表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕はうまれた〜突然の脳卒中〜  作者: こうのたかよし
8/60

次の日から僕が倒れた事を知ったお店の常連様が次々お見舞いにいらして下さった。


従業員も沢山来てくれて体をひとりでは起こせない僕はすみませんすみませんと謝りながら止める事の出来ない涙をずっと流していた。


まだ自分が何も出来ない状態なのはさすがに理解出来ていたが


自分がどうなってしまったのかは解ってないままだった。


とにかくリハビリがイヤでイヤで半分以上を拒否して眠っていた。


ただ唯一心を開いていた国本さんのリハビリの時間だけはいつも心待ちにしていた。


その日の国本さんはリハビリ室のある4階を過ぎて1階までエレベーターで降りると僕を病院の出口へ車椅子を押し始めた。


玄関を開けると春の日差しと心地よい風が僕をくるんだ。


「病院の中だけやったら息詰まるやろ、たまには外に出るのもいいやん」


としばらく病院を出た正面にある大きな木の下で久しぶりに大気を全身で感じた。


(また外に出たいな、歩けるようになりたいな)


とその時は倒れて入院してから初めて気持ちが前向きになれた。


その日の夕食からご飯が刻み食に変わった。


ほんの少しの噛みごたえを感じながら食を進めると

病室に入ってきた息子に


「おとん、よだれいっぱい垂れてるで」


と言われた。見ると左の口から下によだれが落ちているのがわかった。


でも口にはその伝う感触は一切わからなかった。


ただそれより気になったのはダランと垂れ下がった左腕だった。


(あれ?左の腕めちゃ垂れてるやん、なんでやろ?)


と自分から出ている自分の手ではないその存在を不思議に思った。


左側空間無視の症状があった僕は動かないその手を自分の手だとは理解出来なかった。


夕食のあと東京の出張から帰ってきた社長がやってきた。


「お前大丈夫か?!でも心配するな必ず治るから会社もちゃんと待ってるからな!」


と力強く手を握ってくれた。


僕は言葉にも出来ずただただ泣くしか無かった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