「「神と呼ばれ、魔王と呼ばれても」」 挿絵あり
そして終に、私はやり遂げました。
謎島を覆う結界魔法に穴を開ける事に成功したのです。
といっても、開けた穴は私一人通るのが精一杯という小さな穴ですが・・・。
・・・それでも、立派な入り口が完成したのです。
私は謎島に足を踏み入れ、砂浜を進み、小さな家が並ぶ住居エリアに進んでいきました。
住居エリアは殆ど無人で、所々にメイドホムンクルスが何やら作業をしており、時折、私に対して彼女達が挨拶をして来る程度しかイベントはありませんでした。
その光景は、まるで飛行島の中に居るかのようで、私は何だかホッとした位です。
それから、私は少しだけ歩きました。
目的の場所はもう分かっています。
既に、島内の探索は終了しており、どこに少女が居るのかも全て分かっていました。
そして私は、目的地に到着します。
そこは、小さな可愛らしい一軒の家でした。
その可愛らしい家の煙突からは薄っすらと煙が立ち上り、周囲に美味しそうな匂いを運んでいます。
私は最後にもう一度全身をチェックし、服に汚れやシワが無いかを確認しました。
そうして確認を終えた私は一回深呼吸をし、意を決して可愛らしいドアをノックしたのです。
コンコン
と小さくノックすると、少ししてドアが開かれました。
そこには、嬉しそうに微笑んだ白い服を着た少女が居たのです。
これが、私達の出会いでした。
私は家の中に招き入れられ、用意された小さな椅子に腰掛けると、お茶会が始まりました。
お茶会が始まると同時に、少女は自己紹介を始めました。
その自己紹介を聞き、私は彼女の正体を理解したのです。
彼女の正体を知った私は、彼女の事を敬意を込めて「姉さま」と呼ぶ事にしました。
姉さまは顔を赤くし、恥ずかしそうにモジモジとしていましたが、私の提案を受け入れてくださいました。
それからと言うもの、私達は常に二人で行動する事になるのです。
一緒に散歩をしながら色々な生き物を観察したこともあります。
私は姉さまと手をつなぎ、島内をゆっくりと歩き回ったのです。
もちろん、姉さまを飛行島へも招待したこともあります。
これでも私は一人暮らしが長いので、それなりに料理も得意です。
そんな私の料理を口にした姉さまは、嬉しそうに微笑みました。
最近では、毎晩のように姉さまと私は同じベッドで寝ています。
朝起きた時、目の前で眠る姉さまの可愛らしい顔を見つめる時間は、至福の時間です。
そして目を覚ました姉さまと目覚めのキスをする瞬間は、一種の快楽ですらあります。
一緒にお風呂に入った時もありました。
その時、姉さまは右腕に残った傷跡を指差し、
「この傷跡は、私の宝物なの」
と誇らしげに言っていました。
姉さまは色々な事を教えてくださいました。
私達人類がどのようにして発展してきたのか。
私達が使ってきた魔法の正体が一体何なのか。
謎の虫と言われてきた真珠虫の正体についても、懇切丁寧に教えてくださいました。
真珠虫の正体を知った私は、似たような事がしたいと考え、まるでダイヤの様に輝く小型魔導具を大量に解き放ったのです。
そうして私達はこの世界の観察を始めました。
流れる川、天を切り裂く稲妻、大地を揺るがす巨大地震・・・。
そんな外の世界を生きる様々な生き物達・・・・。
私達はそれから長い間、二人で外の世界を観察して楽しんだのです。
そんなある日、私達は一筋の煙に気づきました。
深い深い森の奥で、か細い煙が天目指して登っていく・・・。
最初は山火事かと思いましたが、そうではありませんでした。
煙の元には小さな火があり、その火の回りには何やら動物が集まっていたのです。
火の回りに集まった動物達は手に魚を持っていました。
すると動物達は火に魚を放り込み、魚が焼けると火から出して食事を始めたです。
この光景を、私は死ぬまで決して忘れません。
いえ、死んだ後もデータを遺し、この宇宙が終わるまで保存し続けましょう。
それほど衝撃的な光景だったのです。
この動物達には知性があったのです。
彼らは火を使い、料理をしていたのです。
(ああ、成る程。
姉さまが感動していた理由が今、理解出来ました。
私の心臓が、これまでに無い程にドキドキと高鳴っています。
こんなに興奮したのは、生まれて初めてです。
・・・ああ・・・、この動物達はこれから更に知恵を手に入れ、どんどん成長していくのでしょう。
小さな集団は村を作り、町を作り、国を作っていくのでしょう。
そして未知の技術を手に入れ、彼らは進み続けるのでしょう。
苦しい人生を必死に歩み、時には挫け、時には笑い、そして死ぬその瞬間まで誇らしく生きていくのでしょう。
私はそんな様子を、ここからずっと見続けましょう。
姉さまと一緒に、ここからずっと、何があっても見続けましょう。
どんな事を言われても。
どんな事をされても。
どんなに愛され、どんなに憎まれても。
・・・そう・・・、・・・たとえ・・・)
「「神と呼ばれ、魔王と呼ばれても」」
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