愛の光り
「ああ・・・、何て綺麗な光なんだ・・・。
こんなに美しい光が・・・、この世に存在していたなんて・・・」
私はうっとりとした表情を浮かべながら、戦場で輝く青い光を感じている。
(今、あの戦場ではまさしく「愛」が光となってこの世に顕現している・・・。
彼の保有しているホムンクルス兵達は脆弱な装備を使い、継ぎ接ぎだらけの体を動かしながら必死に戦っている・・・。
必死に戦う彼女達には、たった一つの共通した目的しか存在しない。
その目的とは何か?
それは友軍の勝利の為か?
それは国家の勝利の為か?
いやいや、銃後に暮らす人々の平和な生活の為か?
違う、全く違う。
彼女達はそんな「下らない」目的の為に戦ってはいない。
では、彼女達が戦う理由とは何か?
それは単純だ。
単純にして純粋であり、ある意味で神秘的ですらもある。
そう・・・。
彼女達の目的は唯一つしかない・・・)
「それは、たった一人の少年を守るためだ!!
己を愛し! そして己が愛する少年が!!
1秒でも長生きしてくれるならと! 彼女達は嬉々として己の命を差し出している!
だからこそ! 圧倒的な大軍を前にしても彼女達は一歩も引かない!
後ずさりすらもしない!!
前へ!! 前へ!! 前へ!!
食い止めろ! 食い止めろ!!
これ以上先へ行かせるな!!
一人でもいい!!
腕一本でもいい!!
指一本でもいい!!
命を差し出して!!
敵の戦力を削れ! 削れ!! 削れ!!
それが!! そんな思考だけが!!
彼女達の簡易脳を支配している!!
杖を持ったホムンクルス兵が吹き飛ばされると!
杖を持たないホムンクルス兵が赤熱した杖を拾って戦闘を継続している!
腕を吹き飛ばされたホムンクルス兵が!! 体液を撒き散らしながら自爆攻撃をしている!!
穴に潜んでいたホムンクルス兵が! 穴から飛び出して敵の人間兵に抱きついている!!
ホムンクルス兵に抱きつかれた敵の人間兵は! 絶望の表情を浮かべている!
そんな敵兵の顔を! 満面の笑みで満足気に眺め!! 彼女達は青い光になっていく!!
戦闘は続く! まさに永遠とも思える戦闘は続いている!
時間が経てば経つ程!! 彼女達は強くなっていく!!
それは何故か!?
それは彼女達が知ったからだ!!
少年が走りながら涙を流している事を知ったからだ!!
青い光を見た少年が!! 瞳から大粒の涙を流した事を知ったからだ!!
それを見たホムンクルス兵達は一層奮起した!!
まさに彼女達は一騎当千だ!!
彼女達は心の底から理解したのだ!!
この少年は私達の為に泣いてくれるのだと!!
この少年は私達の為に悲しんでくれるのだと!!
それを知ったホムンクルス兵達は! 正しく鬼神の如く戦っている!!
既に賢者の国が想定したスペックを! 彼女達は遥かに超えている!!
本来なら機能を停止してもおかしくない負傷を負いながらも! 彼女達は決して止まらない!
戦闘により破損し! バチバチと火花を飛ばす魔石を剥き出しにしながらも!! 彼女達は戦い続けている!!
そうだ!! そうなのだ!!
これこそ! これこそが愛の力! 絆の力なのだ!
ああああ!!
やはり!! やはり!! 私は間違っていなかった!!
彼は必ずやり遂げる!!
旧人類が犯した間違いを!! 彼は回避するに違いない!!
彼には! そんな力がある!!
彼の小さな肩には! 新人類とホムンクルスの未来がかかっている!!
さあ! 走れ! 走るんだ!
たとえ肺が破れようとも!
たとえ足が折れ曲がろうとも!
走り続け! 逃げ続け! そしてこの地獄を生き抜くんだ!
生きて! 生きて生きて! 生き抜いて!
そして新人類を! ホムンクルスを! 君が! 導くんだ!」
私は満面の笑みで戦闘を感じている。
狂ったようにクルクルと踊り、そして発狂したかのような声で歌い続けている。
そんな興奮状態の私を、メイド服を着た女性は静かに見守り続けている。
まるで慈しむ様な目をしながら、私を静かに見守り続けるのだった。