閑話:ある少女の話2
私の名前は東里桜
『恋色に咲く』のヒロイン。でもわたしは攻略対象者には興味がない。全く!
この世界が『恋色に咲く』の舞台だと分かった瞬間、わたしは狂喜乱舞した。
だって。
だってここは花奈様が生きている世界。
花奈様に会える!!!
花奈様に会いたい会いたいと思いながらも、わたしは一般市民。
花奈様とは釣り合わない。
だからわたしは、学園に入るまでの間に、花奈様の親友に相応しくなれるように努力した。
勉学に料理に運動。
近所の人からも評判を良くする。
何一つ欠点がないように。
なにか一つでも苦手なものなど、悪評など作ってはいけない。天使な花奈様の親友の座は、誰にも渡さない!
前世では、全くできなかった料理も努力でどんな無茶ぶりをされても、すべて美味しく作れるようになった。
目指せ!花奈様との薔薇色学園生活!!
そしてわくわくしながら入学したのに。
花奈様のが教室にいらっしゃらない。なぜだ!
花奈様!貴女の親友の里桜が来ましたよ!
どこですか!
探しても探しても見つからない。
そして聞いた噂。
花奈様が裏庭で倒れた?
そして男にお姫様抱っこされて保健室?
手首と足を骨折!?
あわわわわ。
花奈様のお見舞いに行きたい!手が動かせない花奈様にあーんしたい!
それよりも!
……お姫様抱っこ?
誰に?
あの花奈様の柔肌に男が触れた?
はん?
目が据わっていくのがわかる。
……とりあえず、花奈様のお荷物をお家に届けよう。
べ、べつに下心なんてないよ!?
「あ、」
「はい?」
声が聞こえた方へ向くと、おろおろと男が立っていた。
「その荷物、一樂さんの?」
?
ライバルか?
「えぇ。持っていこうと思いまして」
「じゃぁ、これも。一樂さんのだから」
そう言って、日傘を渡される。
……!?
花奈様の日傘!?
常日頃花奈様が使用されている日傘?!
え。え。え。
混乱しながら、花奈様のお家まで持っていきました。
日傘と荷物からは、とってもいい匂いがしました。幸せ。




