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17狂え!【集塵胎土】!!

※解号ではありません。






「ええと、集塵胎土、さんで良いんですよね?」

「ああ、俺が集塵胎土だ。好きなように呼んでくれ」


 集塵さんは僕らに向かって優しく微笑んだ。

 ギルド前ということもあり、周りにはちらほらとこちらを見てくるプレイヤーたちがいる。こんなところで話しかけてきて、目立つのを避けるために僕らが顔を見せてないということを分かっていないのか?


「あまり目立ちたくないのでなるべく早く用件を済ませてください」

「おーけー、了解だ。じゃあ単刀直入に言わせてもらうとする。……俺らと組んでくれないか」

「申し訳ありませんが、今回は縁がなかったということでどうか1つ宜しくお願いします。断ります。ということで失礼します」


 名刺も返してしまおうかなと思ったが、さすがに失礼が過ぎると思い、アイテムボックスにしまった僕はコノカ達に帰ろうと促す。集塵さんは慌ててそれを止めてきた。


「いや、ちょっと待ってくれ。そうじゃない」

「……何がですか?」

「……あ、いや、まずは自己紹介をしないか?フードを被っていると話しにくいだろう?」

「は?……あ、いえ、すみません。先ほども言いましたが、僕らは顔を見られたくないのでフードを被っています。ですのでフードを取ることはしたくないです。あと、お気持ちは嬉しいのですが、自己紹介も結構です。お誘いも嬉しいのですが、当分他の人と組む気もありませんので」

「ははは……取り付く島もないな」

「ええ、申し訳ないですがありません」


 何事かと増えてきた野次馬プレイヤーはこの際どうでも良い。2人はどうか知らないが、僕はもう半分諦めがついた。たた、集塵胎土、なんだお前、その表情は。なんで、『やれやれ、困ったちゃんだな』見たいな顔で肩をすくめてるんだよ。腹立つわ。つーか、話してるの僕なんだから僕の方見ろよ。なんでずっとシルルとコノカ見てんだよ。


「ええと、用事もあるので帰って良いですか?」

「いや、まだ俺の話を聞いてくれなければ困るな」


 さっきの単刀直入に言った話はなんだったんだよ。あと、その聞き分けのない子を諭す様な口調止めて頂けないでしょうか?神経を逆撫でするのですが。


「俺らは、イベントに今度行われる参加しようと思っているんだ」

「はあ……」


 突然語りだすな。全くやれやれ困ったちゃんだぜ。


「で、詳細を読んだ所、このイベントは第二陣プレイヤー、つまり君たちの様な初心者(ニュービー)のスタートダッシュを応援する意味も兼ねているらしくてね、君達のような低レベルプレイヤーと俺らの様な高レベルプレイヤーのパーティ比率が1対1にならなければいけないんだ」


 イベント?あのやけに殺伐としたタイトルのやつか。なんだっけ?……あ、【4国対抗!陣取りゲーム、ならぬ陣殺りゲーム!!】だ。つーか、今最後、地味に失礼な言い回ししてきたな。


「そこで、君たち3人に僕らドリーマーズの仲間達と組んで欲しいんだ。丁度1パーティ6人だから君達を離れ離れにするとはしないと約束しよう。なんならイベントまでのレベリングも付き合おうじゃないか」



 成る程ね。確かに集塵さんのレベルを鑑みるに他の仲間達も十分に高いレベルが期待出来る。今の僕達にはそういった高レベルプレイヤーのツテがないから、ここで彼の手を取ることも悪くない話ではある。

 どうやら、僕はこのゲームにおいて出会いという点においては本当に高い運を持っているらしい。これはコノカに言われたこともいよいよ否定できなくなってきたな。


 僕は改めて集塵さんを見る。


 侍の様な立派な紫色の甲冑を付けて、長い髪を後ろにまとめているその姿はギルドマスターに相応しい気迫がある。見るからに課金アバターとわかる違和感のある雰囲気イケメンマスクも柔和な笑みを浮かべている今は大して気にもならない。その上彼は、後輩を思いやる心と先輩としてのプライド、その両方を持ち合わせている。






