう言うと瑞希は椅子からすっくと立ち上がる。

 そして、おもむろに右手を天に掲げた。


飯綱(いづな)健悟(けんご)を守護する者よ、機能障碍(しょうがい)容疑の弁明会見に速やかに出頭せよ!

 せぬ場合は戒め神(いましめがみ)の名のもとに(なんじ)から守護霊の資格を剥奪し、『強制転生』の刑に処する!」


 瑞希が何やら怪しげな言葉を発すると、診察室には暗雲とオーロラが立ち込める。

 すると、健悟の背後から青白いプラズマのようなものが発生する。


「こ、これは一体‥‥!?」


 驚愕(きょうがく)する健悟。


 バチバチバチッ!


 凄まじい電撃音が鳴り響くと、青白いプラズマ状の中から得体の知れない何かが目の前に飛び出してくる。


 ドサッ!


 どうやらそれ(・・)には重さという概念があるものらしい。


「いてててて‥‥。

 あにすんだよ、乱暴な!」


 『何か』は徐々に姿を鮮明にしていく。

 やがてそれは白装束に似ているが下半身部分はミニスカートのように短くアレンジされた着物を(まと)った少女の姿に可視化された。

 透き通るような白い肌と対照的な漆黒の長い髪、気の強そうな大きな釣り目が印象的だ。


「階級とレベル、最終生前の名前は?」


 瑞希がクールな目つきで問い掛ける。


「‥‥介助職員初任者研修生、レベル1、今際乃(いまわの)真雨(まさめ)。」


 守護霊の少女はぶっきらぼうに答えた。


「低級だとは感じていましたが、まさかインターンだったとは!? しかもレベル1‥‥。」


 瑞希は愕然(がくぜん)とする。


「あの‥‥インターンでレベル1って‥‥?」


 不安そうに(たず)ねる健悟。


「実務経験(ゼロ)な上、超落ちこぼれです。

 これでは守護霊としての役割を果たしてはいないでしょう。」


「そんな‥‥。」


 健悟は瑞希の説明に絶望した。


「何でこんな未熟者を守護霊として任命したのか、責任者を小一時間(こいちじかん)問い詰めたいところです‥‥。

 大体、彼女、守護霊の役割すらわかっているかどうかも怪しいですし。」


「失礼な!

 アタシだって守護霊の役割ぐらい言えるっての!

 ――『悪しき(えにし)の糸を断ち切る』、だろ?」


「その通りです。

 (えにし)は悪ければ悪い程、その糸は強靭です。

 それを断ち切る為に、レベルの高い守護霊はチェーンソーなどの形をした強力な道具(アイテム)を持っています。

 そして守護する人間がその選択肢を選ばないように予め切っておくのが仕事です。」


「‥‥思えば、俺はずっと悪い選択肢しか引いて来なかった気がします。」


 健悟は震えた声でつぶやいた。


「真雨、でしたね? あなたの断ち切り道具(アイテム)を見せてみなさい。」


「え‥‥?」


 瑞希の言葉に思わず目を泳がせる真雨。


「見せないと言うのでしたら、即刻、強制転生ですよ?」


「ひいっ! わ、わかったよ‥‥ほれ。」


 真雨が見せた断ち切り道具(アイテム)は鼻毛切り(はさみ)だった。

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[良い点] 鼻毛切り鋏に大笑いしました。
[良い点] 断ち切り道具の鼻毛切り鋏に思わず吹き出してしまいました。
[良い点] 鼻毛切り鋏に爆笑しました。
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