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あまりに使えないんで守護霊をチェンジしてもらっていいですか。  作者: 鳩野高嗣
第五章 元守護霊×守護霊の決闘
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元守護霊×守護霊の決闘【Dパート】

 ベシッ!


 蹴速(けはや)の鋭い右上段回し蹴りが真雨(まさめ)の首を捕らえた。


「へぶぁぶっ! ンゴロ、ンゴロ!」


 吹き飛ばされ、勢いよく転がっている真雨。


(しょう)()っ! 相手にならぬぅっ!」


 蹴速はニタッと笑う。


「そいつは‥‥どうかな‥‥?」


 真雨はゆらりと立ち上がった。


「まさか! モロに入ったあの蹴りをくらって尚、立ち上がるとは!?」


「アタシは打たれ()えーんだよ!

 伊達(だて)にレベル1で守護霊やってた訳じゃねぇっ!」


「な~らば来るがいい。

 こ~ころの折れるまで蹴り続けてやろ~うではないか。」


「言われなくたって、行ってやらぁな!」



 以後、何発の蹴りをくらっただろう。

 しかしその都度(つど)、真雨は立ち上がった。


()()だ!?

 貴様は()()そこまで我の仕事に関与する!?」


 蹴速は真雨の折れない心に言い知れぬ恐怖を感じ始めていた。


「アタシはレベル1、失うプライドなんか持っちゃいねぇ。

 ――でもな、強制転生はマジで()えーんだよ!」


「きょ、強制転生!? ‥‥となっ!?」


「テメェにわかるか、崖っぷちに立たされてるアタシの気持ちが!?

 ナメクジだぞ、ナメクジ! 未来永劫ナメクジ!

 剣やスライムや蜘蛛(くも)なら救いがあるが、ナメクジだぞ、おいっ!」


「ナメ‥‥クジ‥‥とな‥‥。」

(こやつは例え百万発の蹴りをくらお~うとも、必ず立ち上がってくぅるぅ‥‥。)


 真雨の気迫に蹴速の心は折られ、がっくりと片膝を着いた。


「我の‥‥負けだ。あの(えにし)を切るがよい。」


 蹴速は真雨の目的としている(えにし)の糸を指さした。

 ――が、その縁はワイヤー製だった。


()りぃ、蹴速のオッサン。

 あんたが断ち切ってくんねぇ?

 アタシの鼻毛切り(ばさみ)じゃ、どうにも刃が立ちそうもねぇや、あはは‥‥。」


「‥‥‥‥。」



 結局、香代の(えにし)は蹴速の鉄剣が断ち切った。

 途端、香代の身体(からだ)からあざや傷痕などが消えていく。

 そして、心の傷さえも。


「ああ、断ち切れたんですね‥‥。

 ありがとう、ありがとう‥‥。」


 涙する香代。


「ただいまっと!」


 香代の体内からボロボロになった真雨が帰還する。


「おい、お前‥‥ズタボロじゃねぇか! 大丈夫かよ!?」


「たりめぇだ、これくらい。

 あ~あ、健悟に心配されるたぁ、アタシも焼きが回ったもんだな。」


 真雨は小首をやや前に傾げて人差指で頭を掻く。

 掻き終わると、姿勢を持ち直し、


「――香代、あんたと亭主との縁は完全に切れた。

 でも、本当によかったのか? 幸せな想い出も結構あったんじゃねぇのか?」


 香代に問い(ただ)した。


「‥‥政略結婚だったんです。

 傾いた家を立ち直らせる為に、無理矢理、父が守護霊に縁を結んでもらって‥‥。

 それでも最初はうまくいっていました。

 しかし、やがて主人の会社の経営が悪化してきて、日常的な暴力が増えました。

 何十年耐えたでしょうか。でも、その暴力は幼い孫たちにも及んできて‥‥。

 ――もう限界だったんです。」


 そこまで言うと香代はその場で泣き崩れた。


「行こう、真雨。俺たちに出来るのはここまでだ。」


「だな。

 ――んじゃ、後の事は宜しく頼むよ、鷹端(たかはた)センセ。」


 ● ● ●


「健悟ぉ、もしかしてテメェ、あの香代って女、狙ってんじゃねぇか?

 ええ? どうなんだよ、おい?」


 アパートへの帰り道、真雨が勘繰りを入れてきた。


「狙ってなんていねぇって。

 俺は彼女を幸せになんか出来やしねぇしな。」


「おお、それは同感だ。甲斐性(カイショ)ナシだしなぁ、うんうん。」


「くっそ、なんか他人に言われるとムカつく!」


 (はた)から見たら独り言にしか見えない会話をしながら二人は陸橋を(のぼ)って()った。

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