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九州大学文藝部 学祭号 2020

好きと言ってもらえなくても

作者: 藤野遠子

   子供、或いは獣のような君




そこで寝ちゃ駄目だよ、君は気を抜くとすぐに尻尾が出ちゃうんだから




三月の君の目標:①お布団で ②眼鏡はちゃんと外してから ③寝る!




すぐ傘をなくす君のままでいなよ 虹に好かれている証拠だよ




ハムスターみたいだね 君 夜更かしとほっぺにごはん詰め込むのが好き




蜂蜜入りホットミルクだよ これ飲めば怖い夢なんてすぐ忘れるよ




こんなにも三十一文字を光らせて君は春よりずっと眩しい






   不可解なのはお前だ




難しい顔で何度も頷くね おいしいものを食べた時には




不可解な生物として我を見るどこまでも科学者の眼差し




三単現「He」を教えて「彼」と言うたびに脳裏で邪魔すんな! もー!




読み止した文庫のようにひらかれる あとがきさきによんじゃだめだよ






夏ですよ、




夕焼けが君の眼鏡に光るから後部座席で恋に気づいた




新しい青のサンダルつっかけて虹の端っこ探しに行こう




透明なビニール傘は山荷葉 信号が変わる前にキスして






あの時はごめんね




神様のような人だと遠ざけて僕があなたを神様にした




実際の君は神様には遠く深夜のアイスを我慢できない






   好きと言ってもらえなくても




名歌とか秀歌とかってなんだろね 僕には「好き」と「すごい」しか分からん




好きな人に好きと言ってもらえなくても自分の歌を好きでいたいよ




こう見えて冬は一人で海に行くし人に見せない歌だってある

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