第二十歩街に着いたため、疲れを癒そう
この変者に案内頼んだら、腹壊すか更に言えば体組織にが突然変異しかねない。
変者の言い分としては「ゲテモノほど美味しいって言うじゃないですか」だそうだ。
なぜこの世界にもそのような言葉があるのかはさておき、とにかく寄り道させる勇気は無いので、まっすぐ宿に向かうように御者に伝えた。
粗削りな石造りの家と、一定ではなく様々な大きさの石をパズルのように組み合わせた地面が、僕に懐かしい印象を与える。
普段僕はネルーアの王都にある自分の孤児院で過ごしているため、豪華な家々に慣れてしまったのか、こう言うRPGの途中に通過する村みたいな所を通るのはえらく久しぶりだ。
ここも一応ヴェルサではあるが、まだまだ辺境の地。
ここから首都である王都まで行くのには、馬車で更に三日間を要する。
これだけあれば、ティフ達三人の作法の最終確認をする事は難しくない。
「それでは私はここで。明日お迎えに上がりますので」
そう言って御者は僕らを宿に残してどこかに去っていった。
聞く話によると、商業ギルドの御者&馬車の専用宿があるんだとか。後で行ってみるか。どうせあと三日間あるんだから御者と仲良くなっておくのに越したことはない。
僕らは御者と宿の入り口で別れると、早速宿に入った。
率直な僕の感想を述べるとすれば、そこは正しく外とは異空間だった。
外のRPGっぽい雰囲気とは裏腹に、中はネルーアの王城のような豪華な作りだったのだ。
地面には自分が映るほど光沢感のある大理石が敷き詰められ、壁は石灰質な材質で真っ白で清潔感がある。
光源を確保するため、そこら中に魔力ランプが掛けられており、蛍光灯とはまた違った形容しにくい光を灯している。
とはいえ、今さらここでビビるほど僕も弱いメンタルをしていない。
でなきゃ一国の王に直抗議しに行ったりしない。
まあそれは置いといて。僕らは早速受付をした。
「何か身分証明をする物はございますか?」
かなり身なりのいい、言うなればさっきの森でこのような女性が一人で歩いていたら、間違いなくあの盗賊達のようなやつに物理的かつ性的な意味で襲われる、そんないかにも金持ちそうな制服を着こなす美人受付嬢が受付カウンター越しに営業スマイルを僕らに浮かべた。
「これでいいかしら?」
リーネはネルーア王族の紋章が入ったメダルを取り出し、受付カウンターに置いた。
一瞬受付嬢の顔に驚きの色が浮かんだが、さすがはプロ。すぐに引っ込めて手続きを取る。
僕やサラも身分証明を要求されたため、僕は冒険者ギルドのゴールドカード、サラは宮廷魔術師証明書を見せた。
今度はさすがに引っ込み切れなかったのか、営業スマイルがひきつった。
ティフ達に関しては、僕が身分を保証するという事で手続きをした。
手続きを終えた僕らは、二つの部屋に別れる事にした。
つまりは女子部屋と男子部屋だ。
僕とカトルを除く女性陣は仲良くお風呂に入りに行った。僕とカトルに「絶対覗くなよ?」と釘を刺して。
はっきり言おう。
僕もまだまだ命が惜しい。
想像してみろ。軽く一国の兵力に匹敵する数のモンスターを召喚できる召喚士、その気になれば隕石すら簡単に落とす賢者がいるような所に入っていく何て本物の勇者にもできる訳がない。
カトルはじっとしているのが嫌らしく、受付嬢に聞いたこの宿の修練場に向かった。
こんな所まで師匠に似るか。僕も昔はこう言った時はよくウィル君の相手をさせられた。「今日こそは王城での恨み、晴らしてやる!」とかなんとか。もちろん全部返り討ちにして、罰として食材確保のパシリに使ってやった。
僕はこの世界に来てから二年経つし、この二年間の過ごし方はいままでの地球での過ごし方とは天と地ほど違っていたが、やはり僕は一人でいる静かな部屋が落ち着く。
オタクが身に染み付いたのかねえ。
ともあれ、僕は現在天蓋付きのキングサイズベッドがあるような部屋に一人きりだ。
ならば、やることは一つ。
店の新メニューを考えよう。
何?「オ」から始まる行為でもすると思った?残念ながら僕はどっかの異世界転生した時に女神を巻き添えにしたギャグメインのラノベ主人公じゃないんでね。
さて。新メニューにしても、何にしよう。
新しいブレンドコーヒーの開発には時間がかかる。
この世界の人はコーヒーを飲んだ事が無い場合が多い。ならば、素人が飲んでも違いが分かるほど明確な違いを出さなくてはならない。
スイーツを作る事にしよう。
フライパンはガルロさんに発注したから持っている。
最高の職人に作ってもらった土台に僕が錬金術でセラミックをコーティングした結構上等なのを使っている。
この世界では砂糖は希少だ。
砂糖の素となるサトウキビは暑い所でしか採れない。故に貿易が地球ほど進んでいないこの世界では希少価値が出る。
砂糖抜きでできる物か......
そうだ!砂糖の代わりにメープルシロップを使えばいい。
メープルシロップはメープルの樹液を煮詰めればできる。
ならば、パンケーキが作れる。
しかしメープルみたいな木何かこっちに存在するのかな?
まあそれはおいおい調べてみるとしよう。
次は何にしようかあ、とキングサイズのベッドに寝転がって考えていると、部屋のドアが開いた。
受付嬢が何か用かな?夕食にしては早いな。それとも何か別の用かな?カトルが修練場で他の人に怪我を負わせたりは......断言できない。
そして、僕の予想は大きく外れた。
ドアの後ろから現れたのは、受付嬢でも、夕食運んで来る係の者でもなく、バスタオルを体に巻いて、涙目になりながら風呂上がりで身体中が火照っているリーネの姿だった。




