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第十二歩ようやく準備が整ったため、新作スイーツの御披露目をしよう

「まあ、ウィル君の処刑......じゃなかった処罰はおいおいやるとして、今日はウチの新メニューにと考えている一品を持ってきた」

 僕は篭の六割程を占めている大きな包みを取り出した。

 リーネ、セリス、ティフ三人の目線が僕の手元の包みに釘付けになった。

 お姫様と孤児が同じものを一緒に凝視するって、何か面白い。

「それでは御披露目」

 僕が包みの布を取り、中から出てきたのは......

「何よこれ?」

「いんちょー、ただのコーヒーじゃないですか~」

「匂いもお店のコーヒーと全く同じです」

 包み布の中から出てきたのは、二つの小さなカップに入ったコーヒー。特に豆をブレンドしたりしてはいない。

 しかしティフはさすがはネコの獣人。匂いまで同じだってよく気づいたな。

 騙されとる騙されとる。

「これでもか?」

 僕は更に篭の中から皿を二枚取り出し、カップを皿に思い切り逆さに叩きつけた。

「ちょ、なにやってるのよ!」

「いんちょー、それではコーヒーが漏れてしまいます~!」

「何か拭く物を......!」

 この三人案外仲いいな。僕がこの一連の動作をしてから、リアクションが完全にシンクロしてるよ。

 そんな三人の反応とは裏腹に、僕はカップを逆さにした状態で持ち上げた。

 そして当然中身のコーヒーはこぼれ、辺りは一面に黒いシミが......付かなかった。

 こぼれるはずだったコーヒーは、今にもこぼれそうな感じで皿の上でプルプル踊っているのだ。

「コーヒーが、固まってる!?」

「いんちょーすごい!」

「不思議です!」

 そう。僕が今回試作品として作ってきたのは、

「コーヒーゼリーです」

 ゼリーとは、現代では液体をゼラチンで固めるだけでできる簡単な食べ物だが、ここではゼラチン自体入手不可能だ。

 そこで僕はこの数日ゼラチンの精製を試みていた。

 そもそもゼラチンとは、牛などの骨から抽出できるもので、ただ煮詰めるだけでは薄いし、かといって、水の量を減らせば、焦げかねない。

 素人にしては結構頑張りました。

「どうぞ、食べてみて」

 リーネにスプーンを差し出す。

「え、ええ......」

 今回は入手できた骨や失敗し過ぎたため、二つしか用意出来なかった。

 だから

「二人とも何してるの?ほら」

 目に見えてよだれを垂らしている二人の娘にもう一つの方を勧める。

「い、いいの?」

「でもこれって、貴重な物じゃ......」

 こんな時までそんな理由で遠慮するとは、全く僕の娘達はかわいいなあ。

「大丈夫だから。作り方を覚えたから、これからは簡単に作れるよ」

 そう言った瞬間にセリスの目がキラーンって光った気がする。

「でも、スプーンは一つしかないし~」

「ちょっとセリスちゃん......」

 まあ、確かにそうだね。地球の学校では、女子が別の女子に抱きついたり、明らかに男子がやればアウトなスキンシップをバンバン取っていたが、それはあくまで、現代日本のストレス大盛り、社畜育成爆盛りの学校で過ごしているからであって、僕はそんな教育をしてはいない。

 結婚詐欺者になっても困るけど、百合になってもらっても困る。

「じゃあ、はいあーん」

 言っておくが、これは別にイチャイチャではない。

 二人は僕にとっては娘も同然だから犯罪にはならない。

 十八の高校生が十四の中学生を娘扱いってのはおかしいけど。

 まあ、そんな事を言っても今さらだけどね。高二で世界を救い、一国の王にタメ口、聖騎士フルボッコ、姫様とお茶飲み友達。

 前の三つはよくあるかも知れないけど、姫様とお茶飲み友達って言うのは、結構レアだ。

 大抵は流されるままに結婚して終わりだからね。

 ゼリーを掬ってあーんをすると、セリスは嬉しそうに口を開けてスプーンにかぶりついた。

 この子にはもう少しマナーを叩き込む必要があるな。

「ん~美味しい」

 今度はティフにもあーんをしてやる。

 セリスとは裏腹にティフは思い切り頬を染めて、コーヒーゼリーみたいにプルプル震えている。

 手の先が震えるのは、一般的な現象であり、防ぐ事は不可能。

 僕が持っているスプーンでコーヒーゼリーは僕の手の震えでプルプルしている。

 黒く震えるコーヒーゼリーと白く震えるティフ。

 何だか絵になるな。

 セリスとは別の意味で微笑ましい。何故かリーネが凄い形相でこちらをにらんでいる。

 何で?二人は僕にとって娘だし、別に僕はリーネと恋人関係でもない。女心は男には理解できないというけど、それは女が恋愛脳である場合に限る。

 恋心など微塵もない僕とリーネの間には絶対に起きない状況なのに。

 うーん解せぬ。


「お食事のところ大変申し訳ありません!王女殿下に急ぎの伝令がございます!」


 部分鎧の動きやすそうな格好をした兵士が勢いよく部屋のドアを開け、入ってきた。

「本当に失礼ね。用件は?」

 姿勢を正したよ、本気で怒ってるよ!

「東の森に魔獣が異常発生しているとの連絡が入りました!」

「何ですって!?」

 東の森か......確か隣国と繋がっているボーダーラインがある森だったな。

 残念ながらあんまり僕には馴染みがないな。

 あそこの魔獣は強さもそこまで無いから訓練にならないし、食材にも防具の素材にも使えない。

 基本的に興味がない。

「東の森で魔獣が大量発生したからって、何か不都合があるの?」

「ええ。三日後、隣国との会談があるわ。こちらにとって食料事情に関わる重要な会談よ」

 なるほど。そりゃ大変だ。

「ユウ。ここからは一国の王女としての依頼よ」


「私と一週間、隣国ヴェルサに行ってくれないかしら」


 ......まじで?

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