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幸せのさしすせそ

図らずも、さしすせそ、で世間を渡る転生とは名ばかりの令嬢の話し。

気づいたら貴族の娘ローズに異世界転生していた。 


アンドリューという婚約者候補もおり、たまにお茶会が設けられてはいたものの、あまりうまくいっていなかった。


残念なことに前世、女子校に通い男子慣れしていない、引っ込み思案だったのまで今に引き継いでいた。


気楽に話ができる友達と言えるのは、王都で隣の屋敷の幼馴染の令嬢キャロライン。


私の情報は、主におしゃべりな彼女から聞く話ばかりだ。


「聞いてる? だからローズ、貴女の場合、お話する事が得意じゃないっていうのなら、聞き上手にならなきゃ。

 相槌のさしすせそ! これが重要なのよ!

 さすが! 知りませんでした! すごいですね! センスいいですね! そうなんですね!

 もうこれだけでいいからね。

 さしすせそ、とにかく覚えるのよ!」


キャロラインは立て板に水のごとく話し続け、私に良い情報を流してくれていたのだが、

異世界転生にぼんやり気づいたばかりの私は、肝心な言葉を聞き流してしまった。

とはいえ

(さしすせそ? この世界は、よくあるTL小説の世界らしくご都合主義で、言語が日本語なのね?)

なんて事は考えていた。


転生に気づいてからも、なんとなく日常を過ごしている私は、たぶん、元々ぼんやり? よくいえばオットリした性格なのだろう。 

何よりチート皆無のモブだし。ろくに記憶が残っていない。


そんな感じでのんびり過ごしていたところ、公爵家で、その寄子子息令嬢を集めた大きなお茶会に参加することになった。


引っ込み思案なのもあり、同世代の子供が多く集まるお茶会が苦手であった。

ことに以前、マウントをしかけてくる意地悪な令嬢に絡まれ嫌な思いをしたのもあり、今回のお茶会も気が重かった。

しかもキャロラインが領地に戻っている為、欠席ときた。


(あ〜やだやだ、行きたくない。。 でも行かないと。社交は貴族としての義務だし。我が家のためにも頑張らないと)


無理矢理、自分を奮い立たせ、お茶会の場に挑む。

残念なことに公爵家のガーデン茶会会場に入ってすぐに、例の意地悪令嬢に見つかってしまった。

(こんなに広い場所で、なぜに見つかるかな。。)

気づかなかった振りをして、庭の生垣の向こうへ逃げたものの、追い縋るように声をかけてきた。


「ねぇ!あなた! 何無視していらっしゃるの!  折角ワタクシが挨拶してあげようって来たのに!」


(あ〜めんどくさい。また絡まれてしまったよ。 

 でもキャロラインが言うように、うまく相槌打って話ができる様にならないと。。

 確か、さ・し・す・せ・そ・・だったかなぁ。 

 あれ? た・ち・つ・て・と?

 あ〜でもまずいわ。肝心の言葉、覚えてない。)


私が立ち止まり、彼女の方に向き直ったため、彼女は、色々話をし始めたものの、私は、さしすせそ、が何だったか忘れてしまった事に焦って、あまり話を聞いていなかった。


(前世でも、さしすせそ、って聞いた事はあったけど、それって、家庭科で習った砂糖、塩とか調味料の順番だったような)


「ねえ!聞いていらっしゃる?! ワタクシはこの前、○○したって言ってるのよ。」

「えっ?  (あ〜どうしよう、聞いてなかったわ。でも、まずは『さ』だったわよね..)

  さ〜...さっぱり、わ、わからない?」

「何ですって! 貴女!」

「えっ? (わ〜!どうしよう、次の『し』 は、、) 

 しっ... しらない、知らないから。。」

「知らないですって!? 」 

「(ど、どうしよう。とにかく次は『す』だよね) ん〜〜、す、拗ねないでください」

「はっ? 何を言っているの?  どうしてワタクシが拗ねるなど!」

「(最後、『そ』だわ) そ、そ、そうですね。。それで?」

「もう! いいわ!(怒)」


 令嬢はすごい勢いで怒って行ってしまった。

私はよく判っていないまま唖然と彼女の後ろ姿を見送った。


「プッ! フフフフ.. ハハハハ!」

急に笑い声が聞こえた。

アンドリューだった。


「ローズ、君は前も彼女に絡まれていたね。今回もどうなるかと思ったら、撃退、見事だったよ」

彼はそう言って、楽しそうに笑いながら、向こうのほうへ去っていった。




後日、キャロラインに、お茶会の事を聞かれたのだが、正直に話したところ、大いに呆れられた。


「ローズ、貴女の使った『さしすせそ』は、好感度を下げるものだったのよ! 

 もう!よくぞって言うくらい真逆。

 使った相手があのマウント好きな彼女でしょ。すごい効果があって何よりだったわ。

 でも、ちゃんとした好感度上げの『さしすせそ』も忘れずに、よ!

 とにかく、あの彼ともうまくいきそうなんでしょ? 良かったじゃない。」

 

そうなのだ。何とあのお茶会後、アンドリューが私への見方を良い方へ変えたのか、何かと話しかけてくれるようになった。

わたしの方も、ちゃんとした『さしすせそ』を思い出したから、会話もつながるのだ。

私たちは婚約者候補から、正式に婚約者になった。


『さしすせそ』は幸福を招く。

嫌な相手を撃退もするし、良い人には好感度も上られるのだから。


今日もまた婚約者とのお茶会の日を迎えた。

そう。

私は相変わらずのんびりしながらも、さしすせそ、だけは駆使しながら、幸せです。

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