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第十五歩森を通過するため、皆で遠足に行こう

「どうしてこうなったのよ......」

 決して豪華ではないが、機能性に優れた馬車に揺られながら、リーネは外の景色を眺めている。

「いんちょー、お腹すいた」

「全くこの子は......少しはティフを見習いなさい」

 僕はそう言って、さっき摘んできた雑草の葉と花を器用に輪状に編んでいるティフに指を向けた。

「ティフちゃんは器用だもん」

 頬を膨らませ、セリスは抗議した。

 僕の教育がいけなかったのだろうか、ティフもセリスも背丈も仕草も小学生に思える。

 対して、僕よりウィル君の影響を強く受けているカトルは比較的ガッシリした体つきになっている。その代わり、師匠に似てアホに育ってきているから気が抜けられない。

「それ以上ワガママ言うと、セリスが寝ている時にグリーンスライムを連れてくるよ?」

 グリーンスライムとは、その名の通り緑色のスライムである。

 あいも変わらずスライムはほぼ最弱モンスターだ。

 しかしその中で、少々厄介なスライムも存在する。

 グリーンスライムがその一種だ。奴らは有機物繊維を餌としていて、繊維でできた本や服を溶かして食べる。

 人の毛も食べるらしく、グリーンスライムを使った脱毛方法もあるのだとか。

 面白そうだとは思うけど、僕は進んでやろうとは思わない。

 スライムが暴走して、足とかならともかく髪まで食べられたら、引きこもる。

 ハゲとか絶対に嫌だ。この世界にはカッコいい帽子とかないし。

 これらの事は孤児院の授業できちんと皆に教えた。

 だから嫌がるだろうとは思ったのだが......

「いやん、いんちょーってば、ただ脱がすだけでは飽きたらず、スライムを使ったヌルヌルまでご所望とは......ちょっと恥ずかしいですが、がんばります!」

 何を!?

 予想より大分上の回答が帰って来たよ!?どこからそんなうまいカウンターを学んで来るの!?

「ユウ......アンタ、幼女趣味だったの?」

 違う!誤解だ!っていうかこの子達は幼女ではなく養女だから。十四歳をまだ幼女呼ばわりはどうかと思うよ?

 見た目幼女体型だけど。

「そんな訳無いでしょう。セリス、誰がそんな事教えたの?」

「シーアお姉ちゃん!」

 あの女......!

 シーアというのは、ウチの近くの娼館で働く女性だ。年齢は二十代後半で、かなりの美人だが、仕事柄か言動がどうも......ちなみに自分の意志で娼婦をやる変人である。

 今度厳重警告しとこ。ウチの子にこれ以上変な事吹き込まれたらたまったもんじゃない。

 ただでさえウィル君が常連で困っているのに。

 シーアさんまで加わると、娼婦育成学校になりかねない。それだけはこの世界が滅んでも死守しなくては。

 なぜ僕らがリーネと一緒に馬車に乗っているのかというと、現在この森では魔獣が異常発生しているとの事。

 そしてリーネは国際的かつ政治的な問題で、無闇に手を出せない。

 ギルドに依頼するにしても、時間がかかって、ヴェルサに着くのが間に合わないかもしれない。

 傭兵を雇うにしても、信用できるか分かったもんじゃない。

 聖騎士団も、例の事件以降暫く活動が出来なくなった。

 そこで、僕の出番だ。

 僕はその気になれば一国くらい軽く滅ぼせる(実力は少なく見積もっても魔王以上)。

 だから誰も僕を縛れない。

 と言う訳で、ヴェルサまでリーネを護送している最中だ。

 セリス達がいるのは、僕が「セリス達も連れて行っていいなら引き受ける」という条件をリーネが飲んだからだ。

「何で王族直々の任務に子供を連れてくるのよ」

「理由は二つ。一つは魔獣が異常発生しているなら、子供達に実戦を経験してもらいたいから。もう一つは、冒険者達が持ってくる素材のありがたみを分かってもらいたいから」

 この世界では、大抵の人が何かしらのギルドに所属する。

 僕みたいな戦闘系は冒険者ギルド。ガルロさんなどの職人や商人は商工ギルドといった感じだ。

 カトルみたいに将来冒険者ギルドに入りそうな子は、今のうちに実戦経験を積んでおいて損はない。

 ティフみたいな賢く、商工ギルドに入りそうな子には、冒険者達がどのようにして獲物を狩り、素材として自分たちの元に届けて来るのかというありがたみを分かってもらう。

 いざとなれば、世界最強が二人もいるんだ。万一も億一も起こり得ない。

「相変わらず言ってる事はまともなのにやってる事は無茶苦茶ね」

 リーネがお高そうなクッションにもたれながら言う。

 あなたにだけは言われたくない。

「そもそも今回僕を連れて来るほどの事情って何な訳?いい加減教えてくれたっていいじゃないか」

 既に依頼は引き受けた。もう森の中だし、いくら僕でも街に迷惑にならない程度で子供達を全員連れ帰るのは難しい。

 森ごとクレーターに変えるのは簡単だから。

「それは......」

「院長、前方に敵発見!」

 カトルがリーネの声を遮るようなタイミングで、魔獣発見を知らせた。

 馬車はすぐに止まってくれた。この辺りを見ると、この馬車の御者はは結構なプロであることが分かる。大抵の御者は、魔獣が正面に現れよう物なら、即座にパニックに陥り、馬までパニックになって馬車が暴走し、横転。

 「乗客全員めでたく魔獣の餌~」何て事も少なくない。

 急いで馬車の座席から運転席まで向かうと、正面にホーンラビットが三体現れただけらしい。

「じゃあ、カトル、セリス、ティフ。試しにやってご覧」

「いいの?いくらホーンラビットだとはいえ、あの角は結構鋭いわよ?」

 そう。ホーンラビットとはその名の通り角を持ったウサギだ。

 但し地球と比べて違うのは、こいつら図体がやたらデカイ事にある。

 通常のウサギなら、両手の平に乗っかる程だが、ホーンラビットは小学校高学年の子供くらいデカイ。

 角も剣や槍程ではないが、刺されば血は出るし痛い。

 三人に指示を出し、横一列に並ばせる。

 何か昔やってたカードゲームみたいな絵面だな。

 カトルが一歩前に出た。

「じゃ、俺から」

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