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第六歩ウチの子がいじめられたため、抗議に行こう

 翌朝。誰に呼ばれる訳でもなく、僕は日も出ていない朝早くから目を覚ました。

 手作りのパジャマを脱いで、勇者時代の正装に着替える。この世界にも寝間着はあるが、どうもチクチクしてたり、ゴワゴワしたりと肌に合わない。

 パジャマっていうのは、やはりラフな感じこそが王道。

 さてと。昨日は散々だったなあ。これで僕を逮捕しようものなら、王国ぶっ潰してやる(冗談)。

 一応、神様の使者って扱いなのに。

 まあ、知られていないし、どうでもいいか。

 今日正装をした理由は他でもない。国王と話をつけに行く。どういうわけか、ウィル君と所々似ている白いスーツみたいな格好だ。何かこういうの着て、サングラス掛けると、「ヤ」の付く自由業の方みたいで嫌なんだけどなあ。この世界にサングラスは無いけど。

 とはいえ、向こうに拒否する度胸があるとは思えない。

 簡単な話だ。僕には一小隊だけで国を半壊させかねない魔王軍の本隊を僕が単独撃破したという実績があるから。

 そうするつもりは無いけど、脅しには充分使える。

「全く。王城何て行きたくないよう......」

 お姫様に献上する品物を用意しなくてはな。

「さて、あのお姫様が気に入るような物か......」

 これを機に、新メニューでも考えてみるか。

「この世界でこんな事を考えるのは、間違いなく僕しかいないだろうな」

 大抵の人は、完成した中でも最高の作品を用意するに決まってる。

 一国の姫を実験台に使う何て恐れ多い。

「よし。閃いた」

 つい最近ようやく手に入れる事ができた取って置きを献上してやろう。

 結婚は拒否したけど、一人の女性としてはいい人だと思うし、できれば仲良くしたい。

「そんじゃ、張り切ってご機嫌取りしますか!」


        ◇


 ああ......昨日、怖かった......

 やっぱり、獣人が人間に受け入れられるのは、難しいのかな......

 ガルロさんは、結構仲良く接してくれているから浮かれてたのかな......


 マスターに、捨てられるのかな......


 ここは、食べ物をを売る所だとマスターから聞いた。なら、嫌われ者の獣人がここに居ていいはずがない。

 結局、昨夜は、不安と恐怖で一睡もできなかった。

 それにしても、昨日のマスター、怖かったなあ。

 聖騎士様の腕を掴む所何て、目がダンジョンボス並みに凶悪だった......見たことないけど......

 そうやってお布団の中でゴロゴロしていたら、お布団の上の辺りをツンツンされた。

 お布団から顔を出すと、そこには、すごい形相でこちらを見るセリスちゃんの姿が。

「どうしたの?こんな朝早くから」

 まだ朝も早く、気温も低い。なのに、セリスちゃんの顔は紅潮していて、息も切れている。

 何かの用事で相当急いでいたのだろうか?

「セリスちゃん、大変なの!いんちょーが、王城に行くんだって!」

 王城!?まさか昨日の事で、マスターが処罰される!?

「それは本当なの!?セリスちゃん!」

「うん!さっき、お腹すいたから、何か食べ物を探しにお店の方に向かったら、いんちょーが、そこでお料理していて、『王城に何て行きたくない』とか、『お姫様が気に入る物』がどうとか、『ご機嫌取りをする』とか言っていた!」

 顔から一気に血の気が引いた気がした。

 私のせいで、マスターが......

 マスターが居なくなったら、ここはどうなるんだろう?

 ここには、行くところのない、捨て子ばかり。とてもここを維持できるほど能力の高い者はいない。

 つまりマスターが居なくなれば......

「こうしてはいられません。行きますよ、セリスちゃん!」

「うん!」

 マスターに怒られるかもしれないけど、じっとなんかしていられない!


        ◇


「ディックショナリー!」

 やべ、思わず大人気芸人のネタでくしゃみしちまった。著作権引っ掛からないかな。

「大丈夫ですか?」

「大丈夫だ......」

 何だろう、ウチの看板娘達が何かを勘違いして、お急ぎでこっちに向かって来ている気がする。

 まあいいや。そんな訳ないし。てか、この時間に起きてる訳ないし。

 僕は丹精込めて作った自慢の新作スイーツを片手に王城の門までやって来た。

「それで、国王に会いたいんだが」

 門番にそう告げた。うわぁ、さすが異世界って毎回思えるねえ。ここのイギリス騎士風の全身甲冑の門番を見ると。

「何か身分証明できる物はありますか?」

 この門番、今僕に礼儀正しいけど、それは決してこの門番が真面目だからではない。

 最初は僕を「んだよ、こっちは急がしんだよ帰れ」と言わんばかりに睨み付けたけど、身なりを見るなり態度を改めた。

「これでいいかね」

「はっ......!?」

 大抵の奴はここで「無い」と答えて、金をぼったくられた挙げ句、中に入れてもらえない。

 だが僕はそんな間抜けじゃない。しっかりと持ってきた。

 この世界では、これ以上に僕の身元保証にふさわしい物はない。


 金色のギルドカードを。


 この世界にも、大抵の異世界にあるのと同じような、冒険者達を纏めるギルドという組織が存在する。

 そんで、大抵の異世界と同じように勇者である僕はその頂点、「ゴールドランカー」である。

 ギルドは世界各地にあり、冒険者パーティーの大半もギルドのトップランカーだったりする。

「し、失礼しました!」

 こういうの気持ちいいよね。

 自分を見下していた奴が正体に気付いて、大慌てするの。

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