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18合コン

「そういえば、最近脳内広告ひどいと思いませんか?」



 第1陣(せんぱい)達を待っている間、コノカは喫茶店で購入したパフェもどきを食べながら言った。パフェもどきはリアルのものよりもパサパサとしているらしい。……パサパサ?


「脳内広告……あぁ、生体ナノマシン経由で送られてくるやつか。最近のは悪質だよなぁ」


 あるあるネタの1つだな。生体ナノマシンを使って利用するインターネットでは、視界内に映ったリンクを注視することがパソコンで言うクリックなる。なので、ふと現れたリンク付きのえっちぃお姉さんにちょっと目を向けるだけでエロサイトに飛ばされるのだ。あんなの卑怯でしょ。誰だって目を向けるだろって話だよな?


「……え?皆さんは、ブロッカー学習させていないのです、か?」

「なんれすか、ほれ?」


 コノカはパフェを口いっぱいに頬張りつつ、手に持ったスプーンをシルルに向けて言う。僕は思わずお行儀が悪いからやめなさい、と思わずオカンのようなことを言ってしまった。

 シルルは不思議そうに眉をへの字に曲げながら質問に答える。


「どういう、も、なにも、生体ナノマシンのブロッカー学習です、よ?コノカさんとギーギーの学校で最近指導が入りませんでした?」

「いや、違う学校だろ?」

「全校一斉指導、ってセンセは言ってたと記憶……」


 僕とコノカは目を合わせて、そんな指導なかったよな? と確認し合う。コノカが学生かどうかは知らないが、もしもそんな大掛かりな指導があったのなら、小さなニュース、もしくは生体ナノマシンからのお知らせで絶対に目にすることがあったはずだからだ。確認し合った目をそらし、もう一回コノカを見る。


 するとやはり、コノカは首を横に振る。


 だよなあ、そんなの聞いた覚えないし。先生の話は真面目に聞く方だから、聞き逃すってことはないだろうしな。シルルの学校が特別だったのか、それとも僕の学校が疎いのか。


「悪いけど、僕らはどうやら知らないようだから、詳しく教えてくれないか?」

「えっと、詳しく、って言っても、アプリを、ダウンロードするだけですよ?後は生体ナノマシンが、自動で、エモーション察知機能?だったかを使って、ブロックしてくれるそうです。後は、ソーシャル共有で、悪質な広告を、しらみ潰し、してくれたりとか?だったと思い、ます」


 成る程、つまり、生体ナノマシンが自動で、僕らが広告を不快に思った瞬間にそのサイトリンクをブロックしてくれて、その情報を多人数で共有して予測ブロックもしてくれる、と。

 なんか、機能が不安定なアプリだな。悪戯に必要なサイトもブロックされそう。そうなったらまず初めにブロックされるのは間違いなく行政関係のサイトだな。


「……確かに、不安定なのかもですが、リンク自体を、画面から削除してくれるので意外と、高評価らしいです」

「んー、そこまで言うなら帰ったら入れてみるか」

「わ、私も入れてみます!」



 いいことを知ったな。念のためジャー坊達が来たらそのアプリのことを聞いてみよ。

 一旦会話が止み、店内には客の喧騒と、コノカがパフェを突っつく音のみが響く。



  気持ちの良い日差しが窓から漏れて、縁側での日向ぼっこのような感覚に陥る。軽く欠伸を噛み殺しながら居住まいを直す。


 ……なんか、人生の中で1、2を争う位に平和な時間だな。争うのに平和とはこれいかにって感じだけど。


「俺……今、人生で、一番平和……かもしれない」

「……ッ!」


 あまりにも、同調(シンクロ)したことをシルルが言うので、思わず吹き出す。しばらく笑っているとコノカが怪訝そうにこちらを見てくる。


「ギアリー、どうしたんですか?人の平和は笑うもんじゃありませんよー?」

「い、いや!悪い。まさか、」


 まさか、こんなタイミングで思っていることが被るなんてな。と言おうとしたが、なんか気恥ずかしかったのでシルルと握手してごまかす、シルルは、なーに?と首を傾げ、コノカは痴漢だ!と騒ぎ出した。