 ふむ。集塵胎土さんか。







「いえ、結構です」





 僕がその話を受けるわけがなかった。




「ええと、理由を聞いて良いかな?」


 うざいしキモいから。本音は心のは奥底に隠して僕はフードの下からくぐもった声で返す。フードを被っているおかげで表情が見られないのが幸いだ。


「理由も何も、そもそも、僕は集塵さんと出会ってまだ数分も経ってないわけですから、おいそれと重要なイベントのパーティ依頼を受ける程信用していません。後、その話を受ける受けないはみんなで話し合いたいので、即決できるはずがないっす」

「なるほどね。じゃあ返事は1時間後とかでも構わないよ」

「あ、いえ、僕が嫌なので多分1時間後とかでも断ると思います。あと、断る一番の理由は、集塵さん達が独自にギルドを名乗っていることですね」

「……と、言うと?」

「さっきから初心者なのに微妙に上からで申し訳ないのですが、僕はあなた達を構う気がないということです。だって、イベントに一緒に出たら否が応でも僕らはドリーマーズの一員として見られるわけでしょう?」

「……どうだろうね?」

「あ、いえ、集塵さんがそれを見越した上で誘っているのは分かっています。どこでこいつらが可愛いことを知ったかは知りませんが、今のとこ、僕と彼女達は縛られることなく自由にプレイしたいと思っていますので、放って置いてくれませんか?」



 先程から、集塵胎土という男は僕を見ていることが一回もない。見ているのは僕の後方、コノカとシルルだ。別にそれは良いのだが、そんな状態で僕が一緒にプレイしたいと思うと考えているのだろうか?



 ピコン!



 苦笑いで『さて、どうしようか』と肩をすくめて思案する集塵さんを前にして僕はメッセージの受信音を聞いた。失礼、と一言かけてメッセージを開く。3件のメールが溜まっている。


 ジャー坊、時子さん、リリーからだ。


 何事かと思って開くと、これまたタイムリーなメッセージだった。


 要約するとこう。



『イベントのお誘い』



 どうやら、3人とも僕のパーティに入れて欲しいということだった。全員、他にパーティを組むもいないので気楽に考えて欲しいとのこと。タイミングが良すぎる依頼に僕は、こんな場面なのに思わずにっこりしてしまった。



「あ、集塵さん」

「ん?どうしたの?」

「たった今、友達からイベントのお誘いが来たのでお断りさせていただきます」

「そうか……残念だね。じゃあ、後ろの2人は俺らと組むということで良いんだよね?」


 僕は笑って答える。


「だから、集塵さん達と組むのも、組ませるのもありえませんって。彼女達も一緒のパーティで参加しますよ」


 そう言いながら僕に送られてきたメッセージをウィンドウに表示させてコノカに送る。あらかじめ、コノカにはジャー坊の話は何回か話題に出していたので、サムズアップで応えてくれた。シルルにもリリー以外のことを教えてあげている様だ。


「……出来ればで良いんだけどそのパーティメンバー教えてくれるかな?」


 ふるふると震えながら質問される。トッププレイヤーなのに煽り耐性低すぎませんかねえ。いや、トッププレイヤーだからこそ、というやつなのか?ぬるゲーマーな僕にはわからない心情だ。


「教えるのは良いですけれど、脅して変わってもらうなんてことはしないでくださいよ。……えっと、然乍時子さんと、リリーと、ジャー坊……あ、リメタナ・ジャバウォックさんです」





「あ?今なんつった?」






 集塵さんが、僕の台詞を聞き終えるなり眉間にものすごいシワを浮かべた。そして何かを反芻する様に口をモグモグと動かす。ふるふると震えていた手はガタガタと腰に差した刀共々震えていた。抜かれたらひとたまりもないので内心ヒヤヒヤだ。


「おい、お前」


 あ、やっとこちらを向いてくれましたね。集塵さん。


「お前、今、リメタナ・ジャバウォックと言ったか……?」

「はい、お知り合いですか?」


「お知り合いですか?だと?!」


 集塵さんは頭をかきむしり唸り始める。コノカとシルルはドン引きな様子で僕と彼から距離を置く。野次馬も距離を置く。……僕をこいつと2人きりにしないで。



 僕が訴える様に後ろを向いた時、様子が急変した彼は、突然叫んだ。



「ああああああああ!!!!考古学者ぁ!!まぁたてめええかああああ!!!」


 ずかずかと僕に近寄り突然僕のコートの首元を掴んだ。カツアゲする時によく見るあれだ。けど、あれって実際にやってみるとわかるけど、手で深く襟を巻き込まないと苦しくもなんともないんだよね。

 僕は状況が飲み込めぬまま、集塵さんに首をガクガクとゆらされる!


