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うじむし97




 亀裂を通り抜けるとそこは巨人の部屋でした。


 いやいや、冗談じゃないんだよ、これが。

 私にとっては巨人に見えるというだけなんだけども。


 窓も、机も、椅子も、何もかもがデカい。


 は? 何これ? 私、ダンジョンに戻ったんじゃないの?

 ここはどう見ても私生活の空間。ダンジョンの殺伐とした雰囲気じゃない。

 いったい何処だここは?


 まさか、虹色単眼シャボン玉義父さん、こっちの世界に返すってことだけ考えてて、元の場所に戻すとか考えて無かった?

 おいおい、それは無いだろお義父さん。義理の娘への対応が杜撰すぎですよ?

 これは抗議待ったなし、孫の顔を見せませんよコラァ。


 ……ふぅ、よし、落ち着こう。

 まず確認すべきことはシステムさんの安否だろ常識的に考えて。


 システムさん、もう起きたかな? 体に異常はない? 大丈夫? 結婚する?


『問題なく再起動しております。瑠璃様、この度は大変御迷惑をお掛けしました』


 ぃやったァ! システムさん復活! システムさん復活!

 本当に良かった。無事なようで何よりだよ。

 優しくて頼りになる上に低音素敵ボイスなシステムさんがいなくなっちゃうなんて世界レベルの損失だからね。

 もしもシステムさんがいなくなっちゃってたら、私、マジで世界相手に八つ当たりしかねなかったから。

 あぁ、本当、システムさんが戻ってきてくれて嬉しい。


 そうだ、世界を愛と幸せで満たそう。世界はこんなにも美しかったんだ。


『……怒ってはおられないのですか?』


 へ? 何の話? 怒るって、私が? システムさんに?


『ダンジョン5階層、サプライズゴーレムとの戦闘時に瑠璃様の意思を無視して戦闘離脱を強制したことです』


 ……あぁ! あの時のことね! うんうん、覚えてる覚えてる。

 別に怒ってないよ。


『私がしたことは、システムとしての領分を超えた行いです。瑠璃様も大変驚き、恐れを感じておられました』


 まぁねぇ、そりゃ少しは恐かったよ。今後、戦闘になる度に強制的に逃げるコマンドが発動しちゃうとか、システムさんの影響力が強まってるんだなぁ、とか。色々考えたね、うん。


 でも、そこは私クオリティだから。

 システムさんの影響力が増すことを喜びこそすれ、いつまでも怖がってる訳ないじゃない。


『……そのように瑠璃様が私を甘やかすので、私が付け上がってしまうのです』


 ははッ、甘やかされてるのは私の方じゃない。

 私の安全を第一に考えて、消える覚悟で逃がしてくれたシステムさんの滅私奉公っぷりと、システムさんに依存している私を比べちゃダメよ。

 瑠璃さんの立場が無くなってしまうからね! ハッハッハ!


『貴女という方は……、本当に……』


 まぁ、その話はいいじゃない。

 私はシステムさんが何したって怒らない。盲信してるからね。でなきゃシャボン玉義父さんの所に直談判しに行ったりしないよ。


『かなり自意識が曖昧になっていたのですが、やはり彼方側に入られたのですね』


 そうそう、行っちゃったよ。システムさん。システムさんの実家に挨拶にしましたので。


『実家?』


 虹色単眼シャボン玉のお義父さんには結婚の許可を貰っているので、あとはシステムさんの気持ち次第で私とシステムさんが結婚できるということだよ!

 しかし虹色単眼シャボン玉のお義父さんって長いな。短く呼びたいわ。上手く縮めると虹目玉おやじ? なんか危ない気がするから止めておこう。


『私の意識がない時にいったい何が……。結婚の話は大変光栄です』


 フッフッフ、システムさんでも分からないことは有るんだね。意識がなかった時のことなら当たり前か。知りようが無いもんね。


『ですが、私には肉体というものが無いので、次世代を成すことは難しいでしょう』


 結婚は子供作るだけじゃないよ。

 勿論それも大事だけど、ここでは好きあってる者同士が一緒にいることを約束するってことが大事かな。

 後は、お互いを支え合って行く宣言みたいなもの。

 これは私がしたいの。

 システムさんに甘えてばかりじゃなく、自分で立ち、システムさんを支えるほどの女になってやるぜという自分への誓いとして。


『では、もうしているも同然ですね』


 マジかッ!? いや、そうか、システムさんと私は相思相愛。これはもう事実婚だったということなんですね!?


