表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
82/145

うじむし81




 どんなスキルにだってコストがかかる。基本的にはMPだ。

 『腐食性血』はHPを使っているし、『過食成長』は食べたもの、『再生』はSPだったりするので、一様にMPだけとは言えないけど、一番コストとして要求されることが多いのがMPということだ。


 要は、スキル合戦になりがちな戦闘において、MP管理は超重要ってことです。


 Nスキルと思いきやEXRスキルだった『建築』に至っては、コストにかかるMPもそれなりな訳で、回復前提で使っていないとすぐに枯渇してしまう。

 どおりでヒーローとの追いかけっこはすぐに息切れした訳だよ。

 あの時は、システムさん不在+『建築』と『氷寒魔法』の合わせ技で逃亡、だったもんね。


 つまり、何が言いたいかと言うと、私はピンチなのだ。


「ぐっ、痛いってば、この!」


 ろくに身動きの取れない縦穴の中で必死に身をよじる。

 墓穴を掘るとは正にこの事、自分で掘った穴がそのまま墓穴になりそう。

 きっと今ステータスを確認したら、じりじりと体力が減っているんだろうな。


 システムさんが報告してくれた限りでは、モグラやネズミに似たモンスターが、地中から私を攻撃しているらしい。

 体に噛みつかれる感触から、大きさはそこまでないと推測できる。だけど数が多い。

 噛まれた傷からは『腐食性血』が滲み、モグラ達を撃退すると共に、じわじわと周囲の土を溶かしていた。


『瑠璃様、あと25分です。頑張ってください』


 ぬぐぐ、根性ゥ!

 痛いけどなるべく『再生』は控えめに、『腐食性血』で迎撃するだけにとどめる。

 せめて口元を攻撃してきてくれたら、『丸飲み』で食べちゃえるのに!

 それを理解しているのか、モンスター達は徹底してボディ狙ってくるのだ。


 痛ッ! また噛みつかれた! くぁあ! ストレスが溜まる!

 くそ、覚えてろよ! この穴から出たら纏めて仕返ししてやる!

 痛ァ!痛たたたた! ごめんウソウソ仕返しとかしないから痛ッたァああああッ!?


 ぶちィっていった! 肉持ってかれた!


 やばい、今の噛みつきはかなりデカかった。

 小さいモグラみたいな奴だけだと思ったら、デカいのもいるのかよ!

 こっちは地面に埋まって身動きひとつ取れないって言うのに、ズルいぞ!


『出血が多いです、ひとまず回復を』


 でも、コイツらお腹ばっかり狙ってくるんだよ!?

 正面から正々堂々来ない奴等ばっかりだよ?

 顔に向かってこないから食べられないんだ!


『大丈夫です、対処済みです』

「わひゃ!?」


 うわ、変な声でた!


 システムさんの言葉と同時に私の体が沈んだ。

 足元、縦穴にすっぽり嵌まっているから正確にはお尻辺りなんだけど、落とし穴が開いたみたいに、すとんと落ちたのだ。


 次の瞬間、縦穴の途中に空いた穴からモグラが飛び出してくる。

 さっきまで私のお腹があった辺りか。恐らく、また噛みつこうとしていたんだろう。

 私が急に沈んでいったから、止まれなかったのだろう。

 そして、落ちていく先には私の口。


 成程ね、システムさんからの心尽くし、いただきます。

 レミングの行進よろしく、モグラが次々に落ちてくる。

 こりゃ楽でいいね。勝手にお腹がいっぱいになっていくスタイル。

 モグラ、美味しゅうございます。


『回復はMPを優先、『建築』を続行します』


 回復した以上はこっちから打って出たいけど、今更だよね。

 お腹いっぱいになったらわざわざ仕返ししに行く気も失せた。……ふぅ。賢者タイムですわ。


『まだ安心するのは早いです、瑠璃様。大サイズのモグラを発見できていません』


 そういやお腹の肉をガッツリ持っていってくれた奴がいたな、また攻撃されたら堪らない。ソイツは仕留めよう。

 ……動けないけど。


『どうやら沢山食べた為、お腹が膨れたようですね、縦穴に今まで以上に詰まってしまっています』


 うん、だってモグラひっきりなしに来るんだもん、今も来てるし。顔に落ちてくるから食べざるを得ないんだよ。放っといたら私の顔がかじられちゃうからね。

 『丸飲み』が地味に大活躍してる。


『回復はしたのですから、MPにも少し余裕があります、ここは『氷寒魔法』で横穴に蓋をしましょう。MPを使えばお腹も凹みます』


 そ れ だ !

