表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
97/145

うじむし96 しでむし13




「そういう訳だから、墓地からは退去してね」


 折角だからお墓参りしようと思ったのに、ダンジョンマスターに掴み上げられてしまった。

 本当に食べるつもりなんて無いよ? まったく信用がないな。


「ちょっと異界の人は何するか分からないからねぇ」


 白氏さん……、ダンジョンで何やってるんだ貴女は……。

 ある意味、転生者としては正しいのかもしれないけど、現地の人に迷惑かける観光客じゃないんだからさ……。


 まぁ、やってしまったものは仕方がない。転生者が落とした信頼のツケが回ってくるのも致し方なし。

 ここで俺が騒いでもどうこうなる問題でもないだろうしね。


「ん……?」


 ん? ダンジョンマスターが急に立ち止まった。

 忘れ物かな? 見上げると、ダンジョンマスターの顔色が悪い。どうしたと言うのだろう。


「またダンジョンに異変が……。いや、これは……、え? ちょっと冗談だよね……?」

「あの、何事ですか? もしかしてトラブルが?」


 ダンジョンマスターは忙しなげに辺りに視線をさ迷わせているが、何か見えているんだろうか?


「瑠璃ちゃん、何てことしてくれてんの!!」


 ぉうわッ!

 いきなり放り投げられた!? アンタが何してくれてるんじゃ!

 抗議しようと起き上がるけど、ダンジョンマスターはとっくにいなくなっていた。


 マジかよ、何か知らんけど物凄い雑な扱いをされたことは分かったぞ。


 そして白氏さん、また何かやらかしたのか。

 あの人が何かやらかすんだったら、きっとシステムさん絡みなんだろうけど、その内ダンジョンから追い出されるんじゃないかな、あの人。


 はぁ、この学園――ダンジョン含む――では本当にロクなことがない。

 サッサと出口見つけて出ていってやろう。


 俺は平和に力を付けて平和に復讐を果たして平和に余生を送りたいだけなのに、なんでこうも周囲が騒がしいんだろうね。


 ……何か視線を感じる。

 ダンジョンマスターに掴み上げられていたし、会話もしていたもんな、念話だけど。

 学生かな? 見られていたら面倒だ。

 ここは墓地だし、もしかしたら亡くなった誰かの関係者かもしれない。キャリオンビートルだ、殺せってなったら面倒というレベルを超えて最悪だしな。

 ここは逃げるとしよう。


 あれ? 足が動かない?

 まるで何かに縛られているかのように、体が自由にならない。

 嘘でしょ? 墓地で金縛りとか怖いんですけど。


 視線の方向は背後、墓地側だ。重い体を軋ませながら振り返る。


「嘘やん……」


 思わずエセ関西弁が漏れた。


 共同墓地らしく、大きな石碑が置かれた神聖ささえ感じさせる空間に、靄が立ち込めていた。

 これならいっそ学生の方が良かった。

 『魂喰らい』の影響か、その靄の正体が分かってしまう。アレは埋葬された学生達の魂なのだと。


 蘇った? いや、いくらファンタジーに溢れた世界だろうと死人が蘇ることはないだろう。

 死者が這い出ることがあるとするならば、死霊術で操られた時か魔物と化した時かと相場は決まっている。


 ここの空気、さっきまで澄んでいた筈なのに、今は濁っている。

 触覚に異常な反応あり。過剰なまでの魔力が空気中に満ちていた。どこからこんな魔力が? 待て、そもそもこれは魔力か?

 魔力と言うよりも、もっと純粋なエネルギーのような……。


「ア゛ア゛ア゛ア゛……」


 考えている時間は無さそうだ。

 学生達の魂……、いや、ゴーストは赤い光点のような目で俺を恨めしく睨んでいる。

 俺はダンジョンのモンスターだもんな、ダンジョンで死んだ学生達からすれば、恨みの対象だよな。


 すまんダンジョンマスターさん、人間を食べないと言ったが……、ありゃ嘘だった。

 厳密にはもう人間じゃないかな? モンスター化している訳だし。


「ア゛アァ……!」


 学生ゴーストが吠え、襲いかかってきた。

 ひぇ、すんごい! 敵はただのゴーストじゃない。全部の魂がくっ付き合って何かキモいことになってる!

