39例えるなら明晰夢と金縛りの意識の違い
実は週末に投稿できるかどうかは最新話の前書きに書かせていただいています。
本当はツイッターとかフェイスブックとかインスタグラムとかおしゃれに報連相ができれば良いのですが、なかなか使いこなせなくて踏み切れません。多分これからもここに報告し続けると思います。
長文失礼しました。
なんともぐだぐだなルール説明は(ツボミさんの)泣き(いれ)あり(クサカさんの嘲)笑いありの全米が(シバリング的に)震撼した感動長編(笑)だったが、(懲役)15分という果てしない(体感)時間の末に今、終わろうとしていた。
自主規制したが、途中で目を覆いたくなるような醜い争いがあったため二人の方はぜぇぜぇと激しく上下して、顔もおおよそアイドルがして良い表情ではなく、互いを憎む心から歪んでいる。
「貴様には人間の心がないのか!!」
「お遊びのコンビ活動もここで終いだ!」
いつまでやってんだよ。というか、化けの皮剥がれたってレベルじゃねーぞ。
流石に台本を逸脱しすぎたと判断されたのか、ゲームマスターに仲裁されてアイドル2人は渋々構えていた各々の武器をしまった。スクリーンには写っておらず遠目に見えただけだったがクサカさんは横に切れ込みの入った直剣、ツボミさんはてっぺんに桜色の蕾があしらわれた杖だった。と思う。
仲裁と仕切り直しでワタワタとしていた空中も落ち着いて、ツボミさんとクサカさんは綺麗な笑顔を作り演説台の前に立ち直していた。
「「えー、皆さん仲良く楽しく本戦をお楽しみ下さい。それではイベント本戦の始まり始まり〜」」
え?それだ──ブチン!!!!
ー・ー・ー
そろそろ、出番かしら?
ー・ー・ー
ブチン!!と頭の何かが千切れる音がした。
どこかで聞き感じた事のある感覚・音だなと思い少し考えてみる。ああ、それは徹夜明けに時々聞こえる音だった。
相変わらず後を引く嫌な感じだと思わず顔をしかめ、その拍子に視界ががしかめたシワによって黒く塗りつぶされる。
「……は?」
その刹那の暗闇後の視界には、見たことのない青天井が広がっていた。
透き通るような青。目を負ければ負けるほど不思議に眩しさを感じる青だった。
やがてその青が不思議でもなんでもない事に気付く。自分が空を見ていることを自覚し、その次に自分が直立状態から仰向け状態にいつの間にか移行していることに考えが至った。急激な体制の変化の自覚についていけなくてあたまがくらっとする。堪らず握りこぶしを作ろうとする。
ざわり。
手から伝わる感触に驚き、おもわずあ寝転がっていた体勢から跳ね起きた。
「どこだ……ここ?なんだ、ここ?」
誰に聞かせるわけでもない声が見渡す限りの草原に溶けていく。
状況状況が受け入れる暇なく横から横へと流れていくような感覚に襲われ、僕はやっとここで現状の把握すらできていないことに気づいた。
気付きの連発は気づけとなる。……適当なことだ。
さて。僕が落ち着くまでの思考を少しトレースするとする。
文理の境目がなくなって久しい時代となったが、それでも選択科目によって文系理系と非公式に呼称されることがしばしばある。例えば、準国語として5カ国語以上履修したならば文系と呼ばれたり、未来学を修めたら理系、だとか。僕なんかは半分意地で文理どちらもとっているせいで、全ての知識が中途半端になっている気がしている系男子なのだが、まあ、そんな奴も特に珍しくはなく、逆にそれを逆手に取った進路なんかも有るのだから現代の学生、というのはそう意味では自由になったといえるだろう。とはいえ、それでも就職難というものがしばしば起こるのだから諸行無常なんてものが疑わしいものなのだが。
ところで、しばしば、と言えば日本人の大抵がこの言葉を知るのがoftenの意味を知った時であることは時代が変わろうが変わらずに言うまでもない。ノット無常なのである。紛れもなく、全く違った知識から思わぬ身近な事柄を知ることがあるのである。
身近。そう、身近。自分の身に近い事柄という意味の言葉である身近だ。
話を戻そう。落ち着いたから。
僕の今いる場所は、余りにも──身近だった。
この世界は明らかに現実世界という源実に、寄っていた。寄りすぎていたのだ。
先程驚いてしまった手に伝わったという触感に自慢の冷たさや石の粒感、草の感触、空気に触れる心地。そういった身に訴える感覚というものは今やゲームのリソースが足りる限り際限なくリアルと全く同じ再現が可能になり、実際にこのゲームでもデフォルメ性を一切取り払ったリアル性のゲームなだけあり、見事に再現されていた。
しかし、この場所はどうだろうか。上記に上げた事柄に加え、他の微細な部分も全てゲーム内と変わらない。だというのに、ここは明らかにゲームとは違っていた。同じなのに全然違ったのだ。
ここは、一線を画していた。或いは、乗り越えていたといっても良いだろう。
この場所、つまり僕が今立っているこの草原は僕に直感させたのだ。
ここが、不気味の谷の向こう、仮想現実などではない、仮想源実であるということを。
つまりそれは一体どういうことなのか、話はまだ続く。
そもそも不気味の谷というのは今は昔の心理分野における一つの課題で、人の手でもなんでも良いが、実際に存在する人間以外の人間は実際に存在する人間よりも不気味に感じるというものだ。
例えば、リアルすぎるCG、リアルすぎるフィギュアを僕たちが見たときに僕たちは親しみよりも嫌悪感にも似た不気味さを感じるという心理状態といったらいくらか伝わりやすいかな?
まぁ、そんな問題がVRMMOでもあったということだ。大半のゲーム会社がその問題に対してキャラクターに何箇所かリアルとは乖離したデフォルメ化を施すことで対処していたが、ここ50年で新しい解決法が安全性とともに提唱されていた。
それが、『脳麻薬』を利用した解決法だ。
つまり、不気味に感じる脳の働きをゲーム中は阻害してやるという、一見、こちらの方が不気味だろうという解決法だ。
勿論人体の重要器官である脳をいじるということもあり各団体からそれをVRMMOに利用することに猛反発が起きた。しかし、その方法は結果的に波及し、普及した。
なぜかという理由には生体ナノマシンとVRMMOという特異性が関係しているのだが、そこは本筋に関係ないので省くとする。
重要なことは、僕たちが普段行うゲームというのは、一種明晰夢の中にいるような気分にあるといっても良いということだ。
なんら変わらないはずの景色なのにどこか曖昧な気分に陥っている、そんな感じ。
言わずもがな、そんなこと余程意識的に考えなきゃ分からないくらいの気分の差だし、僕が『あぁ、ゲームなんだなぁ』なんて感じるのはせいぜい語尾に「〜なのじゃ」とつける少女を見かけたときくらいのものだった。
だからこそ、敢えて、言おう。
ここは、ゲームであると。
だが、同時にリアルでもあると。
頭の片隅は叫ぶ。
僕は何を頭のおかしなことを考えているのだろうか。
気でも狂ったかのようだ。まるでゲームの中なのにゲームであるということが自身の容姿の違いでしか判断できないなんて。シュミレーネッドリアリティなんてちゃちなもんじゃない、変な精神病にかかったかのようだ。
こんなにもはっきりと判断できるなんて、冷静に思考が及んでいるというのにそれ自体が考えをおかしくする。いっそ可笑しい。
ワックスを塗ったかのようなテカテカな感触のシロツメクサを握り潰して立ちあがる。黒板を引っ掻いた時のようなムズムズが手を襲う。
「感覚が鋭敏になった……?いや、違う。前からこのゲームはこのくらいの再現がなされていた。だとしたら、この感覚は……麻痺が取れている?いや、運営の匙加減一つだからできるにはできるだろうけれど、それをしたらこの世界にぬぐいようのない違和感を感じるはず……。なんだ、ここ?」
疑問を口に出してみる。当然解決などされはしない。とりあえずはイベントの一環だと飲むこむ他なさそうだ。いや、僕の感覚が狂ったと思うのが普通だな。
というか、他のみんなはどうなったんだ?
周りを見渡す限り誰もいないようだが……。
「いや、私がいるし」
「後ろは見てなかったのでセーフです」
「見渡す限りって言ってたりセーフってなんだよってツッコミたい場所は多々あるけどまあ……無事に起きたようでなによりだよ、ギアくん。そのグローブ似合ってるよ」
「心配ありがとうございます。おかげさまで手は傷一つありません、時子さん」
無意識に出していた声にダメ出しを出した女性は、コノカでもなくシルルでもない。
パーティメンバーその一であり、また体を蘇らせてくれた工芸家志望の女性プレイヤーでもある然乍時子さんだった。
ー・ー・ー
「ここにはギアくんと私しかいないようね」
「ですね。……しかし運営はバラバラ何するのが余程好きと見えますね。初日といい、今日といい」
「うーん、初日の方は急造のようだったし本来はここでランダム転移を行う予定だったとか?」
「初日の方はここのテストということですか?」
「さあ?分からないわ」
それより、と時子さんは突如僕の顔に手を当てた。パカリと僕の仮面を外す。
「ギアくん、ちょっと老けた?」
「はい?」
「なぁんか、大人っぽくなった気がするのよねぇ……」
「自分ではわかりませんけど……そういう時子さんは少し若返りましたね」
「んー?ん、ん?どーいう意味かしら?」
「あ、いや少しあどけなさが混じったと言いますか……」
黙り込む時子さん。
「ま、いっか」
黙っていたのは1秒にも満たなかった。
「さて、早くみんなと合流しないとね。ギアくんも素顔晒しているとシルルちゃんたちに怒られるわよ」
「仮面返せ」
「どうぞ。……さて、あなたも一緒に来るのかしら?」
「行くに決まってるでしょ?」
「ギアくんじゃないわよ。あなたに言っているのよ、草むらに潜むあなたよ」
「やや、気づいてましたか。……おっすおっす、《時の魔女》にお兄ちゃん」
草同士が擦れる音を立てながら出てきたのは突然の登場で場面を引き締めることに定評のある自称ぼくの妹、奏だった。
なんとなく彼女の突然の登場に慣れてきて寧ろ当然の登場のように感じた僕はどこか遠くで、仮面の意味ねえじゃねえかと割と余裕のある思考をするのだった。
『いやぁ、行っちゃいましたねー』
『ここからは観戦しているみんなと一緒に解説していくよ。荒れない限り画面下に掲示板を載せとくからそっちもよろしくね……って既に変態紳士に侵食されている!?』
『子供フィルターに全部ぶっ込んであるから大丈夫。言ってることもただの変態発言だし』
『なんか麻痺してない?』
『ちょっとした身から出た錆的なお仕事でね……』
『あっ……』
『ほら、プレイヤーたちがみんな起きたようだよ』
『解説実況ってどこの合戦をするの?』
『いちばん見応えのあるところね。ゲストも時々呼ぶから暇人は見てねー』
『彼女とか……いないんですか?』
『マイナス100』
『……その数字何?クサカちゃん』
『減ったツボミちゃんのファンの数。残り1人だから』
『……その1人って誰?』
『……言わせんな、ばか』
『クサカちゃん……!』
『肉屋のおばさんよ』
『いつもお世話になっております』




