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とある休日



 魔物の出現も減少して慌ただしい日常は落ち着きを取り戻しつつあるとある休日。私達は城下町へとお忍びで遊びに来た。

 久しぶりの休日が偶然アルと重なったのだ。

 その日アルに付いていたアキに後から聞いた話によると副魔法士長や部下たちに無理やり仕事を押し付けて休みをもぎ取っていたらしい。けれどアルが偶然と言い張るから偶然ということにしておこう。彼らへのお土産は奮発しようと思う。

 元々はアルと二人で出掛けようと計画していたけれど、出掛けることを四人に伝えれば一緒に行きたいとの事だったので六人で行くことになった。

 けれど、こんな美男子が纏まって歩いていればさぞかし目立ってしまうだろうから、せめて派手な髪色は魔法でみんなマロン色に変えておいた。これで少しは目立ちにくいかな?


 街に来るのは久しぶりで目新しいモノが沢山ある。良い匂いを漂わせているパン屋さんや、野菜を叩き売る威勢の良いオジちゃん。流行りの雑貨屋さんに可愛い花屋さん。どこから行こうか迷ってしまう。

 因みに今私の前をハル、アル、ナツがその後ろをアキ、私、フユが並んで歩いている。

 ハルがアルと腕を組みナツは自分の頭の後ろで手を組んで進んで行く。


「アテナちゃん!僕もアテナちゃんと腕組んでもいい?」


アキは相変わらず可愛い。


「うん。いいよ!」


するりフワッと腕を組まれた動きに合わせてアキの髪もフワフワと揺れる。綿飴みたいだ。可愛い。

 すると、アキと組まれた腕とは反対側の袖がくいくいっと引っ張られた。

そちらを向けば大きな手が私の袖を軽く摘んでいる。その手を辿り、上を見上げればフユが寂しそうにこちらを見ていた。


「はい、フユも迷子になったらだめだよ?」


そう言って手を差し出せばッホと顔を綻ばせて優しく手を握り返してくれた。フユの手は私の手よりよほど大きいのにキュッと握る感覚はまるで幼い子供みたいでとても愛くるしい。


そんな両手に花!両手に可愛い弟!状態で歩みを進めて行く。そういえばこうしてみんなで出掛けるのって初めてじゃないかな?


 それにしても、街ゆく人々の視線が突き刺さる。人通りの多い道を歩いているのになぜか人混みが割れて道が開ていく。ヒソヒソ話しているようだけど、大勢集まればそれなりの音量だ。髪色を変えて服装も地味で素朴なモノにしても良すぎる顔はそれらの意味を無くしているらしい。

 


「ねぇ、皆んなはどこか行きたい所ある?」

「僕は最近人気らしい流行りのスイーツのお店に行きたいなぁ」

「僕は本屋に」


ふむ、なるほど。私も本買いたいし、流行りのスイーツ気になる!

丁度、道幅が広くなったところで通行人の妨げにならないよう壁際に皆んなで寄り、前を歩いてた三人が振り返る。


「僕は植物園へ行きたいです」

「俺は鍛冶屋に剣の調整に行きたいです!」

「俺もその二箇所は行っておきたいな。植物園で見ておきたい薬草があるんだ。鍛冶屋には杖の細工を頼んでおきたい」


「じゃあ、午前中は二手に分かれて行動しようか!お昼ご飯は皆んなで食べたいから、時間になったら兎屋集合でどうかな?」


兎屋は大衆食堂とレストランの間みたいなお店で気兼ねなく入れる雰囲気だ。しかもどのメニューも絶品!お忍びで来た時はよく食べに行っていたお店。久しぶりにあそこのお料理が食べたい!


「そうしよう、じゃあアテナ達、また後でな」




 


 私達はまずフユの用事から済ませることにした。本屋へ着くとフユは経済や学術書のコーナーへ、アキはレシピ本コーナーへと向かった。私はというと、最近ハマっている恋愛小説のコーナーへと向かう。こちらの世界の恋の話はとても面白い。天界ではほとんどきょうだい同士の恋愛だし、愛さえあれば何でもいいけれど、こちらの恋は種族、身分、性別、沢山の障害が二人の間に立ち塞がる。それらを乗り越えて彼らの恋は燃え上がっていくのだ。なんて素敵だろうか。


 今日は城に使えるメイドさん達オススメの本を何冊か購入した。


 会計へと向かう途中、流行りの小説が並ぶ特設コーナーの前を通った。


『王子と執事の恋愛事情』

『王女付き執事の禁断愛』

『アイドル執事は執事に恋をする』


など、表紙に描かれている主人公であろう絵姿がどこかで、というかよく見慣れた色合いのモノを沢山見つけた。種類も豊富!人気があるのはいいことだ!

いいことなんだけれど、何というか...なんとも言えない気持ちである。







・・・・5冊買った。









 購入した本は送ってもらうように手配して身軽のまま次はアキの目的地へと移動する。お店まで着くと長い行列が出来ていて並ぶことを覚悟をしていたけれど、いつの間にか席を予約してくれていたみたいでスムーズに入店出来た。

 道沿いに設けられたテラス席へと案内され席に着く。

 沢山歩いて体が火照ってしまったので、冷たい紅茶とこのお店オススメのチーズケーキを注文した。アキは私と同じモノにベリーソースのトッピング付きを。甘いものが苦手なフユはコーヒーを頼んだ。


 街を通り抜ける賑やかな風を感じつつ美味しいケーキに舌鼓を打っていると、見知った人物がこちらへ向かって歩いてくる。何故か一人で。


「あれ?なっちゃんどうしたの?ひとり?」

「それが聞いてくれよー!いつの間にかアル様とハルとはぐれちゃってさぁ」


「「「・・・・・。」」」


「俺、足の速さには自信あるし、耳もいいし、鼻も効くから頑張って探したのに全然見つからないんだよ」



「...撒かれちゃったね」

「...撒かれたんだね」

「...撒かれたな」


「だから姫の匂い辿って来たんですよ!ケーキの甘い香りより姫の香りの方がよっぽど甘ーーーーうわ!危ないだろアキ!フユ!」


「なっちゃん黙ろうか?」

「ナツ、口を慎め」


「アキ!フォークの先で刺そうとしないで?!フユもペン先こっちに向けないで!?」



弟達は今日も仲が良くて何よりである。






「あ、アルさまぁ。兎屋に行く前にもう一箇所行きたい所があるんですけど、いいですかぁ?」

「ああ。そんなに遠くなければ構わないけどどこだ?」

「下着屋に」

「.....なんでだ?」

「アル様は何色が好きですか?」

「.....なんでだ?」

「アル様はフワッとした物とピタッとした物どちらが好みですか?」

「........ハル?」

「そのぉ.....どんなモノなら触れたいですか?(上目遣い)」



「ハル!?!?!?!?!?!?」






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