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魔法とは?

戦いが終わった翌日。

耳長族は今までの恨みを晴らすかの様に、ブタ族の集落に攻めこむ。


前回よりも土の手は巨大に、頑丈に成長していた。

木々は根っこを地面から引き抜いて歩き出し、まるで巨大な人の様にブタ族の人々を踏み潰した。

岩が集まって巨大な人型となり、洞窟に逃げ込んだブタ族を洞窟ごと踏み潰すのだ。


ブタ族の戦士達も必死に応戦するのだが、最早それは戦いでは無かった。

虐殺と言ってもいいそれは、耳長族の「復讐」であったのだ。


ブタ族の集落を潰したところで、耳長族が得るものは少ない。

もともと彼ら耳長族は、それほど広い土地を持たずとも生きていける種族だからだ。


更に言えば、ブタ族は体力はあるのだが、「何かを作る」というのが極めて不得手な種族だ。

だから男性も女性も基本的に腰ミノしか身に付けていないし、族長クラスでも精々毛皮を羽織っている程度だ。


それでも耳長族は森に点在するブタ族の集落を虱潰しに襲撃し、ブタ族を皆殺しにしていく。

その結果、たった一年で広い森の大半が耳長族の物となったのだ。

大きく数を減らしたブタ族は、森の端で耳長族の襲撃にビクビクと怯えながら暮らすようになった。


それから暫くの間、魔法は耳長族の専売特許として扱われた。

魔法を使えない人々は耳長族の力を恐れ、森へは立ち入る事をしたがらなかった。

そして人々は耳長族を「森の賢人」と呼ぶようになる。


元々、外部と交流の少ない耳長族だったが、外の世界で自分達が賢人と呼ばれていることは理解していた。

そうなると選民思想が生まれるのも仕方ないだろう。


耳長族は「自分達以外は劣った人種である」という考えを持つようになり、他の種族を見下すようになる。

他の種族としてもこれは面白い話ではなく、何とかして耳長族の持つ魔法を手に入れようと努力した。


耳長族の男に美しい女を与えて知識を盗もうとした。

耳長族の女に高価な宝石をプレゼントして魔法を教わろうとした。

中には森に忍び込み、こっそり偵察しようとする連中も現れる。


しかし、その全てが失敗したのだった。


耳長族は森の中に完全に引きこもり、外の世界に出てくることが無くなってしまう。

その為、外の世界で生活している人々は魔法を自力で開発するしかなかった。


その後、大勢の知識人と長い時間をかけ、終に新人類は耳長族が住まう森の外でも使える魔法を完成させる。

その新たに生み出された魔法は、いっきに世界に広まった。


当初は戦闘関連の魔法が開発がされたのだが、次第に日常生活に密着した魔法も開発される様になる。

かと言って、全ての人々が魔法を使えるわけではない。


ブタ族を含めた殆ど全ての新人類に耳長族と同じような魔力臓器が備わっている。

しかし、恐らく人種の違いが原因なのだろうが、耳長族に比べて臓器そのものが小さい者が多いのだ。

小さい魔力臓器から産み出される魔力は、量も濃度も魔法を発動する為の必要量を満たしていない。

そのため、「魔力臓器はあるのに魔法が使えない」という人々も大勢いる。


何の補助も無く、己の魔力臓器のみを使って魔法を使える人数は極端に少ない。

そんな「補助が無くては魔法を使えない人々」の為に、魔力の発動を補助する「魔法の杖」が販売され世界的なヒット商品となった。


この魔法の杖を使い、人々は日常生活で魔法を使いこなす事が出来る様になったのだ。

魔法の杖を使うことでカマドに火をつけるのも、水を操作して掃除をするのも、全て魔法が使われるようになった。

その結果、「魔法が無いと生活に支障が出る」というのがこの世界の常識となるのだった。


私はこの魔法の杖が気になり、どういった物なのかを詳しく調べてみた。

どうやら原理としては「充電池」と「火吹き竹」を合体させた物の様だ。


素の状態では魔法を発動出来ない小さな魔力臓器からも、少しだけではあるが常時魔力は放出されている。

一般人は肌身離さず魔法の杖を所持しておく事で、僅かに放出される魔力を魔法の杖に仕込んだ特殊な石に溜め込む事が出来る。

