第1話 婚約破棄を止める家族と来られなくなった友人
「え、来られないって、何故?」
「申訳ございません。私は使用人です。主家の事情は、詮索しないのが決まりでございます」
騎士団長の息子、マックスが来られなくなったと使者が言った。
マックスはシャーロットとメイドが暴れたときに押さえてもらおうと思っていたけど、彼もメロディを狙っているから、まあ、いいか。
今日は、婚約者とのお茶会の日、僕は、婚約者に婚約破棄を叩きつける!
証人として、友人達に来てもらおうとした。
婚約者のシャーロットの今までの義妹メロディと義母や、使用人に対するイジメを断罪し、僕は、婚約破棄を宣言し、その場で、メロディに婚約を申し込む。
シャーロットは狡猾だ。学園では第二王子殿下や、大公子に気に入られている。一部の高位貴族に好かれている。僕というものがありながら・・
シャーロットは罪を償うために、爵位継承権をメロディに譲る書類にサインをさせ、シャーロットは老貴族に後妻として嫁いでもらう。
シャーロットの腰巾着の暗いメイドは、婚約者と一緒に追放だ。
二人して、経験豊富な老人貴族に躾てもらおう。
僕はニコライ、伯爵家の二男、同じく伯爵家のスペンサー家の長女のシャーロット婚約している。
僕の婚約者はとても意地が悪いと評判だ。母親が亡くなってから、新しく家族となった義母と義妹に心を開かず、平民出身とさげすみ。使用人にまで、無体なことをしていると聞いている。
あれは、数ヶ月前のこと、お茶会に行ったとき、回廊で、義妹のメロディが、泣いていた。
「グスン、グスン」
「どうしたの?君は、シャロの妹だね」
かたくなに、「何でもないの、私が悪いの」と言うだけ。あれ、メイドがやって来た。メイドは手に包帯している。
「それ、どうしたの?」
「こ、これは、その、シャーロット様に、私が粗相してしまって、熱いお茶を入れてしまって・・お仕置きとして、お茶を掛けられました。メロディ様が庇ってくれて、メロディ様は叱られてしまって、全て、私が悪いのです!」
・・シャーロットめ。
僕はこのとき、初めてシャーロットにビンタをした。
この日から、シャーロットに、不信感を抱いた。
シャーロットは、僕に対しては、勉強をしろとか、剣術の稽古をしろとか、領地経営の勉強をしろとか、偉そうなことを言っておいて・・・自分はイジメをしている。許せるワケがない。
「「「ニコライ!」」」
「あ、父上と兄上、母上まで」
「お前、今日、シャーロット嬢に、婚約破棄を叩きつけるとの噂を聞いたが、本当か?」
いつの間に、皆には内緒と言ったのに、いい機会だ。常日頃から、シャーロットの悪行を父上に話しておいたから、わかってくれるだろう。
「父上、大丈夫です。スペンサー伯爵には、了解を取っています。義妹のメロディと婚約します。この結婚は共同事業を目的とした政略結婚です。だから、何の問題も・・」
「バカモノ!スペンサー伯爵ではなく、スペンサー伯爵代行殿だろ。いつもお前が言っている。シャーロット嬢が、義母や義妹、使用人をイジメている。父親も手を焼いている。そんな話はどうでもいいわーあくまでもシャーロット嬢と結婚せよ。当主の命令だ。とにかく、今日は、お茶会だろ。婚約破棄をするのは、待て!」
「何故です。父上!」
「・・どうしてもと言うのなら、婚約を解消して、平民の義妹と結婚させる。共同事業のことはなにか別の方法を考えるしかない。お前は家を出て、奉公人でもしろ」
父上は、何も知らない。伯爵はメロディと結婚する者を次期伯爵にすると約束してくれた。それは僕だ。シャーロットは、きちんと、躾けることのできる年上の貴族の後妻に入る。そこで、反省と性格を矯正する。全て丸く収まる。
「ニコライ、お前、知らないのか?スペンサー家の当主には精霊の加護、いや、それよりも強力な加護が付いている。加護が付くのはスペンサー家直系のみ。直系は前のスベンサー伯爵の子・・シャーロット嬢のみだ!お前が伯爵と言っているのは、シャーロット嬢が爵位を継ぐまでのつなぎにしかすぎない入婿だ」
兄上まで、加護なんて、そんな迷信を・・
「ニコライ、どうか、今日、婚約破棄をするのはやめておくれ・・シク、シク」
母上まで、信じているのか?
「もう、わかった。とにかく、行くよ!」
そして、僕はかなり早めに、スペンサー家に向かった。
予定なら、ここで、伯爵夫妻とメロディと友人たちと最後の打ち合わせをするからさ。
最後までお読み頂き有難うございました。