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うじむし90



 武器ってさ、大きさとか用途で名前が変わったりするじゃない?

 種類が有りすぎてパッと羅列はできないけどさ。

 そういうもんだよね。


 で、ですよ。

 罠って大きさが変わったら名前も変わるのかな?

 例えば『飛来する矢』。確かに飛んでくるのは矢なんだけど、そのサイズが攻城兵器クラスになってくるともう『飛来する矢』って言わないんじゃないかな?


 今、私の目の前に迫るものがそれ・・です。


 ハッ! 罠の規模のあまりの大きさに、一瞬思考が彼方へと飛んでいた!

 即作! 氷の障壁! 飛んでくる太くて固くて鋭い物を防ぐのです!


 ゴキィン……! と激しい衝突音が罠階層の大広間に響く。

 いやー、スイッチ入れる前から積極的に襲ってくる罠とか斬新だよね。

 罠とは?(哲学)

 

 システムさん、ボス仕様で罠の威力が上がってるってレベルじゃないよコレ。もう別もんじゃない。パイルバンカー装備したスーパーロボットみたいになってるよ。

 パイルバンカーは男のロマンらしいけど、私には分からん。温泉用の長い掘削ドリルとかの方にロマンを感じるわ。

 ってんなこたぁどうでもいいのよ、パイルバンカーみたいな『ボスモード飛来する矢』が激しすぎて身動き取れないんですけど!?

 氷の壁からはみ出たら即ミンチだよ。

 何度も確認するけど、ここって初心者訓練用ダンジョンなんだよね? 初見殺し用ダンジョンじゃないよね?


『瑠璃様はミッションをこなしていますからね。学生であのミッションをクリアすることは通常不可能ですから、ある意味これもイレギュラーですね』


 つまり強さのレベル的にはあのヤマタノカタツムリと同じってこと?

 そりゃないよシステムさん、私はあのカタツムリにボコボコやられてるんですけど。


『瑠璃様もあの頃とは違います、出来ます』


 ぬぅぅ、システムさんにそう言われると出来る気がしてくる不思議。

 やっぱり私って単純。

 でも、世界は単純なヤツが強いように出来てるって言うしね。あんなギミックだらけの罠ゴーレムには負けないよ!

 システムさんの応援さえあれば百人力の百万馬力さ!


「Guuuummm」


 ゴーレムが、鳴いた?

 ゴーレムって鳴く生き物だったのか。


『違います。あの音はゴーレム内部の駆動音です。罠が来ますよ瑠璃様』


 おっけー、何が来ても防いでみせるぜ。


『罠反応感知。釣天井、落とし穴、虎鋏の起動を確認』


 システムさんも手伝ってくれるのか! これならパワー更に倍、二人合わせて2000万パワーズだ!

 罠ゴーレムよ、じめじめした罠階層では『氷寒魔法』が最強ということを教えてやろう。 


 まずは氷柱祭りといこうか。

 『氷寒魔法』によって産み出された何本もの太い氷の柱が落下してくる天井を支える。

 罠など、何が来れば分かっていれば恐くはない。

 解析感知にシステムさんが付いてくれた今、私に隙はない。

 氷柱は地面に根を張り、虎鋏も落とし穴も発動する前に氷付けにした。

 システムさんが罠の場所を知らせてくれる上に、魔法の発動もサポートしてくれるからね。

 いつもよりも大規模に魔法が撃てるのさ。


 最初に手伝わないよと言っていたのに、いざ戦うとなるとやっぱり助けてくれるシステムさん。

 ふふふ、世界は愛に溢れているね。


「Hyuuuuuuiiiiinn」


 おっと、敵わないと見て次の罠かな?

 しかしシステムさんの解析にかかればどんな罠だって……。


『反応感知。ワープパッドの起動を確認しました』


 むむ、ワープパッド? 知ってるのかシステムさん!


『ダンジョン内で不用意に触れた者の位置を他所へ転送するトラップです。斥候職や後衛が嵌まりやすく、パーティーを分断する危険な罠です』


 なるほどね、でも私は一人だし関係ないね。ダンジョン何処かに飛ばされても、またここに戻ってくれば良いんだし。ちょっと面倒だけど。


『いえ、この場合は――――』


 ブツリ、システムさんの声が途絶え、視界が暗転する。ワープパッドに触れさせられたのが分かった。

 内臓が浮き上がるような浮遊感が気持ち悪いけど、ワープなんて怖くない、ヘイヘイ!ボスモンスタービビってるゥ! だなんて思っていたんだけど。


『――――攻撃に使われるでしょう』


 晴れた視界の先ではゴーレムが腕を振りかぶっていた。


 そ、そう来たかぁ。


「Hyuuuiii!!!」

「ごふぅッ!」


 私のやわらかボディにゴーレムのパンチが食い込んだ。

 体がくの時に曲がり、口の中いっぱいに苦い体液が溢れる。

 衝撃で凍らせた床を滑った私は自分が設置した氷柱に激突して更に逆くの字に。

 うべぇッ、我慢してたの体液が口から出ちゃったじゃん。

 えぇい、乙女の華麗な戦闘シーンを汚いもので彩りおって!


 久し振りに思いっきりダメージ受けたわ……。

 くっそ、痛いなぁもう!

 此所には食べられる物が殆どないから、回復は簡単じゃないってのに、よくもやったな!


