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僕はうまれた〜突然の脳卒中〜  作者: こうのたかよし
3/60

3日目

朝起きるとどうやらそれは現実に起こっているみたいだった。


だが左半身の感覚は一切無く右手には大きな点滴が付けられており身動きは一切出来なかった。


でも身動きしたいとも思わなかった。


見えるのは天井だけだ。


しばらくすると息子と彼女が顔を覗かせていたことに気付く


いつのまにか夕方になっていたみたいだ。


時間の感覚はまるで存在しない。


ベッドのリクライニングが上げられ食事が運ばれてきた。


全てペースト状で量はごく少量


彼女がすくって食べさせてくれた。


「あ、あ、こぼれてる」


と息子が慌てた。口の左側が動かないようで


口の端からよだれと共にそのペースト状になったものがこぼれ落ちた。


普段コンタクトの僕は何も見えず家から持ってきてもらったメガネを掛けてとお願いした。


ようやく二人の顔が鮮明になった。


二人とも泣いている。


僕がいろいろ語りかけても二人は聞き取ろうと必死で

望んでいる答えは帰ってこなかった。


頭の中ではしっかりと伝えてるつもりなのだが


二人には伝わらなかった。


なんとか起き上がろうと右側に体を寄せた。


その時僕は驚いて叫んだ


「俺の俺の左手どこ?!」


慌てて僕のネジ曲がった左手を持って彼女は言った


「左手ここにあるよ。、」


それはまるでシリコンで作られたマネキンの手を見てる感覚だった。


(誰の手なんだろう?この動かない腕は)


でも確かにそれは僕の手だった。


気付くと次の日の朝だった。


時間の感覚とほとんどの体の機能


そして人としての自尊心も僕は失っていた。


声を出して泣いた。


よだれも垂れた。


夜勤明けの看護師さんがまるで幼児を扱うように慰めてくれた。

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