「なん!なん!ですっ!かああ!!」

「また、お前かよ!!いつもお前だな!クソ考古学者が!!」

「僕は違いますよ!僕はリメタナさんじゃあありませんんん!」

「知っとるわ!!おい、お前!あのクソ考古学者に言っときやがれ!!今度のイベントで絶対後悔させてやるとな!!!」


 どん!と押されて尻餅をつく僕。

 集塵さんはふん!と一回鼻を鳴らすと姿をかき消した。

 まだ、頭がクラクラするや。


「だ、大丈夫でしたか!?」

「俺、なんもできなかった。ごめん」


 2人が近づいてくる。

 あの野郎、叫ぶだけ叫びやがって消えたせいで、周りのプレイヤーの数がものすごいことになってやがるじゃねえか。

 僕はフラフラと立ち上がると、服を払い、脱げかけたフードを深くかぶり直した。

 わらわらと集まってきた冒険者は僕らの周りを囲う様にしてこちらの様子を伺うので出ることができなくなってしまっている。……どうしたものか。コノカはいち早く現状を、把握して僕に耳打ちをする。


「ギアリー、どうしますか?」

「どうしようかね。ちょっと分からないや。……このフード姿も目立つ様になっちゃったな」

「今度、は……どうする?……メイド?」

「その発想はおかしい。……よし、決めた」



 僕はそう言うと、2人の手を掴み全力で走り始めた。


 強行突破だ。


 近づかれたプレイヤーは驚いて道を開ける。

 モーセの海の様に、というには些か人数が足りなかったが、人がうまい具合に開けたので僕らはそこを走り抜けた。

 円を作っていた人達が後ろを振り向くタイミングで僕のアナザーワンを発動する。


 なるべく大きいヒビを!僕らから遠くに!



 ヴァン!!



 予想以上に大きな音を立てて空間に現れた雷を纏ったそのヒビは人の目を引きつけた。


 その隙に裏路地へ3人の体をねじ込む!!



 ヒビは自分から遠くに出したせいかすぐに消えてしまったが、僕らは無事に野次馬の目から離れたところに来ることができた。



「……ふぅ、なんとかなったぁ……」


 ずりずりと僕は背中に壁をつけ座り込む。コノカとシルルは手首を抑えながら恨めしそうにこちらを見ている。顔は見えないけれど。


「そんな顔で見るなよ、助かったんだから喜べって」

「手首、痛い」

「そうですよ、いきなり走り出すことないじゃないですか!」

「ごめんごめん、時間との戦いだったからさ。あれ以上人が多くなると逃げられなかったと思ったんだよ」


 しっかし、あの男。今度あったら本当にどうしてくれようか。取り敢えず一回は小突く。全力で小突く。避けられようともやってやる。

 もしくはギア・ギア一周の刑だな。


「ちょっと、休む?」

「そうですね、そうしましょう。ギアリーの精神力もどうやら限界の様ですし」

「助かる。別に体が疲れたわけじゃないけど、精神の疲弊が凄いからな」


 よろよろと立ち上がった僕は、コノカとシルルに連れられて喫茶店に入ることになった。ついでに時子さん達との顔合わせもしようという話になり、第1陣プレイヤー3人を呼び出すことになった。




 ー・ー・ー


 To:ジャー坊、時子さん、リリー


 イベントで組むことになりそうなパーティメンバーが集まりましたので顔合わせをしませんか?


『リーブ・スリープス』という喫茶店で待ってます。


 追伸、第二陣プレイヤーはすでに集まっているため、待ちぼうけをくらうことはありませんのでご安心を。



 From:ギアリア・トゥカタリオ



 ー・ー・ー




 送信、と。

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