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『Seeker's』ー1

ここから暫く間は三人称視点でお送りいたします。

――――――――――――――――――


「みんなただいま~」

「よう! 戻ったかメキラ。それでどうだったんだ調査の成果はよ」

「社長……じゃなくてメルシア。今日もまた空振りよ。わざわざ私と別方向の鑑定ジョブ持ちを雇って総動員したってのに。まったくなんなのかしらねあの階層は」

「キラっちいつもご苦労さん! でもやっぱバグなんじゃないの。運営に連絡はした?」

「バッキュンあんたね……そんなのとっくに何度もしたわよ。なんの不具合もないのとしか返って来なかったけどね!」

「……メキラにはいつも苦労をかける」

「私に優しいのはカグシちゃんだけよ。きゅっとしちゃう」

「あ、ズルいあたしも」

「……息、詰まる」

「ははは、今日もみんな仲良しだな!」


ここは『Seeker's』クラン公有ホーム。暖色の壁紙に囲まれふかふかなソファーと色とりどりのお菓子の乗った大きなテーブルが置かれた一室。《《見た目》》は全員女性の『Seeker's』主要メンバー4人は、この場にて今後の発動方針を決めるため集まっていた。あとで各関係者に話を詰めはするがいつも大まかな方向性はこの4人でと決めている。


ゲーム内で用意したプライベート空間で主要メンバーで話し合う。彼、彼女らはある日こことは別のゲームの中で意気投合しオフ会を経てから共に会社を立ち上げて今に至るまでこのやり方を通している。今にしては支援者も協力者も増えてはじめの頃とは色々と変わってきたが不思議とこのやり方だけは変わらずに守られている。


「あ、そうだ。その階層に関して面白いメールが来てたぞ」

「メール? どこからよ、それ」

「うちのリスナーの……確か『探索支援隊』だっけか、そこの人たち」

「ああ、ファンクラブの人たちね。どんな内容だったの?」

「それがびっくりなことにな……」


数日前、『Seeker's』の公認ファンクラブ『探索支援隊』はその名が示す通り、自分の推しの一助となるべく会員一丸となり『ノースライン』19階層を隅々まで調べ上げていた。

既に一週間をかけて『ノースライン』全体マッピングの8割方を埋めていた彼らだったが依然として手掛かりは見付からず時間だけが無為に過ぎていく。そんな時だった事件が起きたのは。


「どうも俺らのアンチがPKを仕掛けてきたんだとよ」

「それって……」

「あ、言っとくがお前が個人的に探してるやつじゃない。女性アバターな上に高レベルの前衛職だったらしいからな」

「そう……残念ね。あの子を喜ばせたかったんだけど」

「シスコンこわっ(ボソ)」

「なんか言った?」

「いや、なんにも? ともかくそれからうちのファンとそのPKとドンパチしたわけだが。余程の激戦だったみたいでな。あの辺の地形がひっくり返ったって話だ」


それで?という表情を露わにして先を促すメキラにまぁまぁと話を続ける見た目だけなら金髪碧眼の美少女のメルシア。


ちなみにいうとどちらもメルシアもとい『Seeker's』社長の自作アバターを使っているいたりする。この4人組のアバターはどのVRゲームに行っても社長自らが製作する決まりだ。そして企画とか目標を終えて離れたゲームのアバターのデザインは会社の商品として売れている。どれも非常にクォリティが高いため大変人気の分野でもある。なお製作アバターは美少女型限定、制作依頼などはお断りしてる模様。本人曰く“モチベがないもん作ってもゴミしかならんからしない”だそうだ。


閑話休題


「で、視力を強化するスキル持ちが破壊不可の床にほっそい穴を見付けたってさ」

「それだけ?」

「うん、それだけ」

「確かにそんなところに穴があるのは不自然だけど。ただのテクスチャーの処理落ちとかじゃないの」

「いやそれに関しては相手方も確認したらしいけど……このスペックの機器持ってしても同じものが見てたってよ」


そう言いながらメニューを可視化させ、ある画像を映すメルシア。その報告者の機器の実際の写真とスペック表が並んで載っていた。


「なるほど、うちの事務用と遜色ないレベルね。これなら見間違いってことはなさそう」

「だろ? どうせ行き詰まってたところだし騙されたと思って行ってみようぜ」

「そうね……気になることはいくつかあるけど。そのほうがいいと思うは早速予定を組みましょ。念の為に録画も必要そうだしね」

「何々、撮影! ついこの前あたしの新調したヌッキーちゃんが火を吹く時に来たわね!」

「あそこいくの? ならインセクトマスター探す。防具にあいつの素材、欲しい」


と、そこで退屈そうに聞き耳を立てていたバッキュンと静観していたカグシが割り込む。


「じゃあ決定な。次の動画で『ノースライン』19階層突破するぞ!」

「おうー!」

「おう」

「はいはい各所の予定を詰めてからね。……まったくこの子たちは」


リーダーたるメルシアが号令を掛け、カグシとバッキュンが仲良く腕を突き上げてメキラがそれ呆れた、でも生暖かな目で見る。いつもの『Seeker's』の会議風景がそこにはあった。


こうして『Seeker's』の『ノースライン』攻略は決定された。それ自体が仕組まれていたこととも知らずに……



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