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22一日目終了

時事ネタを取り入れてイクゥ!

すみません。なんでもないです。

 



「はは!ははは!はははは!ははははは!我が!我こそがかの大悪党!天を割り、地を割き、海を別つ!!三行全てを朝飯前に行い、世界の創造をお昼時に行う!!我こそが全能の頂!水妖精ウンディーヌである!!!」


「ギアリー、うるさいです。あとお昼時だとセリフに締まりがないです」

「すみません」



 沈黙に耐え切れなかった。


 ライズが防音を外し、妖精が喋ったら聞こえるようになったというのに、水妖精は一向にしゃべる気配がなかった。しかも、喋ってくれない水妖精に代わって僕がアフレコをしてあげたら、逆に怒られてしまう始末。^_^ったく持って解せる。


 コノカに叱られてしょんぼりとしていると、まず妖精が僕を見た。

 あまりの迫真の演技に僕のことを大妖精かなにかと勘違いしたのかもしれない。


「死ね、人形」


 あ、やっと口きいてくれたんですね。

 でも、第一声がそれでいいんすか?妖精。



 てなわけで、始まりの終わりの始まりです。







 ー・ー・ー






「このかさぁん!!妖精さんがいじめてくる!」

「そうですか」


 ゴミを見る目とはこのことか。いや、ゴミを通り越してむしろ可哀想な何かを見る目でコノカに見られてしまった。

 はっと、周りを見てみると誰もが同じ視線を向けている。


「見るな!そんな目で僕を見るなああああ!!」


「で、やっと話してくれたわけだけど」



 無視された。

 当たり前の話だが。

 コノカは溜息をつくと僕をじとっと見つめる。


「ギアリーはもっと落ち着いたらどうです?黙っていろとまでは言いませんが、現実で過ごしているときのテンション位まで下げてください……あっ。……まさか現実でもそのテンションでいるわけじゃないですよね?」

「現実?……ハハ、ワロス」






 気を取り直して。





 ジャー坊が瓶の中に鎮座するフィギュア、もとい妖精との会話を試みる。




「君はシルルちゃんのアナザーワンだよね?」

「……」

「アナザーワンの名前から考えると、君の名前はウンディーネ、かな?」

「……」

「何故シルルちゃんに過酷な訓練を強要したんだい?」

「……」

「シルルちゃんが弱いのが気に食わなかったのかな?」

「……」

「君の名は」

「考古学者、ちょっと待ってくれ」


 根気強えな、ジャー坊。かれこれ1分少々無視され続けてるぞ。僕だったら10秒もしないうちに会話を諦めているところだ。

 見かねた時子さんがジャー坊の前にかをかざして会話を中断した。そして、キッと妖精を睨むと言い放つ。言ったれ言ったれ!


「そろそろ喋んないと、ギアリアにアフレコさせるよ?」

「「止めろ」」


 片方は僕、もう片方は妖精さんだった。

 気があうね!とウィンクをしようとしたが、残念、片方の目が歯車で埋もれているため、どう頑張っても瞬きしているようにしか見えないのだった。くそ!これじゃあ女の子を口説けないじゃないか!!


 ……学校で女子と会話した最後の記憶が、道徳の時間の意見交換であるような奴の言い草でないとか言ってはいけない。



「喋る、喋るからこの軽薄薄弱な男に私の品格を落とさせるような真似をさせるのはよせ!」


 軽薄薄弱とは言ってくれるじゃないの。軽薄はまあいいとして、流石にフィギュアよか出力がある自信があるぞ。というか、僕が軽薄薄弱なら君は意志薄弱だって話だ。そんな脅しで話し始めやがって。


「奴隷瓶に入っている状態で品格も何もあったもんじゃねえだろ、囚われのお姫様(ミズ・フィギュア)


 売り言葉に買い言葉。やっちまったと思ったその言葉に小人形然とした妖精は分かりやすく機嫌を損ねた。組んでいた足を解き、瓶の壁へと近づいていく。そして、彼女がガラスに向かって手をかざすと、パキィィ!!と甲高い音がしてガラスにひびが走る。


 これは、人形(大)VS人形(小)の予感!ただし実力とは反比例している!


