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第十一歩ウチの子がせっかく王城まで来たため、王女様に会わせよう

「いんちょー、お姫様ってもしかして、いんちょーが勇者だった時に一緒に旅をした召喚士の......」

「ん?よく分かったな」

 僕はウチの子達には勇者時代の事をよく話したりする。

 おとぎ話の代わりにね。その中にはもちろんパーティーメンバーだったウィル君の事やリーネの事はよく出てきたりするが、リーネが召喚士だという事はともかく、この国の姫様である事は言った覚えがない。

「どうしよう、ティフちゃん......あの召喚士の人にこれから会うのよ......」

「大丈夫よ......セリスちゃん......大丈夫......大丈夫なはずだから......」

「ティフちゃん、アタシ、帰ったら、結婚するんだ」

 それ死亡フラグだぞ。

 どういう事だ?ティフはこの世の終わりみたいな顔になって、元から色素が薄くて白い顔から余計に血の気が引いて、更に白くなっているぞ。

 セリスに至ってはどうしてかベタな死亡フラグまで立ててきた。これも教えた覚えはないけど、このフラグは全世界共通なのかな?

 っていうか、何をそんなに怖がっているんだ?確かに一国の姫に会うとなると、緊張もすると思うけど、明らかにそれとは恐怖心の質が違うような気がする。


 なんやかんやあったけど、とりあえずリーネの部屋に二人を連れてきた。現在僕とリーネと一緒にテラスの円形テーブルを囲んでいる。

「ごめんリーネ、遅くなった」

「本当よ。楽しみにしてたコーヒーが冷めちゃったじゃない」

 口ではそう言っているけど、本心ではない事は仕草から分かる。

 昔からリーネは、育った環境からか、不機嫌な時程姿勢が正しく、動きの一つ一つが完璧になるのに対し、機嫌がいい時程足を組んだり、頬杖を突いたりと、姿勢が崩れる。

 今は足は組んでいないが、右腕で頬杖を突いている。

 どうやら不機嫌ではないらしい。

「それで、コーヒーはどうする?残念ながら今日はこれくらいしか持って来ていないから多少雑味が混ざるかも知れないけど、温めなおす?」

「あなた、その用意でよく王城に来れたわね。私の機嫌一つで不敬罪扱いにしてもいいのよ?」

 リーネはそう言っているけど、やはり頬杖を突いている。

「救世主を罪人扱いって、ここのお姫様は恐ろしいですね」

「でしょ?」

 リーネはイタズラっぽい笑みを浮かべた。

 きっと僕らと魔王討伐に行くまで、こうして笑い合える友達が居なかったのだろう。

 前にも言ったけど、姫に産まれた以上、幸せを求めてはいけない。それが世界のルールだ。

 この世界でも、地球でも。

「それで、なぜ私はあの子達に怖がられているのかしら?」

 さすがは最強召喚士兼一国の王女殿下。子供の感情くらいすぐに分かるようだ。

「さあ?本人達に直接聞くしかないだろうね」

「そうね。あなた達、何でそんなに怖がっているの?」

 リーネが外交交渉の時に成功率が高いからとよく使っている笑顔を浮かべて、セリス達に問いた。

 正直美少女でこの笑顔は反則だ。

 外交でもほとんどの相手が男だから、そりゃ成功率が高い訳だ。

 しかしセリス達には通用しない所か、爆弾を落とされた。

「す、すみません、八つ裂きだけはお許しください!」

「「へ?」」

 セリスの一言に僕とリーネの声が揃った。リーネの外交高成功率の笑顔が引きつった。

「悪いのは私達ですが、どうかご慈悲を!」

「「ん?」」

 ティフまでもが意味不明な事を言い出し、僕の思考は暫し停止した。

 思考が復帰すると、僕の喉元には蒼く輝く刃物が突きつけられていた。

 どうやらリーネの方が思考の復帰が早かったらしく、一瞬で剣の召喚精霊を召喚し、僕の喉元に剣を突き付けるように命令したらしい。

 剣の召喚精霊を召喚する事自体はそう難しい事じゃないが、通常の場合はニンジンくらいの固さの野菜をやっと切れる程度の威力しかない。

 だが、リーネの場合は違う。魔王討伐戦の時何か、要塞すら一太刀で切り裂くのを召喚した。

 さすがに今僕の喉元の物はあの時程強力ではないが、間違いなく頭と体はお別れする。

「ねえ、ユウ。一つ聞きたいのだけど」

「は、はい何なりと」

 ヤバイ!リーネが姿勢を正した!笑顔が外交用から威嚇用に変わっている!

「私の事、そんな風に子供達に教えていたんだぁ」

「い、いや決してそのような事は......」

 額から落ちる冷や汗が止まらない......こんな事は当時の修羅場以来だよ......。

「確か、あなたよく言っていたわね。『未来を作るのは子供達だ』と」

「え、ええ......」

「その『未来を作る子供達』になぁにを教えたのかなぁ?」

「僕は何も......というか、リーネが召喚士だという事は教えたけど、この国の王女だという事は教えていないぞ?」

「そんなのちょっと考えれば分かる事じゃない?」

「それで分かるのは『リーネという召喚士がいる』というだけで、どうやったら今目の前にいる人物が『勇者と旅をした王女召喚士リーネ』につながる?」

「なら一体誰が?」

 確かに。他にこの事を知っていて、なおかつウチに来るような人物......

 僕は剣を喉元に突きつけられてながらも、顎に右手を当て、左手は右腕の肘に当て、考えるポーズを取った。

「あ」

 一人いた。

「何か心当たりが?」

「ウチの常連客は、ガルロさんとウィル君と街中のおじさんやおばさん方だ」

 リーネここまで言えば、さすがに分かったらしい。

「あの阿呆騎士......」

「リーネ?そろそろコイツどけてくれない?そろそろ喉切られそうなんだけど......」

「あなたが紛らわしい事するから」

 そう言って、リーネが手を振ると、剣の召喚精霊は光の粒となって消えた。

 おいおい。今回に関しては僕は濡れ衣だぞ。

「彼にはどうやらきついお仕置きが必要みたいね」

 ああ......リーネが処刑人みたいな顔をしてる......

 リーネよ。確かにセリス達の君に対する認識は間違っていたが、今回の出来事でもう修正不可能になったんじゃないか?

 二人とも真っ白になってるじゃないか。

 何はともあれ、友(ウィル君)よ。冥福を祈る。


 世界最高位の騎士、ウィルクはこの国に所属しており、当然この国の王女様からは逃れられないのである。

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