元守護霊×守護霊の決闘【Aパート】
この作品は『時代に取り残された』と感じている全ての方々に捧げます。
「この時間だと確実に渋滞に巻き込まれんなぁ。」
午前七時過ぎ、健悟は京葉道路を東京方面に向かいながら、助手席に座る真雨に話し掛けた。
「とにかくA級戦犯はシャイニング・コーポレーションだな。
あそこがもっと早く荷物持って来りゃあこんな事には。」
短気な真雨は渋滞という響きを聞き、犯人捜しをし始める。
「車藤さんの話だと、いつもあそこはドベなんだってさ。」
プロップが加入している中国便は別名・互助会便とも呼ばれ、十三社のアニメ制作会社が加入している。
これらの会社が持ち回りで大体、二週間に一度の頻度で中国の下請けアニメ会社へ発注する動仕(動画と仕上げの事を業界ではこう呼ぶ)用の原画を直接持ち込む訳だが、今朝はプロップの番であった。
そして今回、中国へ飛ぶ車藤と各社の原画を詰め込んだバッグを成田空港第3ターミナルまで乗せて行ったのが健悟だった。
「そう言えば、霊ってトイレ行かねぇんだろ?
こないだの回収業社は何でトイレットペーパーなんてくれたんだ?」
「人間が隣りにいたからくれたんじゃねぇか? 知らねぇけど。」
「だとすると人間用の物だろ?
霊が人間専用の物を持てたのって変じゃねぇか?」
「中にはこの世の者でも霊でも共通して持てる物質があるんじゃねぇか?
ユニバーサルデザイン的な物みたいな。知らねぇけど。」
知らない事ばかりだな、この元守護霊はと思いつつ、健悟は追い越し車線へハンドルを切った。
● ● ●
首都高の渋滞に巻き込まれながらも午前九時半前に帰社。
タイムカードは既に押してあるので、車のキーを所定の位置に戻したらすぐさま中村橋駅へ。
会社と駅の通り道にある金色の猫飛像の頭を撫でるのが健悟のルーティンだ。
西武池袋線も他の電車も空いていて座れるのがいいが、寝過ごしてしまいそうになるのだけは頂けない。
そんな時に役に立つのが――
「おいこら健悟、起きろーっ! 駅に着いたぞ!」
自分だけにしか聞こえない目覚まし時計だ。
「おっと、いけね。」
健悟は既所で危機を回避した。
「ところで健悟、今日が何の日か忘れちゃいねぇだろうな?」
「五週間に一度の定期検診、だろ?
ついでに今月分のローンも支払わねぇとな。」
「だったら、お疲れモードに鞭打って進めーっ!
――でねぇと睡眠時間、なくなっぞ?」
「お、おう。そうだな。」
健悟は改札を出ると大きく伸びをした。
● ● ●
「この五週間、何か変わった事はありませんでしたか?」
鷹端瑞希が健悟と真雨に問い掛けた。
「何から説明すればいいか‥‥。
とにかく、いろんな事があり過ぎて‥‥。」
「アタシら地縛霊やら悪霊なんかに狙われたんだよな。」
真雨は後頭部で両手を組みながら答えた。
「それはまぁ、よくご無事でしたね。」
「結局のところ、超でかいルンバみたいなものに助けられたんですけどね、ははは。」
「そうでしたか。
これからもその手の輩から狙われるでしょうから気を付けてください。」
「俺、霊感なんてない方だと思ってたんですけどねぇ。」
「守護霊が外れている状態なので、何が起こるかわかりません。
しかも、こんな長期に渡って宙ぶらりんな状態を続けている事例を私は知りません。
まあ、私的には貴重なサンプルだと言えなくありませんが、早めにチェンジするか元に戻すかの決断をされた方がいいですよ。」
「俺的にはチェンジで。」
「アタシ的には戻しで。」
二人はユニゾンで不揃いの答えを返した。
会計を終え、病院を出ようとした時だった。
「あれ‥‥もしかして飯綱くん?」
健悟はすれ違いざま、眼鏡を掛け髪を後ろで纏めた長袖姿の女性に声を掛けられた。
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