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45 本戦⑤

最後の投稿です。

この小説のリメイク作品を投稿していますので、宣伝として投稿させていただきました。


刃は確かに僕の体に到達していた。


しかし、それは僕のHPを削ることはなかった。



「【k-lock(クロック)】!お前のの加速を止める!!」

「時子ォ!テメェまだ死んでなかったのか!!」



時魔法妨害系統【k-lock】。相手の動作の一つを確定的に停止させることができる。効果時間は瞬き3回分。代償はMPとHPの三分の一。

動きを止めた対象は奴のナイフを持つ肘。k-lockの特性として、対象を空間ごと停止させるというものがあり、奴は一時的に動くことができなくなっていた。


時子さんは腹から漏れ出る鈍い赤色を隠すことなく全力で駆け寄って来た。


「時子さん?!」

「よく聞いて!」


時子さんは僕の動揺をかき消すかのように大声で声をかける。実際は意識が朦朧としていて自身の声量が判断付かなくなっていただけなのだが、そんなことを知らない僕はその剣幕に黙った。

時子さんは腰から下が砕けたかのように俺の元に崩れ落ちる。流血のバッドステータスがこのゲームに存在しているかは甚だ謎であるが、少なくても、尋常ではないことは窺い知れた。それだけに僕は彼女の言葉を注目していたのだが、その覚悟をもってしても彼女から次いで出た言葉は衝撃的であり、耳を疑うようなものだった。


「私を殺しなさい!ギアくん!!」

「な、何を言っているんですか!!ポーションだって、ハイポーションだってまだあるんですよ?!」

「いいから早く!いい?あいつは!目の前のこいつはニュービーよ!このままだと私達は全滅するわ!」


基本的に、プレイヤーが死んだ時、殺害者として認定されるのは最後に傷をつけた奴になる。つまり、ナイフを持ったウィンヤーニ民。


「なら!すぐにこいつを殺せば!」

「それは無理だ!」

「なんで?!」


腕が止まったというのにニヤニヤとこちらを見るウィンヤーニ民。


「なんでって……そりゃあ、俺の装備がスキル発動時に1分間無敵状態になるものだからだ。あと、時計屋は気付いているみたいだが、このナイフもリーダーに持たされた特別製でね。人体のある部分を刺すと確定キルの判定が出る|レジェンダリーウェポン《伝説級宝具》なんだわ」


その言葉に思わず時子さんを見る。


「……本当よ。こんなニュービーに待たせるなんて、盗られたらどうするんだと言いたいけれど、それでやられちゃってるんだから世話ないわ。……確定キルの判定まで残り1分もない。解除方法は所有者のキル。モンスター相手だと、そもそも器官の配置が不明だからあんまり使えないのだけれど、プレイヤーキルに利用できることを失念していたわ」

「……なら、奪えば」

「時間がない!早く私を殺しなさい!今私が死ねば貴方も死ぬ。さしたらこの村はどうするのよ!」

「お?シメイヨツノ民は相変わらずデータの集合体を現実と見なしているので?お気楽なことだな。……だが、リミットだ。死ね」



時子さんの顔に目に数字の浮かんだドクロマークが表示された。

30・29・28。と目減りする数字から何を表しているのかは確定的。

僕は震える右手を左手で抑えた。


何をするべきかなんて分かっていた。

ただ、諦めたくなかったのだ。

親切な彼女を。

優しい先輩を。


できれば、共に優勝したかった。



「ごめんなさい、時子さん」

「優勝しなさい。そして、守り通しなさい」

「───はい」



断罪の歯車(ギア・ギア)



手に呼び寄せたソレは、自分を責め立てるかのようにいつもより鈍く、重く感じた。


20・19。


何が断罪か。

切るべきものを切らず、守るべきものを切ることが断罪なのか。


「早く!」

「……う、ああ。あああ。ウアアアアアアアアアアアア!!!」



リング状の凶器から伝わる感触は、思ったよりも、重かった。





「……いーもん見れたし、出直してやるよ。お前のような甘ちゃんと今後出会えるとは思えねぇが、会えたらまた可愛がってやるよ」

「……」

「じゃあな、偽善者(ニュービー)


名も知らぬウィンヤーニ民は、音もなく立ち去っていった。

残ったのは、荒れに荒れた半壊した村の光景と、消えませずまじまじと見せつけるかのように残った時子さんの遺体。


けたましくなるレベルアップ音が犯した罪の象徴のようで、僕はそれがなり終わるまでただ、時子さんを見下ろして、佇んでいた。


「お兄ちゃん!大丈夫だったの?!」

「……奏」


村民の避難を手伝っていた奏でが戻って来た。


「……トッキー?え?嘘……」

「奏。行くぞ」


時子さんの遺体を担ぎ僕は奏に投げ捨てるように言葉を吐き、返事を待つことなく道を歩き始めた。

遺体。

ウィンヤーニ民からすれば、いや、シメイヨツノ民以外のプレイヤーからしたらそれはなんてことのない死体であり、残滓でしかないのだろう。

ただ、僕にはそれをただ血の噴き出す袋として見ることはできなかった。


なぜなら、彼女は、僕が殺したのだから。








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