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名前なんてそんな、嬉しいものですよ。
目を閉じて、先生からのキスの嵐を受け取る。
やっぱり、先生の声は安心するなぁ、
でも、うん。やっぱり。
「唯ちゃん、さぁ、パーティに行かないと」
あ、そうでした。
私はパーティに出席するために王城に来たんだった。
「お手をどうぞお姫様?」
スッと手が差し伸べられる。
優しい笑顔で。
「ありがとう?」
安心する手を握る。
ぎゅっと。
あ、
「そういえば、先生」
「なに?」
「私の名前、もう唯じゃないよ?」
嬉しいけど。
自分でも忘れかけていた名前。それを呼ばれると、嬉しくなる。
前世での先生との思い出も。
お母さんとお父さんに愛されていたという思い出も。
そして。
そして、死んじゃった、という記憶も。これはみんな全て私の妄想じゃないということがわかる。
うん、
やっぱり、唯って呼ばれるのは好きだけど、私は今この世では唯でない。
「ね?」
「、そうだね」
 




