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閑話:ある王太子の話5
花菜ちゃんが学園で切りかかられた、と報告があり、心配して病院に駆けつけたそこで見たものは、やっぱり、やっぱり、自分が受け付けたくない、現実だった。
目が覚めた花菜ちゃんは震えていた。いますぐ壊れてしまいそうで、たまらず手を伸ばした。「大丈夫」と言いたかった。
でも、振り払われた。
そして、あいつの名前を呼びながらぱたりと気を失った。
どうして、どうして!俺はこんなにも花菜ちゃんを愛しているのに、花菜ちゃんは答えてくれないのか。
抱きしめるのも俺から。
甘えるのも俺から。
もちろん、口付けをするのも俺から。
1度たりとも花菜ちゃんからされたことはない。なんだって俺のすることを受け止めるだけ。
わかっていた。俺が花菜ちゃんの心を満たせないことはわかっていた。花菜ちゃんの心は俺を拒絶しているのも。
たまに花菜ちゃんの顔が真っ白な時があった。あいつがいないから、花菜ちゃんの精神が安定していないんだろう。
悔しい、悔しい。
花菜ちゃんの心を独占するあいつが。
何度も拒絶されて俺はどうしようかと、考える。




