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男と王の激論

男の声に、観客は誰も反応出来なかった。

未だキングに向けられた殺気に恐怖し、彼らは口すらも動かせなかったのだ。


しかし男は続けた。


「今! 世界には女神様が魔物を作っていると言う妄言が蔓延っている!!

これは大いなる間違いだ! 女神様はそんな事はしていない!!

女神様は今でも! 人々の平和を願い! そして世界を守護しているのだ!!」


その時、男の言葉に反論する声がコロシアムに響き渡る。


「何を言うのか!! この悪魔信仰者が!!」


それは王様の声だった。

王の声に男は反応し、男は王が座る玉座を睨み付ける。


王は続けた。


「貴様ら悪魔信仰者が魔王を信仰し! この世界を破滅に導いたのだ!! 人として恥を知れ!」


王は椅子から立ち上がり、手すりに身を預けて男に対して反論する。

そんな王の言葉に、男は返した。


「何を言うか! 貴様ら王族こそ世界の敵! 真の魔王に操られし悪魔信仰者ではないか!!」


男の言葉を聞いた観客は戸惑い始める。

やっと金縛りから開放された観客は、小声でヒソヒソと相談し始めたのだ。


「おい、あいつ今なんて言った?」

「な、何か、真の魔王が何とかって言ってなかったか?」


男は続けた。


「この世界に蔓延る魔物を作り出しているのは女神様ではない! この世界を侵略しようと企む真の魔王がいるのだ!!

真の魔王はこう考えた! 世界を守護する女神が邪魔だと! そしてとある作戦を実行したのだ!


その作戦とは!! 女神様の力を弱らせ! 世界を牛耳るという物だ!! その為に!! 真の魔王は愚かなる王達を操り実行させたのだ!! 女神教の根絶を!!

信仰の力を女神様から奪い!! 女神様を弱らせ!! この世界に魔物を送り込み! そして世界を制圧しようとしているのだ!!」


男の言葉に王は反論する。


「ふざけるな!! 真の魔王だと!? 妄想も大概にしろ!!

そもそも!! 貴様らの女神が魔物を作らなければこんな事態にはならなかった!!


貴様らの女神とやらは人類を滅ぼそうとする敵であり!! そんな奴を信仰する貴様らも同じく人類の敵だ!!」


王の言葉に男は激怒する。


「もし!! 女神様が人類を滅ぼそうとしているならば!! 何故!! 連合艦隊は無傷で帰って来られたのだ!?

何故! 女神様は連合艦隊を攻撃しなかった!?


それだけではない!! 何故!! 引き返す連合艦隊に女神様は微笑み!! 手までお振りになった!? 何故だ!!


それは女神様が期待していたからだ!! 人類の勘違いもこれで終わると!!

一切反撃をせず!! 無傷で艦隊を帰す事で!! 女神様はご自身が人類に敵対していないと証明なさったのだ!!」


男は観衆に呼びかける。


「しかし!! 愚かにも真の魔王に操られし王達は!! 女神様への攻撃を続けた!! そのせいで女神様の力は更に弱まってしまったのだ!!


その結果!! 世界を守る女神様の力が弱まり!! 魔王は大量の魔物をこの世界に送り込むことに成功したのだ!!

その大量の魔物が!! かの大国を一晩で滅ぼしたのだ!!」


闘技場の中央で大声を出し続ける男に、王は顔を赤くして反論した。


「でたらめを言うな!! どこに証拠がある!!

皆も知っているであろう!! 今! 魔王島がどうなっているのかを!!


今!! 魔王島の周辺には巨大な魔物が大量におる!!

その魔物が!! 魔王島の主を守っておるのだ!!

我らが送り出した巫女様も!! その魔物に殺されたのだ!!


これでも貴様は女神が人類の味方だと言うのか!?」


王の言葉に男は呆れた。


「貴様は本気でそんな事を考えているのか!? あの魔物達が女神様を守っているなどという世迷言を本気で信じているのか!?


一体!! 何から守るというのだ!?

