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第15話 婚約破棄

「・・・と言うことが起こり、一月前に、使用人が入れ替わりました。後は・・・庭師ぐらいしか残っていません。庭師はシャーロット様への虐待に関わっていなく、おりをみて助けていたようです」



「信じられない!!」


と僕は叫んだ。そんな。あのシャーロットだよ。そんなことあるわけ・・・


「ニコライ様、そろそろお時間ではありませんか。さあ、早くシャーロット様の所へ」


人が変わったメロディが促す。


ニコライは渋々、お茶会会場に独りで向かった。


「何だ。あれは?」


庭には、大きな鏡が屋根に付けられている建物がある。

あれが、話にあった別館か?シャーロットめ!


王子殿下だけではなく、イセ国をも味方に付けるなんて、どれだけ魔性な女?

早く、勘違いをただして、身の程を教えなければ・・・

僕はこの別館の周りをウロウロ回った。


馬のない馬車か?

珍しいものが沢山ある。

そう言えば、小さい頃は、何でも珍しくてシャーロットと野山を回ったな。


何だ、金属の棒が、立っている。網のように加工されているものがある。


僕はここで小1時間ほど過ごすことになる。


すると


「ニコライ坊ちゃま!」

庭師のヨブ爺さんが、後ろから、ニコライに声を掛けた。


「ヨブ爺さん。久しぶり」


庭師は

ガバとニコライの肩を掴んで、茂みに連れ込む。


「私は、木から落ちて、腰を痛めました。シャーロット様が、あの冷遇されていたときも、費用を捻出し、屋敷に残れるようにして頂きました。シャーロット様に恩がございますが、ニコライ様も大事に思っています」


「え、元気だった」


そう言えば、小さいころ、シャーロットと一緒に、ヨブ爺さんの後を付いて回って、仕事を眺めていたな。


ヨブ爺さんは小さな声で、



「どうか、穏便に、婚約破棄をなさって下さい。メロディ様への思いを述べれば、どこかで奉公人として暮らせます」


「何だって、婚約破棄はするさ。何を言っている・・」


「精霊たちが、もし、シャーロット様のお気持ちを傷つけるような行為を、ニコライ様がするならば、容赦はしないと、話しているのを聞きました。どうか、穏便に!」


何でも、シャーロットと僕では、釣り合いが取れない。いっそのこと、不慮の事故で・・と精霊たちが話していたのを、ヨブ爺さんが聞いてしまったらしい。

ハハハ、あり得ない。僕は貴族だよ。


しかし、あまりに必死に頼むので


「わかったよ」

と僕は渋々返事をして、ヨブ爺さんと別れた。

また、精霊か。

そう言えば、小さい頃、シャーロットとは仲が良かったな。

何がきっかけだったかな・・・



・・・・


「さあ、精霊殿、ワシを殺して下さい。覚悟は出来ています」


ニコライが去った後、ヨブ爺さんは、座って、誰にと言うわけではないが、話しかけた。


ヨブ爺さんは、後ろの庭木に、武装した精霊が一人いて、聞き耳を立てていたことを知っていた。


「・・・爺さん。何か勘違いしてないか?殺す理由がないだろう。体をいたわって、出来る範囲で働いてくれれば、それで良い。スペンサー家は、怪我した奉公人を見捨てないと手本になるからとシャーロット様が仰せになっていたではないか」


とヨブ爺さんの後ろから一人のイセ国の野戦服を着た騎士が出てきた。


「へっ、ワシは生きていていいのか?」


「当たり前さ」


まあ、無理もないか。一月ほど前の、使用人どもの天誅事件を知っているからな。

と警護に来ていたイセ国の騎士は、ヨブ爺さんの決死の覚悟を、好意を持って受け止めた。


「さて、どうなることかな。ニコライ様が、爺さんの言う通りに言うのが筋だが、そうはならんだろう。馬鹿の行動は予測を超える」




・・・・


僕はガゼボに着いたが、メイドと従者たちが、皿を片付けている。

シャーロットはいない。


「おい、シャーロットは?」


「・・・?ニコライ様、お茶会の時間はとっくに過ぎておりますが・・シャーロット様は10分前までおりました」


「何だって、たった1時間しか過ぎていないじゃないか!シャーロットは1時間も待てないのか?」


「はあ」とため息こそ付かないが、メイドたちは「後は、当家の執事にお聞き下さい」


と呆れ気味にニコライの問いに答えた。


「どうなっている。うん?」


庭の中央に、新たなお茶会が開かれている。あの後ろ姿は、シャーロットの髪型?