「あのさ……そろそろ良いかな? 君達が僕に気付いてくれるのを待ってると夜が明けそうなんだけど……」


 あァん? なんだ誰だ私とシステムさんが久しぶりにお喋りしているのに邪魔してくる無粋な奴は?

 『氷寒魔法』でじわじわゆっくりと四肢の指先を霜焼けにしてくれようか。


「キレ過ぎじゃない!? そもそも君が僕の部屋にいるんだからね!? なのに君たちがイチャイチャするのを待ってたんだよ? お礼を言われても良いくらいでしょ!」


 この声、聞いたことあるな。

 仕方がない。話に付き合ってやるとするか。


 声のする方を見上げる・・・・と、そこには『学園迷宮』のダンジョンマスターにして『英雄学園』の学園長でもある金髪おかっぱが……。


 あれ、金髪おかっぱ大きすぎない? 成長期なの?


「一応言っておくけど、君が小さくなってるんだよ、白氏瑠璃ちゃん。前に会ったときは大型の蛇みたいだったのに、今は鉛筆程度だね」


 ……ホワイ? 私が小さくなってる? 何で?

 今さらだけど、体がウジに戻ってるし。

 亀裂を潜ったときは確かに限定神化モードだったんだけど、こっちに帰ってきたら全部リセットなの?

 いや、リセットどころじゃないよ。体のサイズが100分の1くらいになってるもん。大赤字だよ。


『限定神化解除の影響ですね。限定的とはいえ神に近しい肉体の構成するのには大量の肉を消費します。加えて彼方側に接触した負荷が発生しています。行動するだけで大量のエネルギーを消費したのでしょう』


 えぇー、それは聞いてないよ……。

 成り上がりものだと思ったら、成り下がりものだったでゴザル。


『今までレベルアップや『経験則』で強くなった分は無事です。『過食成長』で大きくなった体が削られただけですね』


 うーん、ということは虹色単眼シャボン玉お義父さんに会うには最低でもまたあれくらい体を成長させないといけない、ということか。


「虹色シャボン玉って……やっぱり彼方側の御大と会ったのかぁ。瑠璃ちゃん、ブッ飛んでるなぁ。しかもかなり強引なやりかたでしょ? 彼方側の溜め込んでたエネルギーがダンジョンに流れ込んで大変だったんだから」


 知ってるのか金髪おかっぱ!?

 そういやこの人、システムさんとも以前からの顔見知りだったみたいだし、あっち側の関係者なのかな?


「どちらかと言えば、そうだね。配下みたいなもんだよ。このダンジョンも初心者の育成という目的とは別に、経験値や情報を御大に献上するって役割があるんだよ」


 ふーん。特殊なダンジョンなのかな、とは思ってたけど、本当に特殊なんだね。まさか金髪おかっぱがシャボン玉義父さんの仲間だったとは。


「まぁそこは置いといて。少し僕の話を聞いてもらって良いかな?」


 いいよー。そうしなきゃダンジョンに戻れそうも無いし。話を聞かずに急ぐほどの用事もないしねぇ。


「そのダンジョンなんだけど、『学園迷宮』ではもうレベルアップ出来ないと思うよ?」


 ……何ですと? レベルアップ出来ない? いったい何の冗談さ?


『冗談では無いですね。今や瑠璃様は『彼方なるもの』の配下。ダンジョンマスターも同様。同じ配下同士では経験値を取得できないのです』

「僕が言いたいのもその事なんだ。お互いなんのメリットもないから、別の場所に行って貰えたら嬉しいなってね」


 こちら側に戻ってきて早々に退去命令とか、世知辛いなぁ……。



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