僕はコノカの頭を軽く小突き、椅子の背もたれに一層深く腰掛けた。



 なんだか、気が抜けたな。



 さっきまでは勧誘だ何だのと、ずっと気を張っていたからな。



「ふぁ、なんか眠くなってきたな。コノカ、先輩達が来たら教えてくれ。俺ちょっと寝るから」

「しょーがないですね、特別ですよ」


 どーも、と一言返すと僕は腕を組み椅子の背に寄りかかった。



 ー・ー・ー




「あ、ギアリー、時子さんが来ましたよ」

「ん。さんきゅー、コノカ」



 どれ位うつらうつらとしていたのか。ふと気がつけば、コノカはパフェを食べ終わり僕の袖を引っ張って、時子さん達の来店を知らせてくれていた。

 入り口をみると、こちらに向かって手を振る時子さんがいる。




「あ、ジャー坊もいるし」



 ジャー坊は前見たときと違って、砂漠を旅する探索者のような格好──長めの布で体を巻いた姿──だった。

 柔和な顔で相変わらずニコニコとしている。

 首から膝まで巻かれた布はベージュをベースに、赤紫、こげ茶、アクセントの水色で構成されたストライプの模様で、彼によく似合ってた。


「や、ギーくん。久し振りだね」

「その節はどうも」


 2人が席に着いて数分後。取り敢えずメニューにあるの全部、とジャー坊が頼んだ所でリリーも合流しする。


 頼んだ料理も来て、プチ宴会のようになったテーブルを囲み、第一回公式イベント参加チームその1による顔合わせが始まったのだった。



 ー・ー・ー



「多分僕だけが、ここにいる全員と既知の仲だから、みんなの紹介をさせてもらうよ」


 食事もひと段落ついたところで僕は紹介を始める。紹介よりも前に飯を食い始めるとは何事かと思うかもしれないが、女子チームのスイーツを見る目がキラキラと輝いていたのでしょうがない。一通り食べ終わって恥ずかしそうに縮こまって居住まいを直す3人をじと目で見ながら僕は紹介を始めた。


「まずは第一陣プレイヤーから。左のボリュームのあるふわふわの金髪美少年がリメタナ・ジャバウォック。めっちゃいい人だ。真ん中のリアル兎人が蔵鉄(くらがね)リリー。めっちゃ金に汚ねえ奴だ。右の黒髪美髪オカッパショートの姉御が然乍(さながら)時子(ときこ)さん。僕をゴミから人形にしてくれた人だ」


 まずは先輩プレイヤーから。今の僕たちは先輩後輩が面と向かうように3対3で、テーブルを囲んでいる。僕は両手に花状態。



  ……ん?羨ましい? 譲らないよ。


 続いては僕達後輩ズ。


「んじゃあ、次は可愛い可愛い後輩の紹介をしますね。右にいる金髪美少女が艶風(あでかぜ)コノカ。僕のパーティメンバー第1号さんだ。左の水色の髪の儚系美少女がシルル・ウォンレット・ミーネミニチ。多分、この中で1番重い設定を持っているプレイヤーだ。そして──まあ、知っていると思いますが──僕がギアリア・トゥカタリオ。このゲームにおける最高峰の対人運の持ち主です」


 言い終えると僕は長々と1人で喋ってしまった気恥ずかしさから、手元の飲み物を(あお)った。柑橘系の果実の匂いが、鼻を爽快に通り抜けていく。リリーは何かに納得したように何回も頷いた。


「うん、確かにおめえさんは大した対人運を持ってるよ。このゲームを始めて結構経つが、ここまで男も女も顔が整ったパーティを見たのは数回しかねえからな」

「おい、兎顔。その言い方だと、僕が顔だけで人の良し悪しを判断する奴みたいじゃねえか」

「……まあ、ギアリーは実際その()はありますよね?」


 否定はしない。確かに初対面の時に顔で判断する面が大きいのは事実だ。けど、こればっかりは僕の人間性の問題だからしょうがないのだ。

 しかし、僕と友達の名誉のために言わせてもらうと、僕と未だに交友があるような奴らは全員顔関係なく面白くて、いい奴だ。傍点つきて強調しても足りない位にな。


「……で、ここにいる人達は、イベントに参加する1つのパーティとしてここにいる、って認識でいいんだよね?」


 ニコニコとジャー坊が話を切り出す。


「そのつもりだよ。……まあ、嫌だって人を追うつもりはないけどね。僕だってこのゲームでは自由にやりたい。やられたくないことは人にはしてはいけないからな」

「……うん、相分かった。何の問題もないよ。ボクはこのイベントを勝ち負け、というよりは第2陣のプレイヤーとのコネクション作りを目的に挑むつもりだがらね。勿論、イベントには全力で挑ませてもらうよ」


