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第五歩ウチの子がいじめられたため、相手をボコボコにしよう

 聖騎士。ウィル君が騎士として最強ならば、聖騎士は、そのサポートをする精鋭。数は極めて少なく、その実力は凄まじく高い。

 それが四人。コイツら、ドアを閉めないって、どういう教育を受けてるんだ。

「今日は何のご用でしょうか?」

 胸に右手を当て、左手を腰に回してお辞儀をする。 僕が元の世界で死んで、神様にこの世界で転生させて貰った事を知るのは、元勇者パーティーのメンバーと、ガルロさんみたいな信用できる協力者だけだ。

 その方が色々と便利だからね。

 うわぁ、ガルロさんが激怒してるよ。僕以上に殺気が立ってるよ。

「今日はリーネ王女殿下が貴様の店のコーヒーとやらが飲みたいとおっしゃったのだ。光栄に思え」

 リーネ王女。

 王国第一王女にして、この世界最高位の召喚士。元勇者パーティーの一員だ。何を隠そう、彼女が僕を異世界から召喚した事になっている。

 金を鋳溶かしたような輝くブロンドをストレートに伸ばし、いかにも金持ちだと言わんばかりの意匠の凝った純白のドレスを違和感なく着こなす僕と同い年の少女。

 王国の現在の最高戦力部隊をパシリに使うんだ。これくらいの肩書きは必要だろう。

 魔王を倒してから、この国の王様から彼女を嫁に貰わないか?と言われて断って以来、よそよそしい態度になってしまった。

 でもやっぱり僕には姫を貰う気はない。ヘタレだと言われるかもしれないが、どっかのハーレム主人公どもに比べれば、大分ましに思える。

「ティフ、大丈夫?」

「は、はい......」

 表面上は穏やかにニコニコしているが、内面僕は今物凄く怒っている。

 これは、僕の少ない自前のスキルだ。

 大体のスキルは神様から転生時に貰った物だが、このポーカーフェイスは元の世界の学校でいじめられていた時に身に付けたスキルだ。

 反応すると、逆エスカレートする場合が多い。だから気にしないフリをしとけばどうにか乗り切れる。

 ガルロさんにも、手出し無用と耳打ちをしておく。下手したら、僕より先に手を出すかもしれない。

 ともかく、リーネ王女が飲みたいって言うんだ。丹精込めて準備しよう。

 あんな奴らに運ばせるとなると、ヘドが出そうだけど。

「ギルス、今は我々が勇者殿に頼み事をしているのです。申し訳ありません。彼は最近入った新人で、浮かれているので」

 後ろに控えていた女性の聖騎士が声を出した。

 へえ。あの聖騎士ギルスっていうのか。興味ない。

 第一印象が最悪だ。

「いいえ。それでは、掛けて少々お待ち下さい」

 今度は僕が案内した。

 やはり人間に亜人を慣れさせるのは難しいか?

「えっと......メニューはこちらになります......」

 ティフがメニューを持って、聖騎士達のテーブルにいた。

「!?」

 おいおい、あんな事されてもまだ続けるの!?どんだけウチの看板娘は人がいいんだ!?確かに「お客さんに失礼なことされても、すぐムキになってはいけない」って教えたけど!

「ああ?獣人の分際で、聖騎士である私に気安く話し掛けるな!」

 思った通り、あのギルスとか言う奴が手を出してきた。

 ふうん?今度はご丁寧に魔力まで纏ってやがるよ。

 大人の男性ならともかく、子供にこれを使ったら、大怪我は免れない。下手したら、瀕死の重傷を負うかもしれない。

「それらを承知でこんな事を?」

 コイツの汚い手がティフに触れる前に、僕が掴んだ。

 僕もバカじゃない。最初にコイツがティフを突き飛ばした時から警戒していた。

 僕は一応、この世界では最強の存在だ。カウンターから数メートルしか離れていないこのテーブルまで移動するのに、一秒もかからない。

 脚力を一瞬だけ超強化すればいい。ごく短距離でしか使えないが、この店で使う分には充分過ぎる。

「おーい。ユウ坊、修行一段落したから、アイスコーヒーくれー」

 おお。ウィル君ナイスタイミング。

「あれ?これはどういう状況だ?」

 今ウィル君の目に写っている状況を分かりやすく説明すると、全身聖騎士の鎧に包まれた四人組がカフェのテーブルに座っていて、その内の一人がティフに伸ばした手を、僕が殺気を放ちながら掴んでいるという感じだ。