そうやって溜め込んだ魔力は、「火吹き竹」の様に「魔力の濃度」を高める事で魔法として使えるようになるのだった。


流石に攻撃魔法や回復魔法という高度な魔法を一般人が使いこなす事は出来なかったが、生活関連の魔法なら杖さえあれば誰でも使えるようになっている。

魔法の杖には事前に必要となるであろう生活関連の魔法陣が描かれており、一般人は魔法を使う時に呪文を口にしたり、魔法陣を描く必要は無いのだ。


しかし、杖を使っても魔法が使えない人々も居た。

生まれつき魔力臓器が無い人や、臓器が小さすぎて魔力を溜め込むのに時間がかかりすぎる人達だ。


そういった人達は既に魔力を充填してある魔石を買い、杖に装着する事で魔法を使うしかない。

その為、魔力臓器が大きい人は己の魔力を魔石に充填し、その魔石を販売するだけで生活出来るほどだった。


なるほど、これは中々に便利な品物の様だ。


私としても少しだけ興味が沸いたので、この「魔力臓器」と「魔法の杖」を旧人類の残した科学技術を用いて再現してみることにした。

その結果、多少歪にはなったが、なんとかレプリカを作り出すことには成功した。


培養液の中に入った「魔力臓器レプリカ」から実際に魔力を作り出し、作り出された魔力を「魔法の杖レプリカ」に溜め込み、「魔法陣レプリカ」に魔力を流す。

その結果、新人類が用いている魔法と殆ど同等の「現象」を発現することに成功した。


どうやら魔法陣を改良すれば、そこそこの能力を出せるようだ。

よし、とりあえず何が出来そうか実験を繰り返す事にしよう。

しかし、実験するには魔力が足りないな・・・。


私は魔法の研究をする為に魔力臓器レプリカを大量に作り出し、電池を直列接続するように臓器をつなぎ合わせる事にした。


新人類が持つ魔力臓器は一見して小さな心臓の様な形をしている。

別に血の循環をしているわけではないのだが、この臓器は鼓動しているのだ。

魔力臓器の大きさは「優秀な魔法使い」であっても精々親指の先程の大きさであり、魔法が使えない人の場合は大豆程の大きさしかない。


そんな大きさでは役に立たないので、サッカーボール程の大きさにまで巨大化する事にした。

そんな魔力臓器を一列に並べると、ドクンドクンと鼓動を続ける大量の臓器が並ぶことになる。


培養液に入った大量の魔力臓器レプリカが並ぶと、なんというか壮観だな。

なんだかマッドサイエンティストになった気分だ。

まあ、これだけ大量の魔力臓器レプリカがあれば、魔力に関しては問題無いだろう。


次に、魔法陣も集積回路の技術を応用して複雑に、そして高度に作り直す。


更に呪文も改良し、もはや普通の人間では絶対に発音出来ない音域を使う事で、それなりに高度な魔法を生み出せるようになった。


その結果どうなったかというと、私は火星に移動することに成功した。

科学技術で言うところの「ワープ」に近い魔法を生み出す事に成功したのだ。


まあ、魔法の多様性について多少は感動したが・・・、正直言って、この魔法技術は私の性に合わないな・・・。

それなりに便利なのは事実だが、魔法で出来る事は全て科学技術でも再現可能だ。

なんというか・・・、魔法は「フワフワした感じ」がする。

技術的に安定しておらず、どうしても不安定要素が大きい。


それならば、使い慣れた科学技術のほうが私としては扱いやすいと感じるのも仕方ないだろう。

「充分に発達した科学技術は魔法と見分けがつかない」とはよく言ったものだ。


私は半世紀ほど色々と新しい魔法を生み出したりして遊んではみたが、最終的に魔法に飽きてしまった。


私が見つけた様々な魔法のやり方が書かれた辞書のようなノートは既に放置されている。

大量に作り出した魔力臓器レプリカも、複雑な魔法陣が描かれた魔法の杖レプリカも、今では物置で埃をかぶっている。

時々、思い出したかのように引っ張り出して遊びはするが、長続きはしない。


やはり、私は科学技術の方が好きだな。

使い慣れているし、こちらの方が理解が早い。

こればかりは仕方ないだろう。

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