 ジャー坊みたいな高レベルプレイヤー(私見)もコネクション作りとか考えるんあるんだなあ。と1人バカみたいなことを考えていると、ジャー坊の隣2人がある言葉に過剰反応していた。


「第2陣?おいおい、考古学者。私らとの繋がりは要らねえってか?寂しいこと言ってくれるなあ。なあ、仕立屋?」

「そいつは、俺のことか?だとしたら同意も同意、大同意ってところだなあ!……考古学者、いや、リメたん!そんな寂しいことを言うなよ?」

「あはは、そんな揚げ足を取るような真似をしないでくれよ、工芸家に蔵やん。そんなわけないだろ?いつか君たちとも繋がりを作っておきたいと思ってたさ。……ただ、まあ、よもやギーくんが2人と繋いでくれるとは思いもしなかったけどね。一斉メッセージの宛先に2人の名前が書いてあったときは柄にもなくびっくりしたよ」


 先ほどのまでの笑みを崩し、今度はニヤニヤとした表情を浮かべてジャー坊はこちらを見てきた。何のこっちゃと思い、コノカとシルルを見てみるも、2人とも首を傾げている。リリーはガリガリと耳のあたりを書くと、僕らに訳を教えてくれる。


「あー、お前らが知らねえのも当たり前か。……実はさ、俺たちは良くも悪くもちょっと有名なんだ」

「……ゆう、めい?」

「そう、シルルちゃんは重い設定を持っているらしいからいつかは私達の仲間入りになるかもしれないわね。まあ、そういうことを抜きにしても考古学者と仕立屋は名を轟かせているようだけれど?」


 シルル、重い『設定』、時子さん……あぁ、そういうことか。


 つまり、設定帳(そういこと)、とは、ゲームの物語(そういうこと)なのだろう。……しかし、やはりリリーとジャー坊もやっぱり有名なのか。ジャー坊の妙な優しさとリリーのどこか懐かしむような同情的な目は、目立つ僕等を慮っていた、ということなんだろうな。というこか、リリー達も設定帳を持っているということか?


「まあ、そんな名を轟かすとか目立つとかの杞憂は、今回のイベントでなくなると思うけどね」


 もぐもぐ、と口を動かしてジャー坊が事も無げに口を挟む。なくなる?一体どういうことだ?つーか、そんなに目立つようなプレイヤーならパーティを組むことは失策だったんじゃないのか?……もしかして、早まったか。

 しかし、後悔したところで、もう遅い。あんなに大勢の前で教えてしまったのだ。もやは引き返すことは叶わない。


「ギアリー、私、ちょっと話についていけないんですけど」

「安心しろ、コノカ。僕も半分くらい分かっていない」




「あー、ギーくん、コノカさん。そんな難しい話じゃない。ボク達はそれぞれの分野でそれぞれちょっとだけ名が通っているってだけの話だ」




 ちゅー、とストローのような植物の茎のような何かでお茶を吸いながら、やはり、ジャー坊は何てことのないようにいうのだった。『ちょっと』って絶対に嘘だろ、と僕はじとっと見つめる。が、ジャー坊はその目線を気にもとめず話を続ける。




「だから、そんなボク等で、1つ徒党を組まないか?」





 イベントに限った事じゃなくてさ。ほら、あれだよ。プレイヤーズギルドってやつ?





 ジャー坊はバンド組もうぜーと気怠げに言う学生バンドの結成秘話のように言った。






 ー・ー・ー



 何を言っているんだ、こいつ?と思ったけど、ジャー坊がそんな適当なことを言うはずがないと思い直した。



 けどやっぱり、何言ってんの?と思った。



 ー・ー・ー




「このゲームってギルド制度なかったですよね?僕、さっき勝手にギルド名乗ってる恥ずかしい奴とイベントやりたくないって言っちゃったばっかりなんですが」


 ジャー坊の発言後、しばらく店の中に沈黙が降りた。


 僕はそれを溶かすようにジャー坊を問い詰める。ジャー坊は僕の問いを意に介さない様子で、木の実の乗ったパンケーキにセルフサービスの蜂蜜をかけていた。さっきから話しながら飲み食いしすぎだろ、こいつ。