「ちょ、ちょっと!ジャー坊!!この瓶破られないんじゃねえのかよ!!」

「そんなこと言った覚えないよ」

「じゃあ、奴隷商はどうやって精霊たちを捉えるんだよ! 」

「説得だよ。瓶に入れて対話を可能にした後にいかに奴隷が素晴らしいのかを説明するのさ。好奇心旺盛な妖精さん達は自ら好んで奴隷になるそうだよ」

「平和な世界!!」


 つーか、奴隷の素晴らしさって何?!説得?というか詐欺じゃん!


 そうこう考えている間にもヒビはどんどん広がり、妖精の浮かべる笑みは凶暴になっていく。確かにバトルジャンキーだよ、この子!


「んじゃあ、僕たちは離れているから。頑張ってね」

「薄情過ぎやしませんか?!」

「ギアリーがぐっと飲み込めれば済んだ話ですしね。それにくだらない真似を最初にしたのはギアリーですし」

「……ギーギー、その子……れば、止まる」

「え?なに?!も、もう一回お願いします!」



 嫌だぞ、こんなくだらない理由で初めての死を迎えるのは。


 バリン!


 遂に、ガラス瓶は完全に割れた。



「ふぅ……で、低俗な人形をどの様に処分するかの話でしたっけ?」



 やべえよ、やべえよ。とりあえず土下座決めとくか?い、いや、そもそもこの世界にも土下座の文化はあるのだろうか。後ろの方で「ギアリアって、大物なのかアホなのか分かんねえな」「只のアホですね」という言葉を聞こえるが僕はそれにリスポンスする余裕がない。

 ここまでの経緯が経緯なだけにいまいちシリアスになりきれていないが、ガラス瓶から解き放たれた妖精から放たれる威圧感は一級品であり、正直メカニズムが分からないが立っているので精一杯になるほどの圧力があった。


「おい、人形。貴様の製作者はだれだ?お前を壊したらクレームをつけに行ってやる」

「……だれが教えるかよ」

「あ?」

「マキナ・アルカイドさんです」


 意志薄弱?僕の代名詞ですけど何か?というか、本気で圧力がシャレにならない。足ががくついてきた。後ろをちらっと振り返りヘルプを送るもだれも気づいてくれない。時子さんとリリーに至ってはケラケラと笑っていやがる。範囲効果のスキルか何かか?


「マキナ?アルカイド?ふん。知らんな」


 そりゃそうだ。もし知ってたらどんな御都合主義だと笑ってたわ。


「そいつはどこにいる?」

「会ったことないです」

「はぁ?そんなはずあるまい。製作者と道具はいわば一心同体。パスが開いている限り一瞬で行き来可能なはずだ」


 ぷりぷりと怒る妖精様。ガラス瓶から出たとはいえその大きさはライズ以上コノカ未満。つまり約1メートルなのでそこまで怖くはなかった。だからこそ威圧感に負けて今にもへたりそうな僕のマヌケ加減が凄いのだが。当事者からしたらたまったもんじゃないの一言だ。


「……そんなこと言われても知らないものは知らない。それよりも話す気になったなら話してくれよ」

「何をだ?」


 そこは『何をじゃ?』じゃないんだ。てっきり年寄りの口調だと思ってたんだけど。


「何って、さっきジャー坊が聞いてたやつだよ。シルルを束縛した理由とか」

「ふん。それはだな……いや、ちょっと待て。いいことを思いついたぞ」


 思いつくんじゃない。発言をしている時から僕に向けるいやらしい目線(ある意味18禁)が隠しきれてないんだよ。その残虐性が垣間見える笑いと爛々と光る目をどうにかしてください!