 さながら魂の泥団子? 色々な顔が浮かんでは埋没し、また新たな顔が浮かび上がる。

 男も女も混ざっているけど、みんな同じように恨みや怒りに溢れた顔をしていた。


「ア゛ア゛ア゛ァ……」


 攻撃方法は単純。体当たりと同時に多数の口で噛みついてくるだけ。

 ゴーストだからかこちらの反撃は透過してしまうんだけど、それだけだ。それだけじゃ脅威にはほど遠い。

 まだヤマタノカタツムリの方が怖かったぞ?


「ア゛ア゛ア!」

「ギチチチチッ!」


 叫ぶゴーストに俺も顎を鳴らして応戦。

 ただ鳴らして威嚇するだけじゃない。呪文を言葉で詠唱できない俺には、これが詠唱の代わりだ。


 肉を咬み切るのに適した形の顎に、ぼんやりと光が灯る。

 使い道の微妙な『無魔法』の使用法その一。“付与”

 加えて『魂縛』の効果を乗せれば、対ゴーストタイプの即席武器となる!


 さぁ、どんと来い!

 突っ込んでくるゴーストに対してカウンター気味に飛びかかる俺。

 交差する瞬間、『無魔法』が付与された顎がゴーストを切り裂いた。


「オ゛ア゛アア!?」


 ゴーストから苦悶の悲鳴が上がる。

 傷口からは血の代わりに取り込んだエネルギーが噴出していた。

 魔物化した魂でも痛みは感じるようだ。痛みを感じるなら、殺せる。


「オ゛ア゛ッ!」


 ずびゅう! とゴースト達の首が伸び、俺を狙う。

 攻撃のバリエーションが増えたところで痛くも痒くも無い。

 むしろその単純に伸びた首が狙いやすくて丁度いい!


 跳躍しながらキリモミ回転し、複数の首を一気に切り落とした。

 聞くに耐えない悲鳴が轟く。


 動物の鳴き声ではなくて、人間の声で聞こえるから少し嫌な気分になる。まるで自分が積極的に人間を襲っているみたいじゃないか。

 動物なら良いって訳じゃないけどさ。自分の倫理観に激しく抵触するんだよ。


 というかさ、君たちがモンスターになるんじゃないよ。大人しく眠っていなさい。


 ダンジョンマスターは君たちを失って悲しんでいた。冥福を祈っていたんだろうし、その為に俺を墓地から追い出そうとまでしていた。


 だというのに君たちのその様は何だというのか。

 自分の恨みに縛られて成仏もできず、遂には魔物化して暴れだす……。

 もしも俺がここで退けば、君たちは墓地を抜け出して学生を襲うだろう。

 かつて人であった者として、そんな蛮行は見逃せない。


 『魂縛』の能力は魂を拘束し、取り込むこと。

 学生ゴーストに負わせた傷から毒のように浸透したスキルは、内側から全身を縛っている。


 これで決まりだ。スキル発動。


「ア゛ッ!?」


 学生ゴーストが逃げようと身を捩るが、もう遅い。ゴーストが俺に勝ちたいんだったら、全弾回避が前提だよ?


「それでは、いただきます」

「ア゛ア゛ア゛ア゛!?」


 吸引力の変わらないただ一つのスキルが、学生ゴースト達を纏めて捕らえ、欠片さえ逃さず取り込んだ。

 ゴーストが取り込んでいた謎エネルギーもついでに吸収させていただきました。

 げっぷ。失礼。



『獲得経験値が一定の値を越えました。虹川 颯太はLv. 14からLv. 20にレベルアップしました』


『進化条件を達成しました。プリズムビートルの進化先が解放されます』



 やっぱり俺はレベルが上がりやすい。いや、上がりやすくなった?

 そういえば『システムに一方通行』を取得してからのような……。

 説明文に載らない隠し能力があるとでも言うのか?


 ま、まぁ、その検証は後だ。俺はまた進化できるらしい。

 白氏さんトラブルメイカーも強くなっているみたいだし、彼女のトラブルをどうにか出来るくらいには強くなりたいよな。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