 その余裕綽々な態度にイラっときて、蜂蜜のかけ終わったパンケーキを横から掻っ攫って口一杯に頬張る。


「あれ?ギーくんって物食べられたんだ?」

「さっきまで食って飲んでしてただろうが。早く説明しろや」

「もう、ボクは君の命の恩人だぞ?」


 きゃるるん!とジャー坊がほおを膨らます。その様子に僕は心の中を燻るなんとも言えない気持ちのやり場が遂になくなってしまい天井を仰ぎ見た。シルルがどうどう、と肩を優しく抑えるのが心にきました、はい。


「あはははは、冗談だって。そんなに悲壮な顔をしないでくれよ。まだ君達はイベントの正式詳細を詳しく見ていないだろう?ほら、これだよ!」



 シュッと空を切ってステータスウィンドウを開いたジャー坊は、公式サイトにアクセスすると、そのウィンドウをテーブル一杯に広げた。


 ジャー坊を除く僕たち5人は頭を寄せ合ってそれを見る。何故か、ログアウトしてまでイベント詳細を見に行った筈の時子さんまで。



 ー・ー・ー


【第一回公式イベント詳細についてと今後の予定】


『ปรัชญา world's δημιουργία オンライン』をプレイして頂き、本当にありがとうございます。


 今回、第一回公式主催イベント『4国対抗!陣取りゲーム、ならぬ陣殺りゲーム!!』を開催するにあたっての詳細と諸注意を申し上げます。



【イベントについて】


 ・今回のイベントは第二次プレイヤーの応援キャンペーンを主な目的としています。そのため、身勝手ながらイベントの参加資格を『パーティメンバー内の累計レベル30以下のプレイヤーの人数が、累計レベル30以上のプレイヤーの人数よりも同じか多いパーティ』とさせて頂きます。また、レベル格差の是正のため、プレイヤーの累計レベルの上限を75とさせて頂きます。これを超過するプレイヤーのレベルはイベント中、強制的にレベル75まで下がりますのでご、留意お願い申し上げます。装備の必要レベルにはくれぐれもお気をつけください。


 ・イベントの参加登録はギルドで行なうことが可能です。イベント当日の集合場所は『聖骸都市アテネ』『ウィンヤーニ』『自由国家連合』『雅燗櫻町シメイヨツノ』の都市内です。その他都市、郊外などからイベント会場へ行く事は不可能ですのでお気をつけください。また、イベント参加者以外のプレイヤーでも楽しめるような用意が多くありますので、是非ご参加ください。イベント中、イベント空間から出入りすることは不可能です。


 ・イベント期間は現実で6時間、ゲーム内の時間で1週間です。また、その関係により、イベント期間中、ゲーム内の時間は通常の2倍になります。万が一、脳に負担を感じた場合はすぐにログアウトを行い、説明書に従って対処を行ってください。


 ・上記の通り、時間の流れが変わりますので、ログアウトなどの時間管理にご注意下さい。


 ・メインイベントの内容は当日発表です。イベント会場へのアイテムの持ち込みは『可能性の領域(アナザーワン)』と金以外認められません。イベント会場ではその他アイテムは非表示となります。


 ・イベント開催にあたり、イベント前の4時間(現実時間)はメンテナンスを行います。メンテナンス前10分のアナウンスに従い強制ログアウトを行いますので、ご承知おきをお願いします。



【アップデートについて】


 今回のイベント記念として、イベント終了後以下のアップデートを行います。


 ・プレイヤーズギルド制度『蓮団(イコユニス)』の導入。


 ・称号制度の導入。


 ・公式掲示板の導入。


 ・新スキルの導入。


 ・新アイテムの導入。


 ・録画アイテム・写真アイテム(課金)の販売。






 今後とも、ปรัชญา world's δημιουργία オンラインを宜しくお願いします。





 文責:運営チーム広告課・工藤青嶺(あをね)





 ー・ー・ー





「……ってこと。ギーくん、分かってくれた?」



 成る程……ってことは、やっぱりあの集塵胎土ってプレイヤーはなあなあで僕達を公式に立ち上げたギルドに加入させようとしてたってことじゃん!!危ねえ!!ナイス判断、僕!