あ、地味メイドもいる・・

シャーロットに違いない!


僕は向かったが、メイドたちが止めに掛かる。


「おやめ下さい。ニコライ様は招かれておりません!」


「ええい、放せ!」


僕は精一杯にメイドたちを振り切り、お茶会会場に向かった。


4人いる。地味メイドは、何だ。ドレスを着て、シャーロットの後ろに控えている。

生意気な。


テーブルに着く前に、メイドたちが壁を作った。近づけない。


「シャーロット!お茶会を勝手に、やめるとはどういうことだ。逃げるな!えっ」


・・・テーブルに座っているのは、王太子とその婚約者イザベルと第二王子ウィリアムと・・シャーロット?


あれ、シャーロットって、こんな美人だった?メロディが癒やしとしたら、シャーロットは、妻?良妻賢母になりそうな・・・


そうだ。シャーロットを第二夫人にして、メロディを第一夫人にすれば、すべて解決する。

そうすれば、メロディへのイジメをなくせるだろう。

僕の寵愛を第二夫人の形で示せばいいさ。


「ニコライ様、まずは遅れたことへの説明をお願いします」

とシャーロットは背筋を伸ばして問う。


「ぼ、僕に謝れってことか?」


「いえ、だから、説明をと言っているのです」


・・・ラチが開かない。ここは強気にと思っていると第二王子ウィリアムが発言をした。


「僕たちは、別館見学をしていた。君とのお茶会が終わった後に、スペンサー伯爵令嬢を誘おうと思ったけど、遅すぎる。レディを待たせてはいけないよ」


(シャーロットを奪う気だな。僕の方が付き合い長いのに)


ニコライは自分でも気が付かないうちに、婚約破棄をすることを忘れていた。


・・・相手は第二王子だ。きちんと、シャーロットが如何に卑しくて僕以外でないと付き合いできないか説明してあげなくてはならない。

僕は意を決して、第二王子に意見を言った。


「シャーロットは、新しい家族を平民と卑しみイジメました。心を開きません」


「私たちは貴族、お前も貴族よね?」

「母上が亡くなられてから、すぐに新しい家族だと言われて納得できる?」

イザベルがツッコミを入れる。


ニコライが何を言っても、3人は堪えない。「フフフ」と呆れたように笑みすら浮かべる。


だから、僕は王族ですら知らない秘密を打ち明けた。



「殿下、シャーロットのスペンサー家は、魔物を焼く水を扱う賎民出身です!とても、王家の方々と一緒にお茶が出来る身分ではありません!僕がもらってあげなければ貴族として成り立たない家系なのです」


パチンとイザベルの扇が飛びニコライの顔に命中した。


「お前、貴族教育を受けたのかしら。そもそも、王族を含め貴族は、領民を守ってこそ貴族。貴族の義務を全うしてこそ貴族!

出自は関係ない。それを言うのなら、貴族はゴロツキが集まって武装して地元を守ったのが始まりよ」


「え、何を言っていますか?いくらイザベル様でもひどいです!」

僕は懸命に訴えようとしたが、


第二王子が、手袋を外した。ニコライに投げたら、決闘になる。


「え、決闘?!大げさな」

僕は理解出来ない。何故、王族は僕に嫌がらせをする。他に女いっぱいいるだろう


第二王子は、シャーロットの前で、膝を折る。


「レディの名誉を回復する栄誉ある役を私に授けて下さい」

と懇願する。


シャーロットは一瞬、目を見開き。


「不要でございます。何故なら・・」


とニコライの方に顔を向け。

「ニコライ様、貴方との婚約破棄を宣言します。理由はおって書面で、貴方のお父様にお知らせします」

と淡々に事務的に言った。そこには感情はない。


様子を伺っていた元近衛騎士団長、今はスペンサー家騎士団長が、指示をする。

「もう、ニコライ様は当家と全く関係なくなった。連れ去れ」

「「「はっ!」」」


「ちょっと、待て、こんなのおかしいだろう?シャーロットのくせに!」


騎士数人に、お茶会会場からニコライは連れ去られた。


「ですから、王子殿下、もう、ニコライ様は婚約破棄をされた汚名を被りました。どうかお立ち下さい」


第二王子に手を差し出す。


・・・あれはニコライを助けるため?それとも、本当に嫌気が差したのかしら。

でも、ウィリアム、まだ、シャーロットに婚約を申し込んではだめよ。


とイザベルは目で、ウィリアムに牽制をした。




最後までお読み頂き有難うございました。

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