4我が名はクソザコナメクジ(嘘)
「それにしても君も例に漏れずスタートダッシュから不幸な目にあってるね」
「君も、ということはあなたも?」
「うん、まあね。というか自己紹介してなかったね。ボクの名前はリメタナ・ジャバウォック。と種族は半幻土幽で職業は考古学者をやってる」
「ハーフって人とノームの?」
妖精とそういう事ってできる設定なのか?いや、もっとふんわりした感じなのかもしれない。フレンチキスで子供ができるとかコウノトリがいつの間にか運んできてくれているとか。
「それが違うんだなあ。ボクの残念ポイントはここでさ。ボクは土妖精のノームと水妖精のウンディーネのハーフなんだ。おかげで水魔法も土魔法も適性は中途半端。HPは低いし、魔術もその2属性以外は覚えられないんだよね」
「キャラメイクし直さないんですか?」
僕は1000円で課金すると課金アバターに変更できる知っていたため、ヘルメットの君改めジャバウォックさんにそう尋ねた。
ジャバウォックさんは薪を火の中追加しながら笑った。
「うーん、これでも受付嬢との面接の結果だからね。こんなキャラでも何かあると思うんだよ。それに初期ステータスだけはやたら高くてね。勿体無いし」
「なるほど、僕が猿なのも受け入れるべきなんですね」
僕が自嘲気味にそういうと、ジャバウォックさんは柔和な笑みを崩して眉を少し潜めて意外なことを言った。
「……えっと、さっきから自分を猿に見立てるのはなんなの?」
「……え?僕って猿じゃない?」
「ボクにはやたら苔と錆がついた人型の何かに見えるよ。鑑定は何故かブロックされてステータスの確認はしてないけど。……その調子じゃ自分の名前も知らないでしょ?ちょっとステータスを見て、ボクにも教えてよ。これでも考古学者だから自分が掘り当てたものの正体を知りたいんだよね」
苔?ということは、あの時頬に触れたのは体毛じゃなくて苔だったのか。
まじかー。自分猿じゃないのかー。
ばりテンションあがる。
「スっテー、タス!」
上、横、横のアクセントの掛け声で、僕はステータスを開いた。
ー・ー・ー
名前:ギアリア・トゥカタリオ
製作者:マキナ・アルカイド
種族:古代人形(プロトタイプ)
状態:(故障)(錆付き)(苔付き)(基礎体)
職業
ハウスキーパー
STR 5
DEX 4(-3)
CON 10(-9)
INT 1
POW ー
APP 17(-16)
LUK 18
スキル
ー種族スキルー
《自己回復・微》《空腹無効》《展開:断罪の歯車》
ー職業スキルー
《挨拶》《家事》《気遣い》
一般スキルー
《魔力操作LV2》《工学LV1》《リングLV1》
ー・ー
……。ざっこーー!
え、POW値なんでないん?というかLUKの値が僕のイメージと違う。
「どうだった?ボクとしてはアンティークドール的な名前だと予想しているんだけど」
ワクワクした様子でこちらを見るジャバウォックさん。僕はそのキラキラした表情から目を逸らす。すみません、名前負けの飛んだハズレくじでした……。
(というか、自分のこと残念とか言ってるけどこの人普通にイケメンなんだよなあ。妖精と妖精のハーフだからか知らんけど周りがキラキラ輝いてるし)
金髪でふわふわとしたセミロングの髪型。170はやりそうな細身の体。そして溢れ出る優しいオーラ。
あれ?もうこいつが主人公でいいんじゃねえの?
