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うじむし79





 はぁあー……、今日も良い日和だなやぁ。

 こんな日は畑の野菜に水さたっぷり撒いてやんねばなぁ。

 旦那は今ごろ畑の世話さしとるべな。そろそろ収穫だで、こっちも手伝わねばねがな。


『……何を言っているのかが分かりませんが、ダンジョンへのMP供給、終わりましたよ。今回も沢山のMPをありがとうございます、瑠璃様』


 アッハイ、暇だったので日向ぼっこをしてたよ。

 ダンジョン内だから本物の太陽ではないんだろうけど、今まで暗い森に洞窟とジメジメした場所ばかりだったからね、温まる感覚が気持ちいい……。


 あんまり気持ちがいいから、仰向けになって思いっきりお腹を晒して、太陽光を満喫しました。

 あぁー、お腹がぽかぽかするんじゃぁ~……。


 4階層のサバンナは身を隠す所が少ないけど、それはモンスターにも言えることで、私を襲うなら姿を見せなくちゃならない。

 加えて、ここのモンスター、中距離攻撃までが精々で、遠距離攻撃を持つモンスターは皆無。


 だったらもう安全地帯なんかいらないよね。

 近づいてくる気配を感じたら即撃てば良いんだから。


 一度プレーリードッグみたいなモンスターの群れに襲われたときはお肉の一部を持ってかれたけど。

 プレーリードッグで回復したからノーカンです。


 そんなわけでこの階層にあまり危機感を抱かなくなった私は、システムさんに『建築』スキルを丸投げして、ダンジョンの修復をしてもらっているのだった。


 常識的に考えて、私がダンジョン修復とか出来るわけが無いしね。

 くっそ難しいプラモデルを説明書なしで制限時間内に組み上げろって言われてるようなもん。

 無理ですね。でも出来るんです、そう、システムさんならね!


 私の仕事は、私自身の安全を保ちつつ、MPを回復し続けること。

 ダンジョンに注ぎ込んだ分が回復したら、それをそのままダンジョンに放り込んでもらって、私は回復に努める。

 この繰り返し。


 MP回復には獲物を食べて寝るのが一番なのです。

 こうして無防備に寝転がっているだけで、サバンナのモンスター達は襲いかかって来るしね。

 ホントもう、楽な仕事です。


 仕事だよ? ただ食っちゃ寝してる訳じゃないんだよ?

 食べて寝て回復した分はキッチリとダンジョンにあげてるんだから、太りもしない……筈だし。


『MPやSPを蓄えたことによる膨張と、運動不足による脂肪の増加は違うはずですが……』


 ぐっ、またシステムさんはそういうことを……。

 食っちゃ寝しながらも美しくありたい乙女の夢をすぐに壊しに来るんだから!


『残念ながらそれは両立出来ないのです』


 がふッ……、だ、だけどね、ウジムシボディでは体が大きくなっただけなのか、ふ……太ってるだけなのか判別がつかないからね!

 例えモデル体型になったとしても、分からないんじゃあモチベーションがあがらないもん。


『瑠璃様、瑠璃様はハエ型の魔王種に進化できるルートをお探しでしたよね?』


 んぇ? なぜ急にその話を?

 まぁそうだよ、魔王ルートで最ツヨになって私を蛆に変えた悪趣味野郎の顔面を前が見えねぇ状態にしてやった後にシステムさんと結婚するのが今の私の夢だよ。


『瑠璃様がどのような姿でも私の想いは変わりません。ですが、怠惰はいけません。怠惰は心を腐らせますよ』


 うぐぅ、システムさんに言われちゃあ仕方あるめぇ。

 ちょっと運動するべきだね……。


『ではモチベーションを少し上げるお手伝いを。魔王種であれば大概、人化が出来ますよ』


 ま、マジかよ……。いや、人外になった時点でそれは目標の一つなんだけど、そうかぁ、魔王ルートにはそんな特典もあるのかぁ。


 ん……? 今その話をするってことは、人化する時ってさ、元の姿の体型が引き継がれるの?


『その通りでございます』


 ぎゃああ! 何でだ! 人化したら不思議と美少女戦士になるもんじゃないのか!

 贅肉も地味顔もおさらばして謎の美女化は遂げられないのか! 人化詐欺だ!


 ぐぬぬ、人化したら贅肉がどっかいく気がしてたのに……。

 これじゃ私、人化したくなくなっちまうよ……。


 しかも、結局ウジムシのままじゃ女を磨いても確認できない問題が残ってるんだけど?


