第9夜
しぶしぶ頷いたものの、鳥に乗っていけという王の言葉を見事に却下し、ここより西にある港町、ルルドへと移動するのだった
といっても、さすがに徒歩ではいつになるのか分からない
けれども、この国に馬はいない
かわりにいるのは、やはり鳥だ
「・・・」
ご対面したレイドはそれを見て、見事に絶句した
なんというか、無駄にデカイ気がする
一見、鶏に見えるが、大きさは馬並みである
「あれ、スエッグって初めて?」
「・・・・・・」
話には聞いていた
けど、これほどまでとは・・・
とあなりで、クラウドもぽかんとしている
「・・・実物は、はじめてだな」
とのご感想
扱い方は馬と一緒らしいが、その足の速さは馬の比ではなかった
なんというか、竜巻に巻き込まれた錯覚に陥る
・・・考えたら余計に気持ち悪くなってきたな
青い顔をしているレイドとは対照的にレウは楽しんでいた
その後ろにセリスが涼しい顔で続いている
「驚いたな・・・、ローラントの連中は化け物か?」
発言したのはレイドのすぐ後ろにいるクラウドであった
盗み見ると、そういうあんたもなと、レイドは突っ込んだ
そして、思考の淵に沈みこむ
今頃、村人達はどうしているのだろうとか、父は無事なのだろうかとか、何よりも心配なのは親友の事
最後に見たのは慌てふためいた顔
「・・・クラウド」
前を走る二人に聞こえないほど小さな声で呼ぶと、同じく小さな声で返事をされた
「なんだ?」
「・・・なんで、助けた」
「さて」
「さて、って・・・」
「・・・・見えてきたぞ」
そういって、彼は話を打ち切った
目的地であるカーナへ行くには、海を渡る必要が有る
そのため、港町であるここへとやってきた
それは、いいのだが
「だー。どこも、ださないってよ」
疲労困憊という、ウル
彼の言うように、どの船も出港をするつもりはなかった
帝国の兵がうようよしているといううわさがあるのだから仕方のないこと
誰だって、命は惜しいものなのだから
「・・・まいったなぁ、ファルコンは使えないし」
ドラゴンに乗っている帝国兵に見つかればもう、おしまい
なぜなら、飛行能力、殺傷能力、すべてにおいてドラゴンの右にでる生物はまずいない
散々唸っている矢先に、1人の男が現れた
「お前ら、船に乗りてぇんだろ?だったら、オレの船に乗せてやるよ」
「・・・お、マジ?」
ウルが、乗ったがどこか疑っているように見える
「まぁな、やることきちっとやってくれるなら、いいぜ」
「・・・・だとよ」
悪くない話だが、どうも都合がよすぎる
どこも出たくないというのに、なぜ彼は出るのだろう?
なざ、困っていた矢先にちょうどよいタイミングでくるのだろう
「・・・・帝国兵ではなさそうだ」
「なら、海賊か?」
ウルとクラウドが、小声でやり取りをしている
「かもしれん」
「おいおい・・・。俺ら三人はいいけど、あの坊ちゃんは・・・」
「それなりに、腕は立つ。自分の身ぐらいは守れるだろうさ」
「その自信はどこから・・・。ま、いいや」
ウルが、前に進み出た
「その条件、乗った」
にやりと、二人は笑った
視線が交差する際、わずかながらに火花が散ったように見えた
「交渉成立」