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僕の今の表情はとんでもなく間抜けな表情だと思います。できれば、兄弟たちには見られたくはない。特に、あの生意気な三男は間違いなく、腹を抱えて大笑いしているでしょう。
そんなことを考えながら、目の前の光景に、彼は出かける前に末弟の言っていた、予知夢を思い出した。
「雅兄さん、今日はどこかお出かけするの?」
後ろから声かけたのは、末弟の暖だった。小さい彼は、自分と同じく色素が薄く、ブラウンの髪と瞳を持っている。暖を見ると、どうやら心配そうな表情でこちらを見遣り、目が赤くなっているのを見ると、どうやら寝ながら泣いたらしかった。
「少し出かける予定ですが、どうしたんです?・・・泣いたみたいですね。」
暖からの質問に出かけることを伝えると、視線を下げて、またしても泣きそうな表情に変わった。それに頭を撫でてやり、「夢を見たんでしょう?今日は僕のことを見たみたいですね。」と声を掛ける。
「雅兄さんが、なんか倒れちゃってた。・・・周りが全然知らないところに連れて行かれてて、僕ら助けに行けなくって・・・。」
ボソボソと呟く様に話す暖は、更に泣きそうに表情が崩れた。
「大丈夫ですよ。それを聞いてますから、十分注意しますしね。」
そう言って安心させようと、「・・・本当?」とこちらをじっと見つめる瞳には涙が浮かんでいて、それに頷いて見せると、「そっか・・・。」と小さく笑ってくれた。その表情にこちらも安心から、笑みが零れた。
「今日は早めに帰ってきますよ。それなら、もっと安心できるでしょう?」
「うん。僕が夜ご飯作るから、ちゃんと帰ってきてね。」
「それは楽しみですね。では、少し行ってきますね。」
「・・・いってらっしゃい。」
暖は、浮かない表情ながらも、小さく笑みを浮かべて手を振って見送ってくれた。そんな暖に少々後ろ髪を引かれつつも、大学へ向かう。
外へ出ると、青空が広がっていた。雲一つない空を見上げては、強い日差しが肌に刺さるようだった。まぁ、嫌いじゃない、と思いながら、手に持ったバックを肩にかけた。周りを見ると、いつも通りの景色が広がっている。
末弟が心配しているようなことはない様な気がするが、泣き顔を思い出すと、無事に帰らないと更に泣いてしまうだろうな、と内心呟く。十分に気を付けると言った手前、油断するわけにはいかず、周りを少し警戒し、通学路を進んだ。
それでも、空の青さを観察することは止められず、前は見える程度で観察していると、どうやら、少し先で自然ではない光が見えた。それを不思議に思い、ここを曲がった先だなと、その光が見えた方へ向かった。