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様々な動物から進化した人類が地球に産声を上げたのは、今から約1億年前の事です。


それから人類は様々な魔法技術的発展を遂げると、資源を求めて地球から飛び出し、遠い宇宙の果てまで活動範囲を広げました。

そして強大な戦力を誇る軍隊を使って他の星々と戦い、活動範囲を広げ続けたのです。


地球に侵略された星々は「惑星連合」を結成して地球と戦いましたが、圧倒的な戦力を誇る地球軍の前には無力でした。

星々は次々と地球に制圧されていき、惑星連合は追い詰められました。


それはまさしく「地球が宇宙の支配者として君臨していた時代」でしたが、それも長くは続きませんでした。

簡単に言うと、人類は疲れ果ててしまったのです。


広大な宇宙を支配するために管理される己の人生。

支配を維持するために、侵略を繰り返す日々。

更に新しい物質も、新しい技術も既に発見出来なくなっていました。


人類は、この世の全てを知り尽くしてしまったのです。


長距離転送魔法なんて赤ん坊でも理解出来ます

社会に属さず、たった一人でも十分に生きていけるだけの力も持っています。

太古の権力者が求めた不老不死も、望めば誰でも手に入れる事が出来ます。

エネルギー問題、環境問題、人種問題、宗教問題・・・、様々な問題も既に過去の事です。


全知全能となった人類にとって、宇宙は既に魅力を失っていました。


その結果、人類が生活するためには広大な空間も資源も最早必要無く、地球は支配していた星々を次々に放棄していきました。

巨大な宇宙艦隊も、栄華を極めた都市郡も、人類を管理する完璧なシステムも・・・。


人類は全てを捨て去り、宇宙を去りました。

そして人類は、まるで黄昏のように、広い宇宙から姿を消したのです。




それから暫くして、帰巣本能に従った人類がチラホラと地球に帰還しはじめました。

どうやら、その頃は人口も億単位で存在していたようですが、時代が進むにつれて人口は減り続けました。


そして、ある時点で人類は大陸を捨て、天空を進む巨大な飛行島を建設し、そこに移り住むことにしたのです。

人類の知恵の結晶である飛行島が完成した時、すでに総人口は1万にも満たなかったのですが、誰も問題視していませんでした。


(やっと長い人類の歴史を終えることが出来る)


そんな想いが、人々の間に流れていたのです。


ひょっとしたらどこかの星に地球人が居るかもしれませんが、最早誰も気にしていませんでした。


(地球に帰りたいなら帰ってくればいいし、そうでないなら勝手にすればいい)


と人々は考えていたのです。



巨大な飛行島では、ゆっくりとした終焉の時間が流れていました。

不老不死となった人々は、己の人生に飽きた瞬間に次々と死んでいったのです。


人類が作り出した様々な芸術も、料理も、魔法技術ですらも、人々をこの世に繋ぎ止める事は出来ませんでした。



そして最近、私は最後の地球人となりました。



私が最後に見送った人は、隣人でした。


会話どころか挨拶すらした事が無く、相手の顔も遺影で初めて見たという関係でした。

それはお互い家から一歩も出ることも無く、ただ時間が過ぎるのを待っていたからです。



ある日の事。

私はとても古い時代に作られた映像魔法を、ただ無感動にジッと見つめていました。


そんな時、飛行島から私にメッセージが届いたのです。

そのメッセージには、


<あなたが最後の人類です。この飛行島は全てあなたの物です>


という嬉しくも悲しくも無い文章が書かれていました。

そのメッセージを読み、私は隣人がこの世界に飽きて死を選んだ事を知ったのです。



隣人の葬式は簡素な物でした。

遺書も無く、本人の意志も無ければホムンクルス達が簡単な葬式を行うことになっています。


隣人の遺体はホムンクルス達が丁寧に火葬しました。

私も喪服に身を包んで隣人の葬式に参列し、最後の見送り人となったのです。


私が死んだ時、もはや私を見送る人は居ません。

私の遺体は隣人と同じくホムンクルス達に処理されるに違いありません。

ですが、私はその事に対して、特に思う事はありませんでした。


翌日も、私は家の中でゆっくりと本を読んだり音楽を聞いたりして時間が過ぎるのを待っていたのです。



そんなある日、私はふと散歩に出かけたくなりました。

そして飛行島外周部を散歩していると、遠くの海上に何かがある事に気が付きました。

それは、太古の昔から謎の存在として知られている巨大な島でした。


私はその時、ふと思ったのです。


(そういえば、あの島に住んでいる人は一体どんな人なのでしょうか?)


そう思った私は、飛行島を謎の島の直ぐ側に着水させました。

そして飛行島を守っている強力な結界魔法に人一人通れる程度の穴を開け、外に歩みだしたのです。



私はトコトコと海上を歩き、巨大な謎の島に辿り着きました。


そして私は謎島の結界魔法にソッと手を触れました。

予想通り、謎の島周辺には飛行島と同等の結界魔法が張り巡らされていたのです。


(ああ、こんなにも強力な結界魔法が張り巡らされていたのでは、ご先祖様達がいくら攻撃したとしても傷すら付かなかったに違いありません)


そんな事を考えながら、私は謎島の結界魔法を詳しく調べる事にしました。

両手で謎島の結界魔法に触れ、目を閉じ、全神経を集中して調べ始めたのです。


その結果、どうやら時間はかかりそうですが一人程度が通る穴を開ける事は可能であるという結論に至りました。


そんな時、ふと、私は視線を感じました。

何かと思い目を開けると、私の直ぐ目の前に白い服を着た少女が立っており、こちらをジーーと見つめていたのです。


いきなり現れた謎島の主に流石の私もびっくりしてしまい、一瞬フリーズしてしまいました。


(怒られるかな?)


と不安にもなりましたが、少女は怒るそぶりを見せる事はなく、むしろ私が何をしているのか理解すると嬉しそうに微笑み、ヒラヒラと手を振りながら去っていったのです。



それから数日間、私達は不思議な関係を築き上げていきました。


少女は毎日決まった時間に私の目の前に現れ、そして私の結界魔法解除作業をニコニコとした笑顔で眺めるのです。

そんな彼女に対して、私も微笑み返しました。


私達はニコニコと微笑み合い、互いを見つめていたのです。

その時、私は感じました。


(あああ・・・。この人とは、仲良しになれそうだ)


と。

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