アイドルオーラ【Bパート】
「でもまあ、一人でもスターが出りゃあ儲けモンなんじゃねぇか?」
健悟がケイを目で追いながら真雨に話し掛けた。
「――いや、話はそんな簡単に済まねぇようだ。」
真雨は目を細める。
「どういう意味だよ?」
「あいつに憑りついている何かが、他の娘のスター性のパワーを横取りしてやがる!」
「横取り!? そんな事、出来るのか?」
「普通は出来ねぇ。
スターになるのは一種の縁だ。
縁の管理は守護霊の仕事、真っ当な守護霊がいりゃあ、まず起きねぇ。」
そんな話をしている二人とケイは目を合わせた。
そして小走りで健悟に小走りで駆け寄ってくる。
「運転手さん、今日はありがとうございました☆」
ケイは健悟に深々とお辞儀をした。
「ああ、こりゃどうも、わざわざご丁寧に。」
健悟も頭をペコリと下げる。
「健悟っ! こいつの中に妖がいやがる!」
「妖とは失礼ですねぇ!
私の中にいる子はピーちゃんです☆」
ケイの言葉に誘われたかのように、彼女の体内から青い小鳥が現れ左肩に止まった。
「青い鳥‥‥。つか、テメェ、アタシが見えんのか?」
「もちろんですよ、白い着物姿のお姉さん☆」
ニコッとアイドルスマイルを浮かべるケイ。
その次の瞬間、またケイの体内から大正時代のモガ風の美女が現れる。
「ウチはこの娘の守護霊、百合と言います。よろしく、元守護霊さん。」
一人称以外は丁寧な共通語だが、イントネーションは京都弁丸出しだった。
「テメェ、ただの守護霊じゃねぇだろ。
妖と同居してるわ、人間と会話出来るわ。
――差し詰め、憑依を繰り返してきた動物霊ってところか。」
真雨は鼻毛切り鋏を出現させ臨戦態勢を取る。
「ご明察です。確かにウチは元動物霊です。」
「で、この娘の本物の守護霊はどうした?」
「倒し、食らい、能力を頂きました。
なので、今はウチがれっきとした守護霊。
――いや、動物霊の能力も兼ね備えたスーパー守護霊です。」
「なぁにがスーパー守護霊だよ、思いっ切り成りすましじゃねぇか!」
「そのちんけな武器をしまっては頂けませんか。
ウチは貴女と争う気は毛頭ありません。」
一向にやる気満々の真雨に百合は説得を試みた。
「あに言ってやがる? このまま見過ごせる訳ぁねぇだろが!」
「ウチはケイと契約を結んだのです。
糸を切るしか出来ない無能な守護霊に代わって人気アイドルにするという契約を。」
「契約だぁ?
んで、対価は何だ? 動物霊が無償で人間に協力するとは思えねぇんだが。」
「くっくっく‥‥残り寿命の六割六分を頂く事で手を打ちました。」
百合は口が蛇のように裂けて笑んだ。
「バカな! 正気か、高見さん!?」
健悟がケイに問う。
「正気ですよぉ☆
当然じゃないですかぁ、私は人気アイドルになりたいんですから☆
――それにぃ、私の命くらい、私が自由に使ったって何の問題もないですよねぇ?」
平然とアイドルスマイルで答えるケイに、健悟の背筋が凍った。
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