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第二十七歩色々巻き込まれているため、将来について考えよう

「それで?僕とサラがほんの少し地下研究所に行っていた隙に、何があってこうなったのかな?」

 あのとんでもなく長い螺旋階段を登り終え、息を切らしながらようやく地上に出てきた僕とサラは、リーネ達と合流しようとしてその辺にいた騎士に聞いたら、国王からすぐに謁見の間に集まるように伝令が出たと言われて、今こうして先に到着していたリーネ達と合流して、状況を説明してもらった訳なんだが。

「状況は理解できたし、出来る限り何とかするけど、あんまり面倒事起こさないでくれよ?」

 全く、神様に言われた通り魔王を倒したから、孤児院を経営して、趣味でカフェのマスターでもやって、平民の女の子と結婚して、残りの人生を穏やかに過ごしたかったのに、何で引退した僕をこんな面倒な国際問題に巻き込むかな。

「別に良いじゃない。将来の妻からの頼みってことで」

 あのな、リーネ。どっからそんな知識仕入れたのか知らないけど、真顔で腕組みながらウィンクしても、ときめいたりしない。

 むしろイライラしてくる。

「誰が将来の妻だ。それ以上悪ふざけをするようであれば、僕の権力を以てこの国の皇子に嫁がせるよ?聞き分けのない奥さんは婚約だけでもお断りです」

「そう。なら、あなたと肉体関係を持ったと公言させてもらっても良いわよね?」

 いきなり何を言い出すんだこのお姫様は!

「悪ふざけにも程があるよ!」

 そんなことしてないし、するつもりも毛頭無い!

 第一、そんなことしたら、絶対に五体満足で明日の太陽が拝めなくなる!

「冗談よ。この子達のためにも、あなたにはいてもらわないと困るもの」

 最近のリーネは一段と感情豊かになってきている。それ自体は良いことなんだが、そうなるのは主に僕をいじる時だっていうのが少々キツイ。

 相変わらず表情筋は硬いが、少しずつ微妙な違いで表情が分かるようになってきた。

 リーネが先程のイタズラっぽい表情から慈愛に満ちた表情に変わり、ティフとセリスの頭を優しく撫でてやる。

 さすがに腕は三本もないので、どこか物欲しそうにしていたカトルの頭には僕の手を載せ、ゆっくり動かした。

 何というか、こうして見ると、だんだんリーネが一国のお姫様ではなく、どこにでもいる普通の女の子に見える。

 些細な幸せがある日常を過ごし、どこかで出会った男性と恋に落ち、子供を授かり、母として、妻として、幸せな家庭を築く。

 そんなありきたりなようで、得難い普通の女の子に。

 いかん、いかん!危うく本当にリーネと結婚したらなあ何て考えてしまうところだった。

 僕は真面目に告白したわけでもなくフラれたんだ。

 確かに諦めるには不充分な理由だが、同時に諦めない理由もない。

 ああ、これがウィル君だったら、全財産をみついで、拝み倒してでも結婚してもらうだろうけど、僕にそんな事する勇気は無いなあ。

 別に友人という関係に不満はない。

 変に関係がこじれて、面倒くさくなるよりはまし。

 今回の依頼だって、友人が困っているから引き受けただけで、それ以上は何もない。

 ああ、もう。変な妄想したら変なこと考えてしまった。忘れよ。

「ほう、貴様が噂に聞く勇者か」

 おやまあ。勇者くん、ご指名入りましたー。

 指名したのは、クズ中のクズ、エルヴィスさんでーす。

「フン。そんな冴えない面でこの場にいようとは、分相応という言葉が分からんのか?」

 わあ。初対面でその言い分、期待を裏切らない態度だあ。

「何のご用でしょーか」

 あんまり長く話したくないから、とっとと済ませちゃお。

「あの二匹の雌が欲しい。もらってやるから我にゆず・・・・・・」

「お断りしまーす」

 何でこういう奴ってこんなに頭悪いのかな?ルックスはいい、金はある、権力もあるおまけに王族で王位継承権が最も大きい。

 普通にさえしていれば、女の子何て三桁単位ですり寄って来るのにさ。

「ウチの子は王族とお近づきになるための道具じゃないんで」

 もうコイツには正式な尊敬語すら使うのが面倒になった。

「コイツ・・・・・・!」

 相当怒ってるねえ。まあ、生まれてこのかた、さっきリーネ達が与えたような屈辱を味わっていないから、仕方ないのか?

 どちらにせよ

「国王陛下がお見えになる!」

 大臣っぽい人が高らかに宣言する。

 残念。大体どんなタイミングで国王が来るのかあらかじめ予想を立てていたんだよねえ。こちとらアンタと違って頭が使えるんですよーだ。

 おっといけない。セリス達が侮辱されたのに僕も相当頭に来ているようだ。

 言動がついつい挑発的になってしまう。気を付けないとね。ああはなりたくないし。

「チッ」

 エルヴィスが腹立たしげに去っていく。

 おやおや、一国の皇子ともあろうお方が、そんなに下品でいいのお?

 まいいや。この国に未来があろうと無かろうと、存在さえしてくれれば困りはしない。

 にしてもうるさいっての。そんなに大声出さなくても分かってるての。

 全く。国王登場を宣言する人達って、一体どんな物食って、どんなボイストレーニングしてる訳?

 魔王討伐の道中に遭遇した音波攻撃をしてくるコウモリ怪人やライオン怪人でもこんな大声出してなかったぞ。

 側面の扉から、宝石や貴金属類の装飾がたくさん付いた豪奢なマントを着込み、数人の家来を引き連れて、国王は現れた。

「うわあ、カッコいいおっちゃんだなあ」

 登場したのは、ゴツい輪郭に生やした立派な蒼い髭を切り揃えた、エルヴィスと同じような蒼髪の全身がマントの上からでも分かるほどのゴツい筋肉に包まれた迫力のある中年男性。

 これが現ヴェルサ王国国王。ザルバロル・ラルス・ヴェルサその人である。

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