 モンスターに岩で蓋をされ閉じ込められた私が逆にモンスターを閉じ込める、意趣返しってヤツだね。


 私の作戦が裏目に出ただけ? なにぃ? 聞こえんなぁ~。


 土の中だからか水分もあるし、頑丈な蓋を作ろう。

 凍らせるだけだから魔法名は考えなくてもいいか、そーれ、いち、に、さんっと。


 ぴきり、と私の縦穴に無断掘削されたトンネルが凍り付いていく。


『淀み無い魔力操作、お見事です』


 『氷寒魔法』は結構使い込んでるし、まぁ、多少はね?

 ゴツッゴツッとぶつかり合う音がして、氷の奥が赤く染まった。音はだんだんと、ぐちっ、みちっ、と水っぽい音になっていく。


 うわぁ……、あれ、蓋がされて進めないのに奥からどんどん突っ込んでくるから、先に進んだモグラネズミが潰されてるんだ……。

 ちょっと酷なことしちゃったかな。

 あと、勿体無いわ。あれだけ食べれたかもしれないのに。モグラ、案外味は悪くなかったのに。

 ネズミは不味い。痩せて骨ばっかだったよ。


 さて、一番大きな穴にも蓋をしたし、真っ赤に染まった氷の蓋のことは今は忘れよう。モグラ達よ、成仏してくれ。


『これだけのモンスターを倒せば、ある程度は魔力をダンジョンに還元できたでしょう』


 お、そうなの?

 殆どモグラとネズミしか倒してないから、大して期待してなかったんだけど。


『あの氷の奥で大サイズのモグラの死亡を確認しました。どうやら他のモグラに押し潰されて窒息死したようですね』


 えぇええ!? それありなの? いいのそれ? 倒したことになるの? 経験値やら魔力やら、取得できてる?


『瑠璃様の『氷寒魔法』で引き起こしたのですから、ありです。勿論取得できています』


 な、なんか悪い気がするけど、システムさんが良いっていうならいっか。


『それよりも、地中の脅威を退けたことで、少し余裕が生まれました。地上のモンスターの群れは、モグラ達に追い詰められて瑠璃様が穴から這い出してくるのを待っているようですね』


 システムさん、この数秒の内に外の様子まで探ってくれたのか……。相方が仕事が出来すぎて、私のいらない子感が凄いです……。


 ま、私には私にしか出来ないことがあるけどね。

 システムさんと私の性能差が開きまくってるなんて今に始まったことじゃないし、ウジウジしててもしょうがないのさ。

 私は私がやれることをやっていくのだ。


 その第一歩、質問はすぐにする。


「モンスター達が待ち構えてるって、蓋をしたのはアイツ等だよね? なんで待ってるの?」

『恐らく、モグラ達の攻撃で地中に居られない状態に追い込み、自爆覚悟で溶解液で岩を溶かして脱出するよう仕向け、弱った所を安全に狩るつもりなのではないか、と』


 ふむ、舐められたもんだね。

 実際、システムさんがいなけれそうなってた可能性が高いけど、残念、私にはシステムさんという心強い味方がいるのさ。

 お前達の企みは、まるっとお見通しだ!


『確かに、奴等は私たちを侮っているようです。どうされますか?』


 んー……、ここは無視で。

 コストが馬鹿にならない『建築』をずいぶん下方に向けて使ってもらったしね。

 ここで今のルートを捨てると、今までかかったMPも無駄になっちゃうじゃない。

 それはイヤなのよ。


『分かりました、彼らにはここで暫く待ちぼうけしてもらうことにしましょう。では下方への『建築』によるダンジョン干渉を続行します』


 お腹がへっこむ勢いでお願いね、私を助けると思って、ホントもう、食・即・太なんだよこの体。


『『過食成長』をもう一度オンにすれば、多少は体の成長分に回されますよ』


 それ、縦穴がもっとぎちぎちなるヤツだから。結果が目に見えてるから、やりません。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