「残虐とは失礼な奴だな。私の笑いは生来のものであって、他意はない。それを言うとは、もしや貴様。人の顔の特徴を取り上げて攻めるのが好きなのか?」

「最高の皮肉だな!それは!」


 意味深な発言をするからいけないんだろう!と思ったが、僕の傷も周りからしたら同じ様なもんじゃないのかと思い、素直に謝ることにした。


「気にしてたなら謝るよ、ごめんなさいでした。ただ!その発言は聞き捨てならないぞ」

「発言?」

「いいことを思いついたってやつだ」

「あー、それはもういい。やっぱりつまらない思いつきだった」

「は?」



 ジャー坊のセリフを思い出す。精霊と妖精は気まぐれ。確かにその通りの様だった。





 ー・ー・ー




「つまり、シルルがあまりにも気弱だから叩き直してやろうと思ったと」

「左様」


 結局、ジャー坊が頃合いを見て間に入ってくれた。あのままだと会話がスッカスカな上に平行線だから何が何だかよくわからないまま時間が過ぎていたと思うから助かった。


「つーか、叩き直すために延々と修行って、いつの時代に生きているんだよ、こいつは」

「まあ、妖精さんですからね。千年は生きていても不思議じゃないですよ」

「……大変だった」


 シルルが遠い目をしていらっしゃる。多分、脳裏に今までのスパルタの数々が頭を横切っているのだろう。ゲームだからと思い切って頭を撫でていると妖精にどやされた。なんだこいつ、シルルの父親かよ。


「ついに行動に起こしましたね、この変態さんが」

「待ってくれ、コノカ。違うんだ!」

「あんたらは何してんのよ」


 時子さんの乱入である。


「先ほどはよくもリリーと笑ってくれましたね」

「悪かったわね。……シルルちゃん、コノカちゃん。お土産あげるー!」


 じゃん!と時子さんが取り出したのは髪留め2つ。それぞれをコノカとシルルの髪の毛につけてあげていた。


「あ、ありがとうございます!」

「……ありが、と」

「いいのよー。こっちこそ置いてっちゃってごめんね!確かに一言事情を言っておくべきだったわね。すっかり考古学者達との間で完結しちゃってたわ」


 手を取り合って謝ったりお礼を言ったりとキャッキャウフフとしている。あら微笑ましい。……けど、もしも時子さんが40超えたお方だったらどうだろうか。ハハ、ワロス。


「今何か失礼なこと考えなかったかしら?」

「考えてますん」

「屋上」

「いつの時代ですか」


 屋上なんて、今となってはソーラーパネルか時次湾曲装置で一杯でしょうに。


「まあ、いいわ。ギアくんもごめんね。思えばガバガバ思考してたわ。工芸家としてあるまじき行為ね。ギアくんにもお土産持ってきたから許してちょうだい」


 はい、と手渡されたものは、白い手袋だった。初期からはめているものよりも薄い生地で、ぴったりとしている。


「細工師や彫刻師、工芸家がよく使う手袋よ。今までの奴だと武器を持つだけならなんとかなるかもしれないけど、日常生活では不便だと思ってね。どう?」

「ありがとうございます!姉御!」

「姉御はやめなさい」

「とっつぁん!」

「普通に名前で呼びなさい」


 やったー!新しい手袋だ!なんだかコノカにもらった帽子といい、今もらった手袋といい、もらってばっかりだな。借りが返せなくならない内に一回全部返さないといけないな。いや、コノカにはプレゼントか。けど、髪飾りも今もらってたしな。何をあげようか?……僕、とか?いや、それはあまりにもキモすぎるか。何を言っているんだ、僕は。


