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閑話:ある王太子の話4
やっと見つけた。嬉しい。
部屋を出る時、なにか誰かと話した気がするが、興奮でなにを話したかわからない。
自分の部屋に戻っても、興奮がおさまらない。
唯ちゃんがいた。一樂家の令嬢として。
元気そうだった。よかった。
俺はもう、なにも食べられなくなり、衰弱していく唯ちゃんを見たくない。
唯ちゃんとの再会を劇的にしようと思い、パーティーでエスコートしようと思いついた。そこで唯ちゃんに跪き、手の甲にキスして「久しぶり唯ちゃん」という事に決定した。
唯ちゃんは乙女だからそういう本を読んでは瞳をきらきらさせていたことを思い出した故の作戦。
うん。いいと思う。
しかし、誤算があった。
唯ちゃんは生まれてから死ぬまで病院から出たことがなかった。外が怖いとも言っていた。そんな唯ちゃんが積極的に外に出るだろうか。
否。
出るわけがない。
パーティーに出たって、唯ちゃんは来なかった。
あー、引きこもってるね唯ちゃん。
まぁいい。家から出ないのなら、唯ちゃんに変な虫がつかないから。
知らない内に唯ちゃんの隣に男が立っている、なんてことはあってはならない。もし、そうなれば、俺は今世のこの王太子という立場を全力で行使するだろう。
唯ちゃんは俺の。
俺だけの。