 ウチの子に二度も手を出したんだ。殺気位出してもいいだろう。

「なあ、ウィル君。戸締りって、大切だよね」

「あ、ああ......」

「そりゃあ、その建物の主が一歩出た瞬間からドアを閉める位徹底的にやらないと、心配だよねえ」

「そ、そうだね......」

 こうしてニコニコとウィル君と話している最中でも、僕は全く手を緩めない。

 むしろコイツの手を握り潰すつもりで力を加え続ける。

 甲冑の手甲の部分がグギギギと音を立てながら僕の手の形に潰れていく。

 異世界転生でお馴染みのやり過ぎチート補正で鋼の甲冑もアルミ缶どころか円柱状にしたワラ半紙でしかない。

「だからね、僕はこれから少し外に出るから、少し店を頼むよ?」

 ウィル君が返事をするよりも先に、僕はギルス聖騎士を開いたままのドアの外に投げ飛ばした。

 僕の意思を正確に汲み取ったらしく、ギルス聖騎士を投げ飛ばした後、僕が外に出ると、すぐにドアが勢いよく閉まった。

 なぜこんな事をするかって?


 親が暴力事件を子供に見せちゃいけないでしょう?


 ウチの窓はすりガラスになっていて、外の様子は中からはほとんど分からない。

 その後、外からおよそ十数分間に渡り、外から打撃音が聞こえてきて、店の中に残った聖騎士三人組の顔色が真っ青になった事をウィル君とガルロさんから聞いた。

 ちゃんと、二人とも気を利かせてくれたらしく、子供達は音の聞こえない奥の部屋にいれてくれたらしい。

 十数分後、僕は何事も無かったように、平然と店の中に入って来た。

 やはりニコニコしながら。

 僕は真っ先に聖騎士三人組の座るテーブルに向かった。

「おやおや、ずいぶんと汗かきなのですね。ウチは、店内をいつでも適温にしているつもりですが」

「い、いえお構い無く......」

 うんうん。ビビってる。ビビってる。

 そこへもう一揺さぶり。

「冗談はさておき、この件については明日、国王と直談判します。異論は認めません。もし断ろうものなら、殴り込みますのでそのつもりで」

 一瞬で表情を真顔に戻し、威圧を放ちながら、告げた。

「は、はい......」

 オーケー。脅迫終了。

「では、本日はこれでお引き取り下さい。お品物に関しては、明日私が自ら王城にお届けします」

 表情をいつもの空っぽなポーカーフェイス兼営業スマイルに戻す。

「ちなみに、お仲間は、路上でお休みになっておりますので、起こしてから帰って下さいね」

 そして聖騎士達は去って行った。

 店から一歩外へ出ると、悲鳴を上げた。

「連れて帰ってくれたかな。まあ、連れて帰っていないなら、ご近所さんに配るだけだけど」

「な、なあユウ坊、そのご近所さんって......」

 ウィル君がおずおずと聞いてきた。

「ほら、ご近所にたくさんいるじゃん。人肉が大好物な魔獣が」

 ウィル君が口を手で押さえた。最強の騎士の癖にこれくらいで?グロ耐性弱っ。

「聖騎士食わせたら、異常成長して、手に負えなくなるぞ......?」

 聖騎士の魔力はとてつもなく高い。だから魔力で成長する魔獣に食わせたら、とんでもなく強く、凶暴になる。

「成長したら、取れる魔石がその分だけ大きく、純度が高くなる。そしてそれを売れば金になる」

 魔獣の心臓とも言える魔石は、魔力が出る石で、魔獣から取れる。

 異常成長をきたした魔獣ともなると、その価値は物によっては、僕の屋敷程ではないにしろ、立派な家が建つ程だ。

 金は足りてるし、殺人が趣味のサイコパスにもなりたくないからやらないけど。

「......今日戻ったら、国王陛下に進言するよ。決して君を敵に回さないようにって......」

「そうしてくれ。さて。明日久しぶりにリーネに会うんだ。腕によりを掛けて準備しないとなあ」

「「ユウ坊、何て恐ろしい奴なんだ(じゃ)......」」

 後日、近所ではあのギルス聖騎士をボコボコにした店主がやっている店とウチのカフェは大繁盛した。

 アイツどんだけ嫌われてんだよ。今回は個人的にボコボコにしたけど、今度会ったら、みんなの分まで半殺しにしようかな?

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