生前の私
お待たせしました!短編『平凡が目標です』の連載です!!
悲しかった。
真っ白い部屋の中。
私はたくさんの人に支えられて生きてきた。
私は、たくさんの人に迷惑をかけながら17年生きてきた。
私は、生まれた時からこの真っ白い部屋から出られない、いや、出たくない。
怖い
なにがあるのか全く想像できないから怖い
私の信じられる人は、先生と、お父さんとお母さんだけ。
よく窓の外の私の知らない世界で楽しげに笑っている人達を見かける。
なんでそんなに楽しそうなのかわからない。
心底わからなかった。
先生にそう言うと、先生は笑いながら
「じゃぁ、元気になったら外に行ってみよう?わかるかもしれない。わかったら先生に言って。約束だ」
そう言って、私と指切りした。
でも
でも、それは叶わなかった。
私はその指切りした日から一ヶ月後、死んじゃったから。
朧気な意識の中、泣き叫ぶお母さんの声と、静かに、だけど悲しみに塗れた声で私の名前を呼ぶお父さん。
必死で私の名前を呼ぶ先生。
そして
その全てを覆い隠すように鳴り響く、ピーという音。
その音で私は悟った。
あぁ、死ぬんだって。
薄く開けていた瞳が閉じていく。
ごめんなさい、お父さんお母さん。
こんな、先に死んじゃうような、親不孝者で。
こんな、助からないのに入院して、莫大なお金を使わせてしまって。
ごめんなさい、先生。
外で遊ぶ楽しみを見つけるって、約束したのに。
必ず治すって約束したのに。
治ったら、私と結婚してくれるって約束したのに。
私って、なんて、なんて迷惑なんだろう。
暗い底へ落ちていきながら、私はそう思った。
あーあ。
結婚、したかった、なぁ。
そこで私の思考は途切れた。