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うじむし80




 相手は猛獣の群。

 どうやらじり貧になりそうな状況。


 で、あるならばマトモに戦うことは諦めましょう。

 元々そんなつもりもないけどね。


 『腐食性血』を足元に向かって噴射!

 私の体でも充分にこもれる縦穴を掘り抜くのだ。


 どじゅぅう、と白い煙が上がり、地面が溶けていく。

 うぅんもう、焦れったい、もっとサッサと溶けてくれて良いのに!


『成程、『建築』でサポート致します』


 サンキューシステムさん! 言わずとも意図を汲んでくれる姿に愛を感じるわ!

 おぉ、さすがダンジョン干渉能力、もりもり掘れてくね。


「ゴガァアア!」


 私がやっていることに気づいたのか、体格の立派なモンスターが吠える。

 あれがリーダーか? いや、もっと見極めなきゃ、また失敗しちゃう。


『指揮官では無いようですが、戦士よりは上でしょう。今のは突撃命令ですね』


 戦士以上指揮官未満、ということは戦士長ってか。

 相手が何かの準備をしているなら邪魔するのが当然だよね。


 来るな来るな! ぺっぺっ!

 足止めに追加で放った『腐食性血』だったけど、特性が理解されてしまったようで殆どをモンスターに避けられてしまった。


 げげ、モンスターの癖に学習速度が早い!

 外れた場所に着弾して出来た落とし穴まで華麗に回避とか、空中で無駄に格好いいポーズまで決めやがって、そんなん需要ないんだからね!

 

『瑠璃様、ぎりぎり全身を収められるサイズまで掘れました』


 よし、ディ・モールトよし!

 穴に乗り込めー!


 体液で溶かした穴に飛び込むと同時に、直前まで頭があった場所を虎のようなモンスターの爪が通過していた。


 あぶなかったぁ、だけど縦穴に潜り込んだ時点で私は地の利を得たも同然。

 反撃開始と行こうか! 防御なんか全くしてないけどな!

 システムさんは『建築』で掘削のサポートよろしく。もう少し穴に深さが欲しいから。


『承りました』


 そして私はモンスター共の対処だ!


 穴に入ったことで、私の弱点とも言える大きな体のカバーは完了。

 モンスター達は私を攻撃するために穴を覗かざるを得ない。

 そして間抜けにも顔を見せたモンスターを『狙撃』し、穴に引きずり込んで食べる。

 防御、攻撃、回復、全てを兼ね備えた正にパーフェクトプラン!

 ふははは! モンスター達よ、破れるものなら破ってみろ!


『瑠璃様……』


 ふふふ、どうしたのシステムさん、私の計画のあまりの完全さに声もでない感じかい?

 私も、いつまでも頭脳労働をシステムさんに頼ってばかりはいられない、少しでも成長したいって思ってるのさ。


『いえ、その、大変申し上げにくいのですが……、私と瑠璃様の考えに齟齬が生じていた様です』


 馬鹿なッ! 私とシステムさんの間に間違いなどあるだろうか? いや無いッ!

 『相思相愛』伊達じゃない、今まで考えが食い違うことなんて……。


『私が自律思考が可能になった弊害と申しましょうか、勝手に瑠璃様の考えを推測し行動してしまったのです』


 それのどこが悪いの? システムさんはいつだって私のことを考えて動いてくれてたじゃない。


『私は、瑠璃様がこのままフロアをくり貫いて階下へ進むものだと思っておりました。つまり、迎撃するものとは思っていなかったのです』


 モンスターを倒すのは私の役目だから、そんなこと心配しなくていいんだよ、私にだって仕事がないと、システムさんのヒモみたいになっちゃうじゃない。

 専業主婦なら有りかなって思うけど、それは結婚してからだしね。


『モンスターの反撃パターンをシミュレーションしきれていません。危険です。相手が知性あるモンスターならば、この方法の欠陥に直ぐに気付く可能性が……』


 システムさんが警告を発する前に、頭上に影が出来た。

 あー……そういうことか。やッべ、マズい、こんな反撃予想してなかった。

 やっぱ私はポンコツだわ。


 そりゃ生意気な敵が勝手に狭い穴に潜り込んだら蓋をするよね。

 特に、穴を塞ぐのに十分な岩があったらさ。


 頭上の影の正体、もう言うまでも無いね。

 モンスターが投げた岩だよ、この野郎め。私の浅知恵はモンスター以下かも知れない。


 『氷寒魔法』で支える、もしくは逸らす?

 いや、駄目だ、岩をどうこうできる程の水分はない。


 『腐食性血』で溶かす?

 無理だ、溶けきる前に岩が落ちてくる。


 くそぉ、慣れないことはするもんじゃないんだ。


『やらねば覚えませんよ。大丈夫です。フォロー致します』


 うぅ、迷惑かけてごめんね、システムさん。


『『建築』でサポートすると言っていたではありませんか。勘違いで終わってしまいましたが、岩を回避するのに十分な深さは掘り終わっています』


 ナイス、システムさん!

 サイズがギリギリで、体を捻って押し込むような感じにしないと入っていけないけど、これなら大丈夫そうだ。


 よいしょ、こらしょ、うんせうんせ、ちょ、これ、腰にくる……、どこが腰か分かんないけど、腰っぽい部分が辛い、吊りそう。

 いやこれ頑張ればくびれるかな?

 ボンキュッボンなウジムシになれる……、いや、やめとこう、今くびれても寸胴から瓢箪ひょうたんになるだけだわ。


 ずずん……、と地面が揺れ、縦穴が暗闇に閉ざされた。

 間一髪、私のウジムシフェイスが岩で潰されることは回避できました。

 身動きとるのは難しいけど、このまま逃げるのも癪だ、一矢報いてギャフンと言わせないと。


 とはいえ、私の力じゃ岩を持ち上げることは出来ないし、『腐食性血』で溶かすのも……ねぇ? 溶けたものが全部顔にかかってくる訳だから……。


『瑠璃様、モンスターが接近しています』


 岩があるのに? 蓋をしてきたのに、わざわざ退かして攻撃してくるかね?


『相手は地中を進んでいるようです、恐らくモグラやネズミに似たタイプなのでしょう』


 それ滅茶苦茶まずいじゃない!

 大きな体を隠すために縦穴にぎっちり詰まったっていうのに、地中から攻撃!? そりゃないよ!

 岩にしろ、モグラ攻撃にしろ、想定できてないことが多すぎる。


 攻撃されれば『腐食性血』が吹き出るだろうから、迎撃は可能、だけど、私だって出血が続いて平気というわけでもない。

 相手がどれだけいるか分からないけど、私の作戦がことごとく失敗していることを考えると、楽観的にはなれない。


 私が『腐食性血』を持っていることは向こうにバレている。つまりこのモグラアタックは私を地中で削り殺す為の捨て駒か。


『瑠璃様、『建築』で階下まで掘り抜きます。30分耐えて下さい』


 ……逃げるしか、無いか。



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