「あ、いやなんでもないです!!」

「……まだ何も言ってませんよ、ギアリー」


 まだってことは気付いてたってことじゃないか!今のはノーカンだから。冗談で言っただけだから。


「……会話、終わったみたい……」


 シルルに肩を叩かれてジャー坊の方を見ると、妖精がリリーを殴り飛ばしているところだった。


 いや、何やってんだよ。




「いやぁ、大変だったよ」

「今もっと大変になっちゃったやつがいるんだけど」

「ふん、このウサギが失礼なだけだ。あろうことか我を小童呼ばわりなど」


 どっからどう見ても小童です。ただの威圧感が抗い難い位ある童女です。


「貴様も潰えたいと見える」

「まあ、おちついて、ウンディーネさん」


 そう言ってなだめるジャー坊の姿はもう慣れきっているようだった。大変だったんだろうな、対話。


「大変なんてもんじゃなかったよ。まあ、そのお陰で色々と話がついたから良かったけどさ。なんていうか、話が付くだけまともだよね」

「一体ジャー坊は何と話したことがあるんだよ」

「UMA」

「オゥ!イェイ!UMA!イヤァ」

「あんたはUMAの意味わかってんのかい?」


 失礼な。それくらいわかるわ。ツチノコのちょっとかっこいい言い方だろう?前に家の近くに来たテレビの人が言ってたぞ。

 起き上がったリリーがよろよろと近寄ってきた。よくHPが持ったな。さっきの場面、尋常じゃない破裂音がしたからもう街に戻ったかと思ってた。


「いてて……。容赦ねえなあ」

「反省しろよ、ウサギ」



「それで、シルるんは結局どうなっちゃうのですか?」

「あー、そのことなんだけどね。ウンディーネさんはシルルちゃんが気弱で言いたいことを言えないから居辛いんじゃないかと思ったんだって。だから強くして皆がシルルちゃんの言葉を待つような環境にしたかったらしいよ。だから、僕たちが責任持って面倒見るならいいってさ。シルルちゃんもそれなりの実力も身についてきたから妥協してやる、だって」

「……うーん、この妖精のこじらせた親父感」

「言うな、リリー、僕も黙ってたんだから」

「あと、ひどい目に合わせたら許さないってさ」


 童女はその通りだ、と言わんばかりに頷いているけど、やっぱりそれってただの保護者じゃん。……身長1メートルの保護者か。

 ありだな。


「これからウンディーネさんはどうするんですか?」

「私は今回無理やり現界させられたからな。しばらく寝るとする。流石に疲れたぞ」

「ウンディーネさんはもうシルルちゃん専属みたいなものだから現界に条件がいるんだよね。奴隷だったらそんなに力も引き出せない代わりにいくらでも現界できるんだけど」

「うむ、次は正規の手段で呼べよ、シル」

「……わかった」




 そう言うと、水球スライムからフィギュアから童女へと百変化を見せてくれた水妖精はシルルの背中にあるアナザーワンへと吸い込まれていった。



「いっちゃいましたね」

「そうだな」

「……いるよ?ここに」


 シルルはポンポンと木の棒を叩いた。……そりゃそうなんだけど。うーん、この。身も蓋もないというかなんというか。


「まあいいか。うん、なんにせよシルルの修行もこれで終わりだ。お疲れ様だったな」

「おめでとうございます」

「あ、そっかぁ……。……うん、うん!ありが、と」


 お、今のシルルは中々に滑らかな口調だったな。コノカとシルルは小躍りして喜んでいる。


「なんつーか、ウンディーネのやつも報われねえな。そう思わねえか?」

「まあ、女の子に延々と修行させといて感謝しろっていうのも中々難しいだろうしね。しょうがないんじゃない?」

「ちげえねえ!」


 リリーは笑ってジャー坊に同意した。


「んじゃ、そろそろキャンプも終了としようぜ!店の方に行きたいから俺は先に帰るぜ!」

「ボクもイベント前にやっときたいことがまだあるから先に帰るよ。3人には転移結晶を渡しとくから自由に帰っていいからね。簡易テントはギーくんにあげるよ」


 そう言うと2人は取り出した結晶を光らせて消えていった。アイテム欄を見ればいつの間にか転移結晶が3つ入っている。


「コノカ達はどうする?」

「そのことなんですが、ログアウトまで時間も中途半端ですので、午後一杯はシルルと時子さんと女子会にすることにしました」

「……ケーキ……パフェ!」

「つまり、ギアくんはここでお別れね。じゃあねー」


 ひらひらと手のひらを振ってくる時子さん。


 ……そうか、僕一人か。



 寂しくないもん!一人でいられるもん!

 


「時子さんのいじわるー!!」

「ちょ!人聞きの悪いこと言わないでよね!!あんたの方がタチ悪いわよ!」

「まあ、冗談ですけどね。んじゃあ、僕はここでログアウトしてリアルの朝に備えることにします」


 街に戻ってログアウトした後にインすればたちまち宿の中へ逆戻り。ゲームならではの移動方法だよな。


「シルル達もリアルの時間との兼ね合いを間違えるなよ」

「……うん」



 ひとしきり話し、僕は結晶を二人に手渡すとお先に転移してログアウトした。



 起きて初めに何したと思う?



 トイレ。

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