連合艦隊の攻撃すらも跳ね除けた女神様を!! 一体何から守ろうというのか!!?


あの魔物達は親衛隊等ではない!!

あの魔物達こそ!! 魔王が女神様を殺すべく送り出した魔物なのだ!!


その証拠に!! 神の島周辺から魔物達は移動しないではないか!!

神の島に執着し!! 魔物達は大海原に散らないではないか!!

それこそやつらが女神様を攻撃している証拠だ!!


もし!! 女神様が人類の敵ならば!!

何故! あれほどの戦力で人類を攻撃しないのか!?


それは女神様が人類の敵ではないからだ!!

女神様には魔物を操る術が無いからだ!!」


男の言葉に王はひるんだ。

しかし、ここで引き下がるわけにはいかない。


「そもそも!! 貴様が魔物に殺されないのは貴様が悪魔信仰者だからだろうが!

だから魔物は貴様を殺さないのだ!!」


王の反論に、男は己の足元を指差して言い放った。


「何を言うか!! 私の周りに広がる骸が貴様の目には入らないのか!?

もし! 私達が本当に魔王を信仰しているのならば!! 何故この者たちは魔物に殺されたのだ!!


魔物達が女神教の神官を嬉々として殺す理由!! それは女神信仰を弱体化させるためだ!!」


男の言葉に観客達はざわめき始める。


「そういえば・・・、そうだよな」

「もし奴らが魔王を信仰してるなら、魔物は連中を襲うはず無いよな?」


男の発言に、王はうろたえた。

しかし、国を守る者として、ここで引くわけにはいかない。


「では何故! 貴様は魔物に襲われないのか!!」


王の問いに、男は自信に満ち溢れた顔で答える。


「それは愚問!! まさしく愚問だ!!

皆の者!! 良く聞け!! 私が魔物どもに襲われない理由! それは!! 私に女神様の加護があるからだ!!


女神様は私にこう仰った! 女神信仰を広めよ! 人々を目覚めさせよと!!」


男の言葉に王は慌てた。


「で、でたらめを申すな!! おい!! この者を即刻処刑せよ!!」


慌てた王は男の処刑を部下達に命じた。

しかし、それは悪手だった。


「どこがでたらめだと言うのか!? 真実を語る声を消し去り! 真の魔王に忠誠を誓う愚か者めが!!」


男は観客に向き直る。


「王の態度を見たであろう!! どちらが正しいのか!! これならば赤子でもわかる!

もし! 本当に己が正しいと思うなら! 何故!! 私を即刻処刑しようとするのか!!

それは王が嘘をついているからだ! 己の間違いを認めず!! 真実を潰そうとしているからだ!!」


男は民衆に語りかける。


「未だ! 未だ! 女神様は人類を愛しておられる!!

私の存在そのものが! 女神様が未だ人類を愛しておられる証拠だ!! 人類を信じておられる証拠だ!!!!


まだ!! まだ間に合うのだ!! まだ女神様は朽ちておらぬ!! 今こそ悔い改め! 信仰を復活するのだ!!」


男の演説を聞き、観客はざわめき始める。


「なるほど・・・。どうやらあの男の話が真実の様だ!!」

「王は俺たちを騙していたのか!?」

「なんてやつだ!! 玉座から俺たちが苦しむ姿を見て楽しんでいたのか!!」

「王を殺せーー!!」


男は足元に突き刺さった剣を引き抜き、王に剣先を向けて言い放った。


「あそこに居る者こそ!! 人類の敵! 世界の敵だ!!

奴を打ち倒し!! 女神信仰を復活するのだ!!


迷える子羊よ!! 今こそ立ち上がれ!! 我等人類には女神様の守護がある!! 魔王の手下なぞ恐れるな!!」


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― 新着の感想 ―
[一言] 島にいる女は魔王ではない、人類の敵ではないというところまでは正しいけど、 真の魔王とやらは、魔法を使い続けて汚染を撒き散らす新人類のことなのだし、 島の女をどんなに持ち上げても、加護も助けも…
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