「その節はありがとうございました、ギアリー」

「……ありが、と」


 2人も嫌な悪寒を感じたのか、ぶるっと背中を震わすと僕にお礼を言ってくれた。僕もあの時の自分をもむと褒めてやりたいよ。危うく変なギルドに入れさせられる所だった。……よかった、人の話を全然聴かないように育って。


「おい、なんかあったのか?」


 リリーが画面から顔を離し、僕らに聞いてくる。


「ええ、実は私達、さっき変な人にギルド勧誘されたんです」

「された……」


 時子さんがそれにびくん!と反応した。画面を見て止まっていたのに急に動くものだからシルルがびびって体ごと跳ね上がっていた。時子さんはゆらりとシルルに近づくと、ガシッと肩を掴みガクガクと揺らす。


「え!?なんですって!だれよそいつ!とっちめてあげるわ!!」

「……えっと、集塵胎土、とかいうプレイヤーさん、です。……考古学者、さん?に覚えとけと、言われました……」


 シルルが精神的にも物理的にも動揺しながら普段よりも更に切れ気味になりながら、たどたどしくあったことを伝えた。それに乗じて僕とコノカは、先ほどあった出来事を詳しく3人に言う。するとジャー坊はウインドウを閉じて、少しこめかみの辺りを押さえると、ああ!と頷いた。


「思い出したよ!彼ね。確かに何回か突っかかられたよ」

「んだよ、マジでリメたんの知り合いなのかよ」


 リリーがげんなりとする。話伝いでもかなりげんなりするようなプレイヤーだとわかってくれたようでなりよりだった。


「いや、彼とはよく会うんだよね。何故かボス部屋前で。いやぁ、よく、ここは俺が見つけたからどっか行けって言われたなぁ。はあはあと息を切らして言うもんだから、直ぐに後をつけてきたことがばれているのにだよ?おもしろおよね」



 うん、懐かしい。とジャー坊は言うけれど、聞く限り、もしそれが本当なら集塵胎土さんは余程の小物、もしくは徹底した悪役ロールプレイヤーだぞ。



「それで、考古学者はどうしたんだい?」

「うーん、大体は彼のパーティとPVP、つまり勝ち抜きの決闘をして決着をつけてたね」

「え?勝てるんですか?」


 コノカがジャー坊の注文したプリンを食べながら聞く。




「うん、だって彼のレベル低いし」




 本当に、当たり前のように言うなぁ、確か、集塵胎土のレベルは僕の100倍はあった気がするんだけど。一体、ジャー坊のレベルはいつくなんでしょうかねえ?


「レベルいくつ何ですか?」


 あれ?!普通に聞いちゃうの?コノカさん!?そこはもっと後に聞くものじゃないの?起承転結の転あたりでかっこよく駆けつけてくれた時とかにさ!



 なんだか、斬新な漫画として売り出した新連載の一話目が、実は最終回でしたと言われた気分になる。……いや、どんな気分だよ。自分で言ってて訳分からなくなってきた。




「内緒。同じギルドに入ってくれたら教えてあげるよ」

「ギアリーが入るならいいですよ」

「本当かい?……ギーくん、いっしょにギルド運営しようぜー。副ギルド長、いや、ギルド長の座は君でいいからさー」


 猫なで声で擦り寄ってくるイケメン。しっしっ、あっちへ行きなさい。


「いや、僕はまだ自由に遊びたいんで。気が向いたらまた誘ってください」



 ジャー坊はショックを受けたという顔をすると、僕から目を離した勢いでシルルをロックオンする。……あれ?全然へこたれてないじゃん、こいつ。なんでそんなショック受けましたって表情してるんだよ。ちょっとごめんって思った僕の気持ちを返して。


「……シルルちゃーん」

「……や!」


 完璧に振られていた。なお、第一陣プレイヤーのお三方は今のまま行けば一緒にギルド結成するそうだ。


 めでたいな。


「……で、はぐらかされてしまったジャー坊のレベルはどうでもいいとして、集塵胎土さんはどうするんですか?」

「……ま、放置でいいだろ。どうせ、リメたんがどうにかするだろ?それに、集塵胎土は俺らじゃなくてリメたんが目的らしいしな。触らず神になんちゃらってやつだ」


そんな言葉はない。


「私たちは私たちでイベントを楽しみましょう!ほら、せっかくだからみんなでフレンドコードを交換しようよ。してない人の方が多いでしょ?」



 コノカ達を誘って呑気にフレンドコードの交換を始める時子さんとリリーったが、そんな彼らとは反対に、僕は、レベルが強制的に75に下げられるという項目が、どうにも気になってしまっていた。



「……ま、今気にしててもしょうがないか」



 フレンドコードを既に全員分持っている僕は、一人、ブドウのような味がするジュースを傾けた。

 酸味が効いてさっぱりした味わいのそれは不思議とねっとりとした甘さで舌の上を転がった。

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