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閑話:ある???の話
あぁ、間違えた。
天使のように、いや、妖精か?と間違いそうな美しいお姫様。
話しかけたかった。
何回も何回も思っていた。
花奈様が今日、このパーティーに出席すると聞いて、心臓が飛び出そうになった。
あの!天使が。
パーティーに出席する。
外に出たがらないのか、それとも、両親の反対を受けていたのか、なかなかパーティーに出てこなかったあの天使が。
このパーティーには降臨するのだ。
その報せを聞いてから、天使の横、いや、横などと恐れ多い。後ろに侍るに相応しいように自らを磨き上げた。
見た目も。中身も。
なのに。
なのに!!
緊張のあまり、やってしまった。だめだ。もうだめだ。
花奈様の記憶には残らない。
テンプレ。
あれだけ花奈様の印象に残れるような挨拶を考えたのに。
目の前に、天使が立っている、とわかった瞬間、花奈様のあの美しい紅色の瞳に見つめられていると思ったら。
考えていたことが全て頭から吹き飛んだ。
もう、素晴らしかった。
きょとん、とした顔も!
照れている顔も!!
泣きそうになった顔も!!!
すべて!!
あの瞬間を切り取れるものがあれば……。
あぁ、間違った。




