第十八歩賢者が捕まったため、本気を出そう
おいおい、コイツら結構ヤバいんじゃないか?
普通の女性ならともかく、世界最高位の賢者を倒し、それを縛る何て僕でも出来ないかもしれないのに......
油断せず慎重に行こう。
少なくとも相手は賢者以上の実力者だと想定して、全力で行こう。
今回は念のため、普通のロングソードと聖剣を両方持って来た。
腰に下げているロングソードに手をの伸ばし、威圧を放つ。
聖剣を使わない理由としては、威力が強すぎる事である。前に召喚直後に使ってみたら、斬撃が飛び、王城の召喚の間の壁を破壊し、弾道上にあった山を真っ二つに割ったというとんでもない事があったからだ。
ちなみにその山は今や『勇者の谷』という名前で観光名所に使われて大儲けしているらしい。
あれ?何か様子がおかしい。
盗賊どもがガクガク震え上がっている。
しばらくすると、反応がなくなった。
試しにリーダー格の男の目の前まで歩み寄って見ても、反応がない。
頭をコツンと小突いたら、そのまま大の字に仰向けで倒れた。
コイツ立ったまま気絶してたのかよ!マジで芸人デビューした方が盗賊より儲かるんじゃないか!?
というかそれより、僕いつの間に覇○何か覚えたんだ!?
そう思っていると、賢者ーーサラは、どうやったのか縄を自力でほどいて、僕の前まで歩み寄って来て、言った。
「助けて頂き、ありがとうございます。この礼は是非とも体で......ゴフッ!」
身体強化魔術込みの強めのデコピンを発言が明らかにアウトな賢者様に叩き込む。
威力としては牛一頭でもこれ一発でノックアウトできる。魔王討伐の道中では、僕がこれで牛やら猪やらをノックアウトし、解体して皆に振る舞っていた。
ほぼ毎日が焼き肉パーティーで楽しかったなあ。ここだけの話、僕の料理スキルは主にここで磨かれたりする。
それを食らった我らが救世主の一人、賢者様、もとい変者様は吹き飛んで真後ろの木に激突し、地面にうつ伏せになりながら、器用に手足だけピクピクさせていた。
「相変わらずね。サラ」
未だに起き上がらないサラをリーネがその辺で拾ってきた木の枝でツンツンしている。
懐かしいのと同時に、救世主達がこんなで本当にこの世界は大丈夫なのだろうかと心配になる。
「何を言いますか。ユウ殿は異世界から来た存在。しかも神が直々に作り上げた肉体を持っている。賢者としては非常に興味深い。是非ともこの身で彼の子を身籠りたいと思うのは当然じゃないですか」
非常にもっともらしいセクハラと取れるのか取れないのかよく分からない発言をしながら、サラが土を払いながら立ち上がった。
さすがは賢者。身体防御魔法は常時展開しているから怪我はなし。
「サラ、これが出来たなら早くやれば良かったものを、余計な心配させないでよ。大体何で捕まっていたんだ?」
今さっき盗賊達を気絶させたのは僕の威圧でも、ましてや覇○でもない。
サラの状態異常魔術の一種で、一定範囲内の相手を気絶させる物だ。
「実はですね......」
サラが答え合わせする前に、僕は答えを知った。
「グゥ~」
サラのお腹が教えてくれた。
「腹が減って行き倒れになった所を見つけられて、捕まってしまいましたぁ~」
なるほど、だから魔術の発動も遅かったのか。
僕は指をパキパキ鳴らし、リーネはいくつもの剣型召喚精霊を背後に浮かべて、ジリジリとサラとの距離を詰める。
「余計な心配させないでよ......(怒)」
「いちいち紛らわしいのよ......(怒)」
それを見るサラの顔は真っ青になり、額からは冷や汗をダラダラとかいている。
「そ、そんな事より、そちらの連れは大丈夫なのでしょうか......?」
サラは震える指で馬車を指した。
そこには気絶して馬から落ちた御者と、気絶した馬とティフ達の姿があった。
「サラ、あなた、今のユウにとって最もやってはいけない事をしたわね」
「へ?」
僕はロングソードを鞘から抜き、剣先をサラの喉元に構えた。
「ゆ、ユウさん......回復魔術は掛けますから、剣に殲滅魔法を付呪するのは、やめてもらえないのでしょうか......?」
さ~て。ここから先はさっきとは違う意味で本気を出そうかなぁ。