『反応感知。ワープパッドが複数起動されました』


 そういや殴るときに駆動音がしてましたね。

 まずい、ワープは氷じゃ防げない。

 空間操作とかズルいぞ! 初心者訓練所にあるまじき強スキルでしょうが!


『あれはスキルではなく、あくまで罠の発動と設置ですから。サプライズゴーレムがここまでの知恵を見せるとは想定外でした』


 くっ、ルールの穴を突いたって訳ね!

 システムさんが想定外だと言うってことは、やっぱりコイツもイレギュラーなのか。


 ……あれ? 不味くない?

 あのカタツムリモドキが出現したことで金髪おかっぱのダンジョンマスターにダメージ入ったんじゃなかったけ?

 今、あのヒーローモドキ達の所為でダンジョンに負荷がかかった状態で更なるイレギュラーの出現とか、金髪おかっぱにまた大きいダメージが行くんじゃ……。


『ミミックの変異種はダンジョンにとって寄生虫のようなものでした。このゴーレムはイレギュラーな行動を取った生徒をお仕置きする機械です。起動事態は始めてでしょうが。つまり情報が少ないのです』


 今回のイレギュラーは私ってか。

 不当だ! 不正だ! 私は出来る限りの範囲で頑張って楽しただけだ! それの何処がイレギュラーなんだ!


『罠の解除ではなく、罠の破壊は罠階層のコンセプトからは外れているので、破壊した数によりゴーレムも強化されているのでしょうね』


 ……私が壊した数っていくつだったっけ?

 

『302個です』


 ゴーレムの出現条件は?


『100個以上の罠の解除または破壊ですね。破壊した分だけ強化されるようです』


 じゃあ私はマトモに攻略した生徒の3倍強い状態でゴーレム相手にしなきゃいけないんじゃないですかヤダー!


『目下の危険はゴーレム学習能力らしきものが有ることですね。ワープパッド攻撃が有効だと学習されたようですよ』


 そういやさっき起動してたね。

 じゃあこっちも対策だ。ワープが防げないなら防がなきゃいい。全身に氷の膜を張って打撃を耐える。耐えて踏みとどまって、接近戦をしかけてやる。

 近すぎればワープも発動しないでしょ、違うかねゴーレムくん!


 一瞬の視界暗転。

 さぁ来るぞ、身構え――――


「ぐへぇッ!?」


 またしても私のやわらかボディに食い込むゴーレムの拳。

 今度は上から振り下ろされた。

 ぐしゃりと地面に叩き付けられる。

 馬鹿な!? 氷の膜はどうしたのさ!?


『これは……驚きました。恐ろしく正確に瑠璃様の位置を測定し、ワープパッドを起動させていますね。ただ設置してあるだけの罠には出来ない芸当です』


 嘘でしょ? 氷の膜をすり抜けて私だけ捕捉したっていうの?

 空間系スキル、どれだけ優秀なのよ?


『この場合はゴーレムの測定能力ですね。複数のワープパッドを併用して瑠璃様の位置を正確に把握しているのです』


 し、システムさんがゴーレム褒めた……。

 ゴーレムめ、どれだけ優秀な攻撃能力を持ってるんだ。


『申し訳ありません。こちらの読み違いでした。今の瑠璃様ではサプライズゴーレム勝利する確率は非常に低いと言わざるを得ないでしょう』


 い、いや、待ってよ、システムさんにこんな無様な姿を見せたまま終われないって!

 ワープパッドなんて罠一つで戦況をひっくり返されて堪るか、だったらこっちも一手で戦況をひっくり返してやればいい。

 見ててねシステムさん、勝利の栄光を君に!


『瑠璃様、今のスキルの組み合わせでは勝てません。申し訳ありません、何より貴女の身の安全が大切なのです』


 システムさん、なんてことを! 私の安全が大事だと言ってくれるのは嬉しいけど、二回もド突かれて何も出来ないまま諦めるなんて、そんな情けない人生の幕引きは真っ平だよ!


『再戦の機会はあります。私が作ります』


 システムさん言葉と同時に物凄い虚脱感。

 これは、MPが大量に使用されてる? システムさんに使えるスキルは、私が渡した『建築』……。


『G.ggg...』


 ゴーレムの動きが止まった?

 そうか、このゴーレムはダンジョンの罠を寄せ集めて作った物、『建築』が有効なのか!


『既に独立した個体を『建築』で縛り続けることは不可能です。退避を推奨します』


 え、ちょ、システムさん、今なら勝てるって!

 動きが鈍ったゴーレムに『氷寒魔法』で一発! 内部の水分を凍らせて、ギミックをボロボロにしてやろうよ!


『今あるMPすべてを使用しても、ゴーレムを機能停止に追い込む可能性は低いのです。『建築』の有効時間が切れます、強制退避致します』

「待ってってば!」


 久し振りに呻き声以外の声を出した。

 それだけ必死だったんだと思う。

 今までボスモンスター相手にはろくに戦えて無かった私が、僅かとはいえ掴みかけた勝利。

 私は案外、負けず嫌いで熱い女だったみたいだ。


 だけど、システムさんは聞いてくれなかった。

 システムさん出会ってから、初めてのことだった。


 『建築』で足元に穴が開く。

 私は勝利の可能性を目の前にして、システムさんの作った深い穴の中に落ちていくのだった。



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