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僕はうまれた〜突然の脳卒中〜  作者: こうのたかよし
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チャンピオンケース

誰も居なくなった自主トレ室にいつもの夕食終わりに立ち寄った。


すると以前奥谷さんがよく使っていたリハビリベッドには白髪頭のおばあさんが1人一生懸命柔軟をしていた。


僕が入っていくとチラッと視線だけが合った。


しばらく無言の時間が続く。


段々と居辛くなってきた僕は思いきって声を掛けた。


「自主トレされてるんですか?」


見れば分かる事なのだが何と言って良いかわからず間抜けな質問をした。


「うん、段々足が動けるようになって来たからね、ストレッチしてるねん」


まだ警戒心を解いてない感じの返事が返ってきた。


それでも勇気を出して話掛けて行くと段々と打ち解けてきた。


分かったことは名前が斎藤さん僕の母と同じ昭和6年生まれで脳梗塞

既に1ヶ月後には退院が決まっているとのことだった。


母が同い年だった事で一気に話が弾みそれからは毎日一緒に自主トレをしながら世間話をする関係になっていった。


ある日の午後


担当理学療法士の山本さんといろいろ話をしていた。


その時山本さんは誇らしげに


「河野さんは紛れもないチャンピオンケースです。被殻出血の人たちに勇気を与えられる成功ケースです」


と嬉しそうに言ってくれた。


でも僕は逆の事を考えてしまった。


3ヶ月かかってやっと歩けるようになった足とまだまだ不満足な左手。


もし足がチャンピオンケース(非常に稀な成功例)ならば

いまだに動かない左手は本当にこの先動く様になるのかと。


そんな不安な表情が読まれてしまったのかその日の自主トレ中に斎藤さんに声を掛けられた。


落ち込んだ表情で事情を話すと斎藤さんは


「あんたはまだ若いねんから

自分で自分を諦めたらあかん大丈夫」


と言いながら僕の左手をさすりながらいろいろ自分が試したリハビリ法をいっぱい教えてくれた。


最後にもう1度


「若いねんから大丈夫。自分で諦めたらあかんよ」


と言いながら優しく笑ってくれた。


僕は


「おまじないで斎藤さんと握手させてください」


と頼んだ。


斎藤さんは笑顔で僕の左手をしっかり握って


「大丈夫やで」


と言ってくれた。


その言葉で何故かとても気持ちが安心して病室に帰ってから久しぶりに涙がでた。


明日からもう一度頑張ろうと思った。

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