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僕はうまれた〜突然の脳卒中〜  作者: こうのたかよし
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花火

世間は夏祭りの季節になろうとしていた。


去年なら浴衣姿のお客様に料理を作っているところだ。


だけど今年はしっかりと管理された心地よい病院の中で暑さを感じることも無くただひたすらリハビリに励む毎日


夕食の後夜勤当番の主任が教えてくれた。


「今日夕食の後ぐらいから北側で花火見れるから終わったらゆっくり花火見てね」


もう数年来花火は見ていない。


あまり気は進まなかったがせっかくなので夕食を食べた後に一番良く見えるエレベーターホール前に行ってみた。


顔見知りの患者さんも含めて15人程の人たちが誰も騒ぐ事なくただ静かにキレイに輝く夜空を見ていた。


何十発と上がる花火は長いようで一瞬に終わり

なんとも言えない不思議な時間をそれぞれが味わった。


皆が病室へと帰る中

僕は1人リハビリ室へと向かった。


斎藤さんも退院した今

誰も居ないリハビリ室で僕はひとつの詩を書いた。


「花火」


病棟の北側に


幾人もの車イスの列が綺麗に並ぶ


不思議と誰もカメラに写す人はおらず


一瞬の輝きを逃すまいと


その瞳に刻む


ほんのひととき現実を忘れ


ただ目の前に拡がる真夏の幻想に自分自身を重ねる


不自由な手足にもどかしさを感じながら


一段と明るくなった夜空に希望を馳せる


明日は少しでも足が動きますように


明日は少しでも手が振れますように


明日には少しでも笑顔が増えますように


いま打ち上がる花火のように

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