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5話
「唯ちゃん、はいあーん」
あぁもう何日経ったのだろう。
窓には分厚いカーテンがあり、外が見えない。今が夜なのか、朝なのかどうかもわからない。
「あーん」
手足につけられた枷はじゃらじゃらと音を鳴らすだけ。
ドアにすらたどり着けない長さ。窓にも手を伸ばせない。
行動範囲はこの大きいベットの上。
本を渡されているので、起きてから眠るまでずっと読書をしている。
あぁ先生……お母さんお父さん……会いたい……助けて……。
「あーん?」
口におかずが入ったスプーンが入れられる。最初は自分で食器を持ち、食べていたのだけれど、ナイフで腕を切ろうとしたのがバレて取り上げられ、この男の手から雛のように食べ物を与えられている。
いっそ死ねたらどれだけ楽なのだろう。
最初はこの男の慰み物になるんだと思ってた。だけどこの男はそんなことをしない。むしろ触ろうとすらしない。
ずっとこちらを見て、にまにまにやけ、恍惚とした表情をして満足して部屋を出ていく。
……なんなんだ。




