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「はぁ!?どーいうことだよ!?」
主が封印の間に入った、ということを空龍こと、ソラから伝えられた。ソラは、ギュッと強く唇を噛んでいた。その様子から、悔しいのだろう、とは思うが、怒りの方が強い。詰め寄る相手が違うことは分かっては、いる。・・・だが、責め立てないと気が済まない。
「・・・火龍、それはソラ兄様に言ったところでしょうがないでしょう。主様が決められたのですから・・・。」
静かに宥めるような声が後ろから聞こえる。声の主は、俺と同じ天界部隊、主からは八龍と呼ばれている風龍・・・唯一の女性だ。まぁ、一番下である双子は男女だが、まだガキである為、女性とは言えないだろう。
「うるせーよ。」
自分でも、分かっている。主が誰かに封印されることなんて絶対、といってもいいほど、あり得ないことだと。
俺以外の八龍は、俺の様子、ソラの様子を見ては少しソワソワしている様だった。その中、異端・・・でもある魔界人の黒玄が傍でこちらの様子を窺っている。俺は、その隣を足早に抜けた。
ソラは主から、『コウ四人のことも頼む』と聞いた、ということは、あの男も聞いたということだ。あれは勘も鋭く、ずる賢くもある為、主が守っている=使える上に弱いと言っている様なものだ。
守らねば、と咄嗟に思い浮かび、主に借りていたコウ四人を見る為の鏡を覗き込む。すると、鏡は黒く曇っていた。・・・不吉な前兆の様なものだろう、という考えから、自分の眉間に皺が寄るのが分かった。それから、すぐに行動しなければと、行動すべきことをない頭をフル回転して引き出す。
まずは、助け出す、こちらへ迎え入れることを考えたが、それは天界では大罪となる。それでは守るべきコウ四人・・・今は神兄弟を守ることも出来なくなってしまう。それはダメだと、小さく息を吐く。
過干渉は、大罪・・・まず、自己防衛だけでもしてもらえれば、何かできるかもしれない、と鏡を握り締め、声を掛けに行こうと早速動き始めた。
本来であれば、ソラたちへ報告をして行動するはずだが、神兄弟を救いたいという気持ちが強かった為、少し先走ってしまった感もある。まぁ、突っ走ることは俺の短所であり、長所であると、自分に言い聞かせつつ、現世へ向かった。
元々、鏡で見ていたカナエ兄弟次男の神雅へ警告をしようと動いた。そのままの姿を晒すのはまずいと思い、黒いフードを被り、変身の法で主に似た姿に変えた。次男に分かるなんてことはあり得ないが、もしかしたら、があると思い、小さな小さな抵抗ではあるが、主へ姿を変えた。俺は男、主は女。まぁ、それもあって雰囲気や仕草は全く重ならないだろうと思い、この姿を選んだ。
現世へ行くルートはいくつかあるが、俺たち八龍専用のルートを使うと、兄どもにバレてしまう為、それは避けたい。主公認で俺が作ったルートを使い、現世へ出発した。これはバレてしまうが、すぐに、という訳ではない。
次男である雅は外出をしているらしく、現世へ足を踏み入れると、青空が広がっていた。この辺りにいるだろうと思い、歩き始め、角を折れると、目の前に目的の人物がいた。
鏡で様子を窺っていた人物ではあるが、思った以上に天界で生きていた時と変わらず、驚き、固まってしまった。