『そうですね……、流石に私も人化シミュレーターのような機能はありません』


 だけど、魔王になりました! 人化を果たしました! ブサイクでした! じゃ嫌だよね。

 前の世界ならまだしも、この世界では、どんな私でも好きって言ってくれる人がいるんだから、それに甘えては女が廃るってものよ。


 よし、決めた! 心に誓った! 私、白氏瑠璃はただ今この時を以て食っちゃ寝生活に終止符を打ちます!


『以前も同じようなことを言っていたと思いますが……』


 システムっつぁん、それは言わない約束でしょ?

 い、いや、今度こそ本気! と書いてマジと読む!


 見ててシステムさん、この決意がしなびる前に、ヌルゲーと化した4階層を突破して5階層に辿り着いてみせるから!


『期待しております。瑠璃様の決意を祝うかのように、この階層のモンスター達も駆け付けて参りましたよ』


 あら、ホント。みんな有難う、有難うー!


 って違うわ! 皆さん目が血走って息を荒げていらっしゃいますのことよ!?


 あれだよね? 舐め腐った新参者に焼き入れたろかい、みたいなノリだよね?

 わぁ張り切ってるねぇ、皆の駆け足で地面が揺れて砂埃が地平線まで疾ってるよ。


『そうですね、モンスターにも知性がある種がおりますから、瑠璃様の態度を挑発や挑戦と取る者もいるでしょう』


 そういうことは早く言ってくれる!?

 このやり取りも久しぶりな気がするね!


『のんびりと日向ぼっこを楽しむ瑠璃様を邪魔したくなかったのです』


 やだ、紳士……。

 システムさんの優しさなら仕方ないね。元より向かってくる輩は撃ち倒してMPと経験値に変える所存でござる。


 さて、空気が乾燥気味のサバンナで『氷寒魔法』は無駄撃ち出来ないね。


 『腐食性血』に『氷寒魔法』をかけて弾丸を形成する手もあるけど、手間な上にMPも多めに取られるので、敵の数がわらわらいる時は使用が難しい。

 まずは『腐食性血』と『狙撃』のコンボでいかせて貰おう!


「ごぺぺぺぺッ」


 見よ! 『|腐食性血散弾掃射(エ○ラルドスプラッシュ)』!

 巨大なウジムシが唾を吐き散らかしているようにしか見えないけど、立派な攻撃です! それも強烈な!


 突撃の先鋒を務めていた馬のようなモンスターが足を溶かされ、盛大に転倒する。

 後ろにいた奴等は転んだ馬を避けきれず、或いは避けようとして周囲を巻き込み、被害を広げていく。

 うわぁ酷い交通事故だ。転生ものの導入なら数人は異世界に飛んでるな。


 外れた『腐食性血』も無駄ではない。

 地面を溶かし、即席の落とし穴になるのだ。流石にモンスターの全身が落ちるほどじゃないけど、勢いよく走っている奴が蹴躓くには充分だ。

 転倒事故が連続で発生し、モンスター達の突撃速度が鈍る。

 阿呆が、鴨撃ちじゃい。


 なけなしの空気中の水分でやじりを作り、後方に控える一回り体の大きなモンスター達を仕留めていく。

 うん『氷寒魔法』で作った固体の方が『狙撃』のコントロールとの相性がいいね。


 どうよこの制圧力、私は一人の軍隊だ! ってか!


『モンスター達の気力が衰えませんね。むしろ増大しています』


 指揮官っぽいの倒したんだから逃げ出してもいいのよ? それを期待してたのよ?


『瑠璃様が倒したのは指揮官というより、戦士ですね。指揮官クラスのモンスターは更に後方で味方を鼓舞しているようです』


 うわ、メンドっ。そして早まった!

 一回り大きいのが指揮官だろうと勝手に判断して『氷寒魔法』撃っちゃった。

 まだ水分に余裕は有るけど……。この群れを切り崩して指揮官に辿り着く前にはスッカラカンになってそう。

 『腐食性血』なら、途中でモンスター食べれば何とか保つって感じかな?


 昏倒覚悟でMP絞り出せば、周囲の窒素を液体化させることも出来そうなんだけど……。

 あ、だめだ、MPの一部、ダンジョンに上げちゃってたんだ。


 あれ、密かに私ピンチじゃね?



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