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探し求めていた答え

朝食を食べ終え、少女と女性学者は魔物の背中に乗って探索を開始した。


少女の家にあった地図を頼りに、重要な研究をしていたであろう建物を探して女性学者が探索魔法を使う。


・・・そして時々、魔法で瓦礫を押しのけて、埋まっていた高級酒を回収するのだった。




そんな探索の最中、魔物の周りに猫達が集まってきた。

その猫達に、少女は手を振る。


<あの子達は、私の友達なんです>


少女はニコニコしながら猫達の紹介を始めた。


<あの白い子は臆病で、いつも後ろのほうに居るんです。

それで、黒い子はいつものんびりしていて・・・>


少女は延々と猫の紹介を続ける。

そんな少女の姿を見ながら、女性学者は考えていた。



(そういえば、故郷では動物は基本的に凶暴だったが、国を出てから暫くすると動物達も大人しくなっていたな。


ここでもそうだ。

どの猫も興奮状態ではないし、私に攻撃をしてきたりしない。

大半の猫はのんびりと日向ぼっこをしている。


故郷では、こんな光景は見た事が無かった。

成る程、これならばペットという概念が理解出来るかもしれない。

こんな生き物なら、家に一匹くらい欲しいな)



すると、少女は集まった猫達と嬉しそうに遊び始める。

そんな少女の姿を肴に、女性学者は手に入れたばかりの高級酒を呑むのだった。





探索は続いた。



太陽が上っている間は魔物の背中に乗ってめぼしい場所を探索し、太陽が傾き始めたら家に帰る。


家の周りには小さな畑が作られており、そこから作物を回収して夕飯を作り、少女と女性学者は夕飯を食べる。


そして二人で風呂に入り、二人で同じベッドで眠るのだった。



そんな生活が、既に数週間も続いている。


もう目ぼしい建物は全て探索が終わっていたが、未だに女性学者が求めている「答え」は見つかっていない。

しかし、別に時間制限があるわけでもないので、女性学者に焦りは無かった。



(・・・今日で全ての研究施設の探索は終わった。

確かに面白い研究をしていた所が多かったが、私の求める答えに繋がる研究をしている場所は見つからなかったな。


あと調べていない重要施設は城くらいだが・・・。

・・・まあ、有り得ないか・・・。


恐らく、この国は何か強大な攻撃魔法で周辺を焼き払ったのだろうが、基本的に強大な魔法というのは常に暴走する危険性がある。

最悪の場合には周辺を吹き飛ばしてしまう可能性すらあるのだ。

そんな魔法を、城でやりはすまい。


となると、疑わしいのはこの重要エリアしかない。

ここの建物は全て強靭な防御力があるし、周囲を囲む壁も堅固な作りとなっている。

もし暴走しても、被害は最小限に抑える事が出来るだろう。


ここ以外でやるなら国外で魔法を使う必要があるが、そんな事をしたら魔法を発動した連中も一緒に吹き飛んでしまうから有り得ないか。


・・・絶対、このエリアに答えはある。

何か見落としている箇所が必ずある筈だ。


明日からは、もう一度エリア全体の探索をしてみよう)


そんな事を浴槽に浸かりながら、女性学者は考えていた。

そんな彼女の隣にはホムンクルスの少女が座り、今日一日の楽しかった事を嬉々として彼女に話している。


(・・・いつも思うが、この子は本当に人間みたいだな。


首輪がなければ、


「私は人間です」


と言われたら信じてしまいそうだ。


今も肌を密着してきているが、その肌にも違和感が無い。

そして恐らく、精神的にも人間に近いのではないだろうか?


こうして私に取りとめもない事を話しているのも、一つの証拠に違いない。

一世紀もの間、誰とも会話をしなかったのだから、人肌が恋しいのだろう。


時折頭を撫でるとウサギの様にピョンピョンと飛び跳ねながら喜ぶし、まさしく精神は子供そのものだ)


試しに女性学者は、少女の頬を撫でてみた。

すると少女は驚いた顔をしたが、次第に彼女の手に甘えるように頬ずりをし始める。

そして女性学者が頬をなでるのをやめると、少女は悲しそうな、そして残念そうな顔をするのだ。


流石に女性学者としてもそんな顔をされては、チクチクと心が痛む。

結局、彼女は、


(・・・やれやれ・・・)


と心の中でため息をつきながら、少女を己の膝の上に座らせ、優しく抱きしめた。


抱きしめられた少女は驚いて目を見開いたが、次の瞬間には女性学者の豊かな胸の間に己の顔を埋め、嬉しそうに彼女を見上げる。

それからというもの、この姿勢が入浴の基本形となるのだった。



翌日。


重要エリアの再探索を開始する事になった一行は、初日と同じく魔物の背中に乗って移動をしていた。


女性学者は地図を片手に見ながら、何度も探索魔法を使い辺りを調べる。

しかし、いくら調べても答えに辿り着く研究施設は見つからなかった。


・・・時折、見落としていた高級酒を見つけては、嬉々として回収するのだが・・・。



再探索を初めて数日が経った。

今日も女性学者はウンウンと頭を抱えながら探索をしている。


そんな彼女の膝には、


<ここは私の特等席です!>


という顔の少女が座り、女性学者を見上げながらニコニコとしている。


一方で女性学者は少女を右手で抱きかかえ、左手に杖を持ち、地図を魔物の背中に固定した机に広げていた。

彼女の顔は、真剣そのものだった。


彼女の目の前には、元研究施設だった廃墟が広がっている。

最早このエリアに存在している廃墟は全て探索を終えているのだ。

だが、未だに答えに繋がる施設は見つかっていない。


(これは・・・一体どういう事だ?

何故、求める施設が見つからない?

もしかして、ここには無いのだろうか?


・・・しかし・・・、ここ以外にありそうな場所は無い・・・。


・・・あそこは物体を転送する魔法を研究していた施設だな。

ここは不老不死研究をしていた施設だ。

向こうにある小さい施設は千里眼魔法を研究していた施設で・・・。

ええと・・・確か・・・あそこにある施設は・・・)


等と頭の中で地図を作りながら彼女は進んでいく。


そして彼女は、小さな小屋に気がついた。


(ん? この小屋は一体なんだっけ?

物置かな?


しかし、地図には記載されていないな・・・。

一応、探索魔法で調べてみるか)


女性学者は左手に持った杖を振りながら、探索魔法の呪文を唱えた。

本来なら、これで内部構造等が分かる。


(所詮は小さな小屋だし、精々が草刈の道具でも入っているのだろう)


と彼女は考えていた。


しかし、探索魔法でその小屋を調べる事は出来なかったのだ。

頭に?マークを出しながら、女性学者は何度も小屋に探索魔法をかける。


段々と探索魔法のレベルと上げていくが、最高レベルの探索魔法を使っても小屋の内部を調べる事は出来なかったのだ。

女性学者は唾を飲み込み、魔物の背中から下り、小屋の扉に手をかけて扉を開こうとした。


だが、扉は開かない。

あらん限りの力を振り絞り、魔法で体を強化して全力で扉を開けようとしても、扉はびくともしないのだった。


そんな小屋を眺めながら、女性学者は歓喜した。


(ここだ!!

絶対にここだ!!


ここに求めていた答えがある!!

こんな小さな小屋にここまで防御魔法をかける必要性なんて無い!!


だが、この小屋には強力な防御魔法がかけられている!!

それは何故か!? 答えは簡単だ!!


地上にある、どの施設よりも重要な研究をこの先で行っていたに違いない!!


なるほど!

恐らく最重要レベルの研究は地上ではなく、地下で行っていたのか!!


糞! 糞! 糞!

私は今まで、求めていた答えの直ぐ上で生活していたという事か!!


そうと分かればやるべきことは決まっている!!

何としても! この扉を開けてやる!!

小屋を吹き飛ばしてでも! この先に進んでやる!!)


肩で息をしながら女性学者は天に向かって叫んだ。


「見ていろよ一世紀前の天才ども!! 


我が執念の恐ろしさ!!

思い知らせてやる!!」


そして狂ったように、大きな声で彼女は笑った。

そんな高笑いをする彼女を、心配そうに少女と魔物と猫達が見つめるのだった。


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