「あー、はい。まあそんな感じの種族でしたね。古代人形と書いてマキナギアと読むそうです」
「へぇー、やっぱりね、レアキャラだと思ったんだよね!おめでとさん!」
おう、ステータスの6分の4が1のクソザコナメクジだけどな。ヴォー。
これで容姿まで巨神兵みたいなハズレくじでだったら(一部にとったは当たりくじかもしれないが)僕は泣いて、哀しみの人形として掲示板デビューしていたところだった。苔とか錆とか言ってたから期待の容姿もきっとロクでもないんだろうけけどね。
つーか職業ハウスキーパーってなんだよ。これ絶対あれだろ。プロトタイプな人形の使い道に困ったマキナさんが家でこき使ってたとかだろ。
不憫すぎる。
「あ、スキルとかステータスは個人情報だから言う必要はないけど、名前くらいは教えてよ。これも何かの縁だし。フレンドコードを交換しようよ」
「あ、オッケーです。名前はギアリア・トゥカタリオスです。日本名とかって少ないのかな?」
そしてフレコといえば、運営に要望を送り一刻も早くマスターさんと連絡を取らなければ。こんな面白い状況、1人で独占するのは勿体無い。2人で笑い合いたい。
「日本名か……。ゲーム制作に関わってる国の数から推測して4分の1の確率じゃないかと噂はされてるね。名前は一人一人個性があって面白いよー。個性といえばギアリアさん……ギーくんの容姿もだけどね」
ギーくんって……。
なかなかええやん。
「え、やっぱり巨神兵的な感じですか?」
「なんで巨神兵?口で言うのは難しいから自分で見てみて。……あっ!そんな絶望的な顔しないで!全然変じゃないよ!寧ろ恵まれすぎな感じだから!!」
……ほんまかいそれ。信じますよ、ジャバウォックさん。いや、ジャー坊。
顔こそ見えないが、焚き火によって照らされた僕の初期装備はボロボロの燕尾服でした。初めて見た時は燕尾服を着たゴリラを想像して、泣きたくなるのを通り越していっそ笑えてきたのは内緒だ。手は手袋、足は靴に覆われていたから、『顔見えなくても体みれば猿じゃないことくらい気づくだろ!』という突っ込みはなしだぞ。
僕も散々なゲームスタートで動揺してたのです。
「ジャー坊。そろそろ自己紹介も終わったしそろそろ僕の置かれている状況を教えて」
「しょうがないなあ。有益な情報をただだ教えてくれるなんて全く君はいい人と出会ったね」
全くである。これでジャー坊がPKたったら目も当てられなかった。ただ、まあ、それを本人に言われるとなんとも言えない気持ちになるよね。
僕はぐっとその気持ちを底深くにしまいこみ、ジャー坊のありがたいお言葉を享受するのだった。
ー・ー・ー
話を聞くところによると、こういうことらしい。
このゲームには大きく分けて四つの国がある。
【聖骸都市アテネ】
【ウィンヤーニ】
【自由国家連合】
【雅燗櫻町シメイヨツノ】
そして僕がいるのは、シメイヨツノとウィンヤーニの間の国境に位置する鉱山の洞窟内だったという。そしてこの洞窟は国境に位置することもあり古代より度々領地権をめぐる戦争の戦火を浴びてきたらしい。
それ故に古代アイテムと呼ばれるレアアイテムのドロップが多くあり、多くのプレイヤー達はそれを求めてここに訪れるとのことだ。
今は第二陣のお出迎えのために4都市に多くプレイヤーがいて、ここにはそれほど多くプレイヤーはいないから、ジャー坊はその隙をついてここに来たずる賢さを持つプレイヤーの1人だったらしい。自分でずる賢いという人を初めて見たが、それはどうでもいい。
レアアイテムが多く出る代わりにレベルの高いモンスターも多く出るこの洞窟にソロでくる、ということはやはりジャー坊は高レベルの優遇キャラじゃないかこの嘘つきさんめ、と思ったが彼は下山を手伝ってくれると言って下さったのでそんなことは思ったことはなかったことにした。
ジャー坊は優しさと強さを兼ね合わせたイケメンプレイヤー様なのです。
そうは言ってくださったものの錆びれた人形ごときが一緒に居るのも迷惑なのではないか、と一瞬日本人独特の面倒臭い水臭さを抱かないでもなかったが、そこは地方人の『他人への異常なまでのなつき方』を発揮していつの間にか特に気にすることはなくなった。
それにしても汚い見なりながらも焚き火に当たっていると心まであったまってくる感じがするな。
まあ、いろんなことがあったけれどいい出会い(ただし男だ)もあったし、なんだかこれから楽しくなりそうだな。
スライム叩いて0ダメージで笑うとか、錆の苔を落としてステータスを回復をするとか、色々やりたいことは山積みだ。
んじゃまあこの世界、存分に楽しませていただきますよ。
あ、さっきやったこのゲームに生涯捧げるとか超エリート大学とかの下りは、無効ということでお願いします。
……う、運